解説 自発教令『オムニウム・イン・メンテム』―2つの変更の背景

解説 自発教令『オムニウム・イン・メンテム――教会法のいくつかの改正について』 ――2つの変更の背景(*)  本日(2009年12月15日)公布された自発教令『オムニウム・イン・メンテム――教会法のいくつかの改正について […]

解説
自発教令『オムニウム・イン・メンテム――教会法のいくつかの改正について』
――2つの変更の背景(*)

 本日(2009年12月15日)公布された自発教令『オムニウム・イン・メンテム――教会法のいくつかの改正について』は、教会法にいくつかの変更を加えます。この変更については、一定の期間、ローマ教皇庁諸機関と司教協議会が検討を行いました。変更は2つの異なる問題にかかわります。すなわち、一つは、助祭の奉仕職の任務を定めた教会法の条文を、『カトリック教会のカテキズム』(同1581)の対応する文言に合わせることです。もう一つは、婚姻に関する教会法の3つの条文から、経験上、不適切であることが分かった文言を削除することです。改訂された新しい条文は、本自発教令の5つの節で示されます。
 第一の変更は、「聖務者」について述べた教会法第1008条と第1009条にかかわります。「叙階の秘跡の効果」を説明する際、『カトリック教会のカテキズム』第1版は次のように述べていました。「叙階によって、祭司・預言者・王というキリストの三職を、教会の頭であるキリストの代理者として果たすことができるようになります(Per ordinationem recipitur capacitas agendi tamquam Christi legatus, Capitis Ecclesiae, in Eius triplici munere sacerdotis, prophetae et regis)」(1581の第2の文章)。しかし、その後、司祭と司教にのみ留保されている「頭であるキリストの代理者として(in persona Christi Capitis)」働く権限を助祭の段階にまで認めることを避けるために、教皇庁教理省は規範版において1581の草案を次のように修正することが必要だと考えました。「司教と司祭は、頭であるキリストの代理者として働く使命と権能(「聖なる権限」)とをキリストから受け、助祭は典礼とことばと愛の『助祭職』によって神の民に仕える力を受けているのです(Ab Eo (=Christo) Episcopi et presbyteri missionem et facultatem (« sacram potestatem ») agendi in persona Christi Capitis accipiunt, diaconi vero vim populo Dei serviendi in « diaconia » liturgiae, verbi et caritatis)」(『カトリック教会のカテキズム』875)。1998年10月9日、神のしもべヨハネ・パウロ二世はこの修正を認可し、教会法の条文もこれに合わせることを命じました。
 それゆえ、自発教令『オムニウム・イン・メンテム』は教会法第1008条の文言を変更します。新しい条文は、叙階の3つの段階を区別せずに述べることによって、この秘跡が頭であるキリストの代理者として働く権限を与えることを述べたものでなくなります。むしろこの新しい条文は、叙階を受けた者が新たな特別な資格で神の民に奉仕しなければならないことを一般的なしかたで述べるにとどまります。
 これに関して、叙階の秘跡の3つの段階の間にある区別は、今や教会法第1009条に追加された第3項で取り上げられます。この第3項は、司教職または司祭職とされた者は、頭であるキリストの位格において働く使命と権限とを受け、助祭は、典礼とことばと愛の奉仕によって神の民に仕える力を受けることを明らかにします。
 しかし、東方教会法第323条第1項、第325条、第743条はいかなる変更も必要としません。なぜなら、そこでは「頭であるキリストの位格において働く(agere in persona Christi Capitis)」という表現が用いられないからです。
 自発教令『オムニウム・イン・メンテム』が行うもう一つの変更は、教会法第1086条第1項、第1117条、第1124条の「カトリック教会からの正式の行為による離脱(actus formalis defectionis ab Ecclesia Catholica)」ということばを削除することにかかわります。このことばは、長年の研究の結果、不要かつ不適切であると考えられるようになったからです。教会法に付け加えられたこの文言は、教会法の伝統に属するものではなく、東方教会法にも見いだされないものです。この文言の意味は、教会法の拘束に関する教会法第11条の総則の例外を定めることです。それは、教会から離れているために、婚姻が有効になるための方式を必要とする教会法の規定を順守したくない信者が「婚姻法(ius connubii)」を容易に守れるようにすることを目的としていました。
