池長潤・日本カトリック司教協議会会長「東日本大震災から一年を迎えて」

東日本大震災から一年を迎えて  今年2012年3月11日(日)は、東日本大震災から一年を迎えます。  東日本大震災は、17年前の1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災以来の東日本全域にわたる大惨事となりました。来 […]

東日本大震災から一年を迎えて

 今年2012年3月11日(日)は、東日本大震災から一年を迎えます。
 東日本大震災は、17年前の1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災以来の東日本全域にわたる大惨事となりました。来る3月11日(日)には、犠牲となった方々を追悼し、被災地の一日も早い復興を願うミサや祈りの集いを全国各地のカトリック教会で行っていただきますようお願いいたします。

 さて、あの2011年3月11日の出来事は、私たちの中で、生涯決して消える事はないでしょう。午後2時46分に起こった大きく長い横揺れに驚く間もなく、次々に送られてくる悲劇的な報道は、直接災害を体験しなかった者にまで、大きな衝撃を与えました。とりわけ大津波は、2万人近くの人々を死に追いやり、人々にはかり知れない災いをもたらしました。また、福島原発事故は、多くの人々の日常生活を破壊し、人々を放射能の不安に落とし入れました。
 しかしながら、この大震災によって、人間が支え合うすばらしさにも出会うことができました。大震災のニュースが伝わるやいなや、お隣の韓国では、若い人たちが英語で「私たちは日本を愛しています。日本はかならず試練を克服するでしょう」と書かれたプラカードを路上でかかげている画面がテレビに映し出されました。また、世界中のいたるところから、義援金が寄せられました。そして、原発事故の被害を一刻も早くくい止めるためにと、経験と高度な知識や技術を持つ海外の専門家が惜しみない協力を行い始めました。
 国内においては、全国各地の人々が被災地を訪れ、炊き出しやがれき撤去の手伝いなどをしながら、一人ひとりに声をかける心のこもったボランティア活動を行っています。
 不条理としか言えない悲惨な現実を目の当たりにして、私たちは国内国外の多くの人々が、被災された方々のために支援しようとする一生懸命な姿に大きな感動と勇気をいただいています。ブータン国王の国会における演説も、被災地とわが国へのあたたかい励ましと支えとして忘れることができません。
 ところで、大震災当日の被災地では、このような心からの支援を触発するような、自分の命を犠牲にしてまでも人の命を助けようとした人々の行動が伝えられています。ある社長さんが、研修のために自分の会社に来ていた中国の若い従業員たちを、津波から避難させようと、最後の一人まで裏の高台に逃がすために声をかけて踏みとどまったために、自分自身は押し流されて、帰らぬ人となりました。また、町内への有線放送を担当していた女性職員が、役所の中でマイクに向かい、早く避難するように呼びかけ続けて、必死に人が助かるように自分の務めを果たしたがために、自分自身は津波にさらわれてしまったということもありました。
 このように、地震と津波、そして原発事故によって引き起こされた悲しく辛い現実から一年が過ぎつつあります。亡くなられた方々が、神のみ手の中に抱かれて、永遠に憩われるように祈り、そして、被災地が一日も早く復興し、被災者の方々が一日も早く元のような生活を立て直せるようにと、私たちカトリック信者は心を一つにして祈りましょう。

 私たち日本の司教は、東日本大震災から一年を迎えて、当日のミサを教区の皆様とともにささげ、犠牲になった方々を追悼し、被災地の復興を祈ります。また、他のキリスト教諸派の皆様とともに心を合わせて祈る集いも計画しています。日本各地でこのようなミサがささげられ、祈りの集いが催され、多くの方々がともに祈りをささげることができますよう、願っております。また、信者の皆様には、このような公的な祈りに参加することも大切ですが、個人的な祈りも続けてくださいますよう、お願い申し上げます。

さて、日本のカトリック教会は、国内の義援金とともに各国のカトリック教会からも復興支援を目的とする義援金をいただきました。これらの義援金を活用しながら仙台教区とカリタスジャパンを中心に、カトリック信者以外の方々と一緒になって復興ボランティア活動が続けられています。また、男女修道会の活動や三教会管区が分担する地域における復興支援活動も継続的に行われ、各教区内の信者を中心にしたボランティア活動も軌道に乗りつつあります。
これらの復興ボランティア活動は、これから何年にもわたって行われてゆくことになり、そのためのボランティアも引き続き必要とされています。皆様の祈りと行動を通して、これからも復興支援を続けてくださいますようにお願いいたします。

2012年3月11日
日本カトリック司教協議会
会 長 池長 潤

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