池長潤・日本カトリック司教協議会会長談話――復活の主日にあたって

日本のカトリック教会の皆様   主のご復活おめでとうございます。   大自然も新しい生命のあふれに満たされて、神がそなえて下さった救いの恵みをたたえているように思われます。   あの悲惨を極めた東日本大震災から40日余り […]

日本のカトリック教会の皆様 

 主のご復活おめでとうございます。
  大自然も新しい生命のあふれに満たされて、神がそなえて下さった救いの恵みをたたえているように思われます。
  あの悲惨を極めた東日本大震災から40日余りが経過いたしました。しかし、今なお多くの方々が住み家も奪われたまま、避難生活を送っておられます。さらに、放射性物質の汚染により、あらたに住み慣れた町や村を離れて安全な地域に移らざるをえない人たちもおられます。
  他方、この大震災と大津波の結果、私たちが通常味わうことができない大きな感動も体験することができました。震災による甚大な被害が報道されると同時に、アメリカ、韓国その他世界の国々から、日本、とくに被災地の方々に心のこもった励ましが寄せられました。日本のための集会が呼びかけられ、そこでさまざまなエールが発せられた上に、義援金が集められて送られてまいりました。
  お隣の韓国で、たちまち路上で多くの人たちが結束して、プラカードに英語で日本への愛と力強い励ましの言葉が掲げられた場面や、アメリカから軍隊の方々が大勢馳せつけて下さり、大津波に破壊され、混沌とした土地で救援活動を続けて下さったこと、イスラエルから医師団が大挙して治療に来て下さったことなど、いくつも心を打たれた場面に出会わせていただきました。個人的な義援金のご寄付に関しても、感動的な例にいくつも触れさせていただきました。
  被災地の慰問についても、心を動かされる場面がたくさんありました。公的なものから個人的なもの、また団体によるものと、さまざまですが、その中に、心の真実が伝わってくるものにはすべて、心底から感動いたしました。
  ともすれば埋もれてしまいがちなエピソードも、拾ってゆくとさまざまなものがあります。たとえば、佐藤さんという方が夢中で研修生として来ていた中国人の方々を小高いところに逃げるように指示し、20人以上の命を救いながら、自分は逃げ遅れて亡くなってしまわれたことも伝え聞きました。
  さて、今なお、危険な放射能の中を、放射性物質の放出を防ぐために働いておられる作業員の方々、また、生業を奪われたまま、いつまでこの状態が続くかも分からずにおられる漁業や農業の方々、さらに避難を強いられ、将来の復帰の見通しのつかない方々、工場や事業所、企業の営みが絶たれて、いつ回復できるかの目途の立っていない方々など、長い間艱難の中に置かれ続けている方々のために、私たちは祈り続ける必要があります。瓦礫(がれき)撤去や行方不明者の救出、捜索を続けて下さっている方々のためにもお祈りいたしましょう。
  4月17日の東京電力の発表によって事故収束への工程表が示されました。6~9ヶ月で原子炉を安全な状態で停止する見通しが立ったということです。明るい光がさし出したと言えますが、これが予定通りはかどるためにも祈りましょう。 
  教皇様もずっとご心配下さっておられ、5月13日から17日にかけて、教皇代理としてサラ枢機卿様が日本に来て、現地の視察と現地でのミサをされることになっています。この機会に、日本の司教様たちも現地に行かれます。
  最後になりましたが、仙台教区から緊急依頼が来ています。教区が立ち上げた救援サポートセンターに至急、ボランティアで、スタッフになれる人を送ってほしいということです。サポートセンターは、教会のために働くものではなく、一般の人々や被災地のために活動するセンターです。本部と前線基地(3ヶ所)のセンターに分かれています。双方のためにスタッフとして、そこでリーダーシップをとれる人が必要です。1ヶ月以上とどまれる人であることが望まれています。6ヶ月でも1年でもとどまれる人ならば、さらに助かるでしょう。後者の場合は、施設などが、有給休暇を与えて派遣しなければ不可能かもしれません。しかし、カトリック教会も、こういう時こそ自己犠牲を払っても救援に協力する機会ではないでしょうか。司教協議会会長としても、全国のカトリックの皆様に呼びかけたいと思います。
  世界中の教会が、今日本のために祈って下さっています。世界の人々の深い絆に感謝し、本来あるべき人と人とのつながりをさらに深めることができるよう、私たちもできる限りの努力をいたしましょう。
  皆様もよきご復活節をお過ごしください。

2011年4月24日 復活の主日に
日本カトリック司教協議会会長
  大阪大司教 レオ池長 潤

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