2013年 平和旬間 日本カトリック司教協議会 会長談話

2013年 平和旬間  日本カトリック司教協議会会長談話 平和旬間を迎えるにあたり  平和と正義を祈り願うわたしたちは、今年、ヨハネ二十三世教皇(在位:1958~1963年)が教会とすべての善意の人々に宛てた回勅『パーチ […]

2013年 平和旬間 
日本カトリック司教協議会会長談話

平和旬間を迎えるにあたり

 平和と正義を祈り願うわたしたちは、今年、ヨハネ二十三世教皇(在位:1958~1963年)が教会とすべての善意の人々に宛てた回勅『パーチェム・イン・テリス―地上の平和』(1963年4月11日)発布50年目を迎えています。この回勅が出された背景には、「ベルリンの壁」(1961年)によって示されたドイツ国民の分断、米ソの冷戦、そして対立構造のシンボルともなり、あわや米ソの核戦争が一触即発の状況となった「キューバ危機」(1962年)という出来事がありました。
 この回勅では、人と国家の関係を基礎づける人間の義務と権利、国家の権威、共通善が説かれ、また国家間の問題として、真理、正義、連帯、難民、軍備縮小、経済発展などの緊急課題が語られています。
 また冒頭に「真理、正義、愛、ならびに自由におけるすべての民の平和について・・」とあるように、その根底に流れているのは、平和の基盤はあくまで人間の尊厳と人権の擁護にあるという理念です。そして、この理念にそって人間が人間として生きられる社会に向かって発展するとき、平和の実現は可能だと訴えているのです。
 この真理は50年経った今の社会にも強いメッセージを投げかけています。現在、社会司教委員会では今年の平和旬間に利用できるように改訳作業を進めています。是非、平和の基盤となるメッセージを受けとめ、実りある信仰年の平和旬間を過ごしていただきたいと思います。

 おりしも国内では、改憲への動きが急となっています。これは、憲法改正要件を現行の両議院の3分の2以上の議員の賛成から過半数に緩和しようとする企てです。憲法改正のハードルを下げることによって憲法9条などの改訂を容易にしようという意図がこめられており、今は非常に憂