「第96回 世界難民移住移動者の日」委員長メッセージ

すべての子どもの幸せのために  今年は「すべての子どもの幸せのために」というテーマで、「世界難民移住移動者の日」に祈っていただき、それぞれの地域や教会で子どもたちの幸せのための取り組みを一層強めるきっかけにしていただきた […]

すべての子どもの幸せのために
 今年は「すべての子どもの幸せのために」というテーマで、「世界難民移住移動者の日」に祈っていただき、それぞれの地域や教会で子どもたちの幸せのための取り組みを一層強めるきっかけにしていただきたいと願っています。
 日本も批准している「子どもの権利条約」は次の4つの柱があります。①生きる権利、②差別、虐待、搾取などから守られる権利、③教育を受ける権利、④参加する権利。
 現実にはこれらの権利が子どもたちに十分補償されているわけではありません。わたしたちの身近なところでも、注意してみれば、多くの子どもたちがこれらの権利を侵害されています。特に難民、移住者、移動者の子どもは厳しい現実のなかにさらされています。
 いくつかの例を紹介しましょう。
 非正規滞在の人たちへの取り締まりがますます厳しくなっています。学校に通っている子どもには在留許可が出ましたが、非正規滞在の親が強制退去となり、親と子どもが別々の国で生活せざるをえないケースも出ています。両親と会えない寂しさ、悲しさがこの子の将来に影を落とさないことを祈りたいと思います。国際社会は人道的な立場から、このように親と子が引き裂かれないように定めていますが(児童の権利に関する条約9条)、残念ながら日本ではほとんど守られていません。
 あるフィリピン人たちの集まりで、一人で来ていた子どもが次のように話しました。
 「私は小学生ですが、両親がオーバーステイです。このまま中学に行けるのでしょうか。中学に行けなければ、友だちと別れなければならないのでしょうか。」
 この子どもは、不安のなか、勇気をもって質問するために出かけてきたのです。子どもにこんな不安を抱えさせる社会が、移住者たちを取り囲んでいるのです。
 民主党政権になって、マニフェストが実行に移されています。その中に高校無償化があります。義務教育に加えて高校の学費も無償化しようとするものです。韓国学校を初め、ブラジル人学校など14校、インターナショナルスクール17校が無償化の対象となりました。しかし、朝鮮学校、多くの外国人学校などはその対象から外れています。多くの外国人学校にとっては各種学校への認定にも高いハードルがあります。しかし、子どもたちは学校を選ぶことが困難な状況に置かれています。さらに学校にすら通えない子どもたちも少なくありません。日本ではまだ、教育を受ける権利(条約28条)がすべての子どもに保障されていません。
 青年や子どもたちの行事が盛んに行われる時期になりますと、教会の掲示板のお知らせは日本語だけで、ポルトガル語などの他言語で書かれていることが少ないように見受けられます。しかし、いまや教会には日本語を母語としない青年や子どもたちが大勢います。それらの集まりがあることすら気付かないで終わってしまうことになります。参加する権利を奪うことにならないのでしょうか。
 どのような教会、社会を作っていくのか。その大切な基準は「すべての子どもたちの幸せを大切にする」ということだとわたしたちは確信しています。それが、大人たちにとっても、難民、移住者、移動者にとっても住みやすい教会や社会作りの基準となるのではないでしょうか。
 これらの権利は一人残らず、すべての子どもが持っている権利です。今年のテーマも幸せに生きる権利がすべての子どもにあることを強調するために「すべての」という言葉を入れました。一人も除外されることなく、幸せになる権利が保障される社会、教会を実現するように祈っていただきたいと思います。そして、子どもの権利条約についても学んでいただきたいと思います。
 「わたしの名のためにこのような一人の子どもを受け入れる者は、わたしを受け入れるのである。」(マタイ18:5)

2010年9月26日
日本カトリック難民移住移動者委員会
委員長 松浦 悟郎

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