教皇ベネディクト十六世のローマにいる枢機卿への別れのあいさつ

2013年2月28日(木)午前11時からクレメンスの間で、教皇ベネディクト十六世はローマにいる144名の枢機卿と会見し、この日バチカンから離れて教皇職を終えるにあたり、別れのあいさつを述べました。以下はその全訳です(原文イタリア語)。教皇のあいさつに先立ち、アンジェロ・ソダーノ首席枢機卿が感謝のことばを述べました。教皇はあいさつの後、その場に列席した全枢機卿および教皇庁職員一人ひとりとあいさつを交わしました。


 親愛なる兄弟である枢機卿の皆様。

 深い喜びをもって皆様を迎えるとともに、皆様一人ひとりに心からごあいさつ申し上げます。いつものように、全枢機卿の思いを代弁してくださったアンジェロ・ソダーノ枢機卿に感謝します。「心は心に語りかけます」(Cor ad cor loquitur)。枢機卿様に心から感謝申し上げます。枢機卿様が引用された、エマオの弟子たちの体験をもう一度取り上げて、わたしもこういいたいと思います。わたしにとっても、復活した主の現存の光のうちに、この数年間、皆様とともに歩めたことは喜びでした。
 昨日、サンピエトロ広場を埋め尽くした何万人もの信者の皆様を前にして申し上げたとおり、皆様がそばにいて助言してくださったことは、わたしの奉仕職の大きな助けとなりました。この8年間、わたしたちは信仰をもって、教会の歩みの光輝くすばらしいときと、いくつかの雲が空を曇らせたときを体験しました。わたしたちは深く徹底的な愛をもってキリストとその教会に奉仕しようと努めました。この愛こそがわたしたちの奉仕職の魂です。わたしたちは希望を与えました。このキリストに由来する希望だけが、道を照らすことができるのです。わたしたちはともに主に感謝することができます。主はわたしたちの交わりを深めてくださったからです。そしてともに主に祈ることができます。この深い一致をさらに深められるよう助けてくださいと。それは、枢機卿団がオーケストラのようになり、普遍教会の表現である多様性が、ますますより高次の、一致したハーモニーを生み出すようになるためです。
 わたしがもっとも深く心に抱いている、簡単な考えをお話ししたいと思います。すなわち、教会とその神秘についての考えです。これこそが、わたしたち皆にとって、生きる理由であり、情熱だといえるからです。ロマーノ・グアルディーニ(1885-1968年)の最後の著作のことばの助けを借りたいと思います。この本は第二バチカン公会議教父が『教会憲章』を承認した年に書かれたもので、わたしへの個人的な献辞も記されています。そのためわたしはこの本のことばを特別に大切にしています。グアルディーニはいいます。教会は「机上で考えて築かれた組織ではない。・・・・むしろ教会は生きた存在である。・・・・教会は長い時間の流れを生きている。すべての生き物と同様に、教会も生成し、変化する。・・・・にもかかわらず、教会は本質においていつまでも同じものであり続ける。教会の中心はキリストだからである」。わたしたちが昨日、サンピエトロ広場で体験したのもこのことでした。わたしたちは目の当たりにしました。教会が聖霊に生かされた生きたからだであることを。教会が本当に神の力によって生きていることを。教会は世にありながら、世に属していません。教会は神のもの、キリストのもの、聖霊のものだからです。わたしたちは昨日そのことを目の当たりにしました。このことについても、グアルディーニのもう一つの有名なことばは、真実であり、雄弁に語ります。「教会は人々の心の中で目覚めます」。教会は人々の心の中で生き、成長し、目覚めます。この人々とは、おとめマリアのように、神のことばを受け入れ、聖霊のわざによってそれを受肉させる人です。彼らは自分の肉体を神にささげ、自分の貧しさとへりくだりによって、現代世界の中にキリストを生み出すことができるようになります。受肉の神秘は、教会を通して永遠に存在し続けます。キリストは世々に、あらゆる場所を歩み続けます。
 親愛なる兄弟の皆様。わたしたちは一致して、この神秘にとどまります。こうして、祈りと、とくに日々の感謝の祭儀によって、教会と全人類に奉仕するのです。これこそが、だれも取り去ることのできない、わたしたちの喜びです。
 お一人お一人にごあいさつする前に、申し上げたいことがあります。わたしはとくにこれからの日々の間、祈りのうちに皆様に寄り添い続けます。それは、皆様が新しい教皇を選ぶために聖霊のわざに完全に忠実に従えるためです。主が皆様に何をお望みかを示してくださいますように。皆様の中に、枢機卿団の中には未来の教皇もおられます。この未来の教皇に、わたしはすでに今日から無条件の恭順と忠実を約束します。そのために、愛と感謝をこめて、皆様に心から使徒的祝福を送ります。

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