第97回 世界難民移住移動者の日 委員長メッセージ

誰も存在しない人にしてはいけない、「一つの人類家族」だから さしだされる手 にぎりかえす手 だれとでも  今年も「世界難民移住移動者の日」を迎えます。教皇ベネディクト16世は、今年のメッセージのタイトルを「一つの人類家族 […]

誰も存在しない人にしてはいけない、「一つの人類家族」だから
さしだされる手 にぎりかえす手 だれとでも



 今年も「世界難民移住移動者の日」を迎えます。教皇ベネディクト16世は、今年のメッセージのタイトルを「一つの人類家族」としました。世界には異なる文化、さまざまな宗教を持つ人々がいますが、すべての人が、神という人間としての同じ起源と唯一の終局目的を持つ家族として共生していく道を歩むよう呼びかけています。
 私たちはこの日を毎年の記念日として思い出しますが、暴力と迫害から逃れてきた難民や強制移民となった人々にとっては、今日をどのように生き延びるかという毎日であることを忘れてはならないでしょう。

 2009年の統計(※1)では、世界でおよそ4,330万人の人が強制移動を余儀なくされ、また自主的に帰還した難民は、ここ20年で最も低い水準にとどまっています。傾向としては、難民の数はほぼ横ばいですが、国内難民はここ数年、飛躍的に多くなってきています。無国籍者は60か国で660万人、しかし推計では1,200万人いるとされています。実は日本でもその数は大変多く、出生届けがどこにも提出されず、法的に「存在しない」子どもたちは、約2万人もいます。それでは、実際には日本にどのくらいの無国籍の人たちがいるのでしょうか。もし日本政府が本当に無国籍者を減らそうと思うなら、法的な配慮をするだけで解決するケースは多くあります。にもかかわらず、こうした人々が同じ状態に置かれ続けているのは、政府の不作為だけでなく、私たちの無関心にも起因しています。教皇のメッセージにあるように、まず私たちの身近に住んでいる難民認定されない絶望的な状況に置かれている人たち、無国籍の状態にいる人たちが私たちの大切な「家族」であることに思いを馳せ、関心を持つことです。その上で何ができるのかを具体的に考えなければ、「世界難民移住移動者の日」は単なる毎年の記念日として通り過ぎるだけです。

 来年7月に「改定入管法」(※2)が実施されます。一つの例ですが、これまでは、たとえビザが切れ、超過滞在の状態になった外国人も、役所で外国人登録をし、行政サポートを受ける対象でしたが、これからは法務省入国管理局による集中管理になることから、それができなくなり、彼らは「存在しない人」となってしまいます。人権を認めないどころか、「存在しない人」を増やしていく法律となっています。改定入管法については、解説の冊子がありますので手に取り、私たちの国は何を実施しようとしているかをしっかり学んで下さい。
 日本で生活している難民・移住者・移動者たちを、「存在しない人」ではなく、私たちの大切な家族として意識の中に、そしてこの社会の中にしっかり位置づける努力をしていきましょう。さしだされた手をにぎりかえし、誰もが「一つの人類家族」としてつながる社会を目指していきましょう。

2011年9月25日
日本カトリック難民移住移動者委員会
委員長 松浦 悟郎

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