カトリックの聖職者の裁判員辞退について

最高裁判所長官 竹﨑博允様 カトリックの聖職者の裁判員辞退について  わたしたち日本カトリック司教協議会は以下の理由により、カトリック教会の聖職者が裁判員候補者に指名された場合、辞退することを勧めることに合意しましたので […]

最高裁判所長官
竹﨑博允様

カトリックの聖職者の裁判員辞退について

 わたしたち日本カトリック司教協議会は以下の理由により、カトリック教会の聖職者が裁判員候補者に指名された場合、辞退することを勧めることに合意しましたのでここにその旨お知らせし、ご理解を賜りますよう、お願いする次第です。

1.教会法への抵触
 カトリック教会は信徒と聖職者から構成されております。聖職者とは、司教、司祭、修道者を指します。カトリック教会には教会固有の規則である教会法があり、聖職者についても規律されております。その教会法の第285条に次のような規定があります。

(2)「聖職者は、その身分になじまない事柄を、それが低俗なものでなくても、避けなければならない。」
(3)「聖職者は国家権力の行使への参与を伴う公職を受諾することは禁じられる。」

 聖職者はその職務の執行を通して神の恵みを分配し、神の前での罪のゆるしを宣言し、神の救い、平和を告げ知らせるという任務を受けています。聖職者の本来の使命は、信仰の立場から人々の良心に働きかけ、改心を促し、救いへと導くことであります。
 カトリック教会は、二千年の歴史を経て「聖職者は、国家権力の行使を行う公務には就くべきでない」という考え方に到達しました。これは多くの苦しい体験を経て獲得した大切な「知恵」であります。そしてわたしたちは日本の裁判員制度を検討した結果、日本カトリック教会の聖職者が裁判員の任務を引き受けることは、上記教会法第285条の規定に抵触する、との結論に達しました。

2.聖職者の守秘義務
 聖職者は重大な守秘義務を課せられています。司祭が信者の罪の告白を聞き、罪のゆるしを宣言する「ゆるしの秘跡」の執行において告白者から聞いた内容を他の人に漏らすことは固く禁じられております。また聖職者が信仰、道徳、生き方に関して相談を受けた場合についても、ゆるしの秘跡と同様の守秘義務があります。
 さらにまた、聖職者はカトリック信者ばかりではなく、信者でない人たちからもいろいろ相談を受けます。相談者当人ばかりでなく、内容に関わりのある人を加えますと多くの人の個人情報(秘密)を知ることになります。
 聖職者に課せられているこの守秘義務と裁判員の職務は相容れないと考えられます。

以 上

CBCJL09-30
2009年9月11日
日本カトリック司教協議会
会 長  岡田 武夫(東京大司教)

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