 しかし、この文言を解釈し適用する上での問題が多くの分野で生じました。そのため、当時の教皇庁法文解釈評議会は、上記の3つの条文からこのことばを削除することがもたらす利益を検討しました。この問題はまず1997年6月3日の同評議会総会で審議されました。総会教父は、このことばの正確な法的意味を真正に解釈するための「疑念(dubium)」の定式化と、これに対応する「対応(responsum)」を認可しました。しかし、総会教父は、まず、プラスのものもマイナスのものも含めて、この規定から生じた経験に関する意見を各司教協議会に求めるのが適当だと考えました。それは、決定を行う前に、あらゆる状況を評価できるためです。
 司教協議会への意見聴取はその後2年かけて行われました。約50の詳細な回答が法文解釈評議会に寄せられました。回答者は、5大陸を代表し、多くの司教のいる国を含みました。一部の地域には報告すべき重要な経験がありませんでしたが、大多数の回答は、上記のことばの正確な意味を明らかにする必要を指摘し、さらには、このことばを完全に削除することを希望しました。このことに関して、法的経験から、別の理由も引き出されました。すなわち、(一)受洗しているが、正式な行為によって教会から離脱していない者どうしの民法上の結婚と異なる形でこの問題を扱わないことが適切であること。(二)婚姻は秘跡であることを一貫した形で示すことの必要性。(三)非合法の結婚を奨励する危険。(四)教会法的婚姻が市民生活に影響を与える国々におけるさらなる影響などです。
 意見聴取の結果は1999年6月4日に開催された法文評議会の新たな総会で審議され、そこで上記の文言を削除する提案が全会一致で承認されました。神のしもべヨハネ・パウロ二世は1999年7月3日の謁見においてこの決定を確認し、適切な規定条文の作成を命じました。
 その後、婚姻についての教会規律に関する文言を削除することが、まったく別の、適切な解明を必要とする問題と結びつきました。この問題は一部の中央ヨーロッパの国々にのみかかわるものでした。すなわち、「自分はカトリック教会に属しておらず、したがって、いわゆる教会税を払わなくてもよい」というカトリック信者の宣言が、教会として課税当局に影響を与えるという問題です。
 それゆえ、この具体的な問題に対して、上述の教会法の3つの条文に上記の文言を挿入することをめぐる厳密な意味での婚姻の問題とは別の分野について、教皇庁法文評議会は教皇庁教理省との協力のもとに、カトリック教会から離れる意志を表明するために本質的に必要な条件を明らかにするための検討を開始しました。この条件は各司教協議会への書簡に示されました。教皇ベネディクト十六世の認可を得て、教皇庁法文評議会は2006年3月16日にこれを発表しました(Communicationes XXXVIII [2006], 170-184参照)。
 本自発教令と目的を異にしているとはいえ、上記の書簡の発布は、婚姻に関する条文から上記の文言を削除すべきであるという確信を強めました。この削除を行ったのが、まさしくこの自発教令です。本自発教令の草案は2009年6月16日に開催された教皇庁法文評議会総会で審議されました。この総会は特別に国務省長官の(タルチジオ・ベルトーネ)枢機卿が議長を務めました。
 ですから、教会法第1086条第1項、第1117条、第1124条の変更の具体的な意味は、婚姻という分野にかかわります。教会法が発効した1983年から本自発教令が発効するときまで、カトリック教会から正式な行為によって離脱したカトリック信者は、婚姻が有効となるための婚姻挙式に関する教会法の規定に拘束されませんでした(教会法第1117条)。受洗していない婚姻当事者の(宗教の違いによる)障害や(第1086条第1項)、カトリック信者でない者との婚姻の禁止も上記の人には適用されませんでした(第1124条)。これらの3条文に挿入された上記文言は、教会法のもう一つのより一般的な規則が免除されることを表します。すなわち、カトリック教会で受洗した者、またはカトリック教会に受け入れられた者は皆、教会法を順守しなければならないという規則です(第11条)。
 それゆえ、新しい自発教令が発効するときから、教会法第11条は、今回修正された教会法の内容に関して、正式な行為による教会からの離脱が行われた場合においても、完全な効力をもつことになります。したがって、これらの規定を破って婚姻が行われた場合を調整するために、可能なかぎり、教会法によってこうした事例に対する通常の手段が用いられることになります。すなわち、障害の免除、婚姻の有効化などです。
 教会法第8条の規定に従い、自発教令『オムニウム・イン・メンテム』は『使徒座官報』において正式に公布され、「『使徒座官報』の発行日より満3か月後に効力を生じ」ます(**)。

2009年12月15日
教皇庁法文評議会議長
フランチェスコ・コッコパルメリオ大司教

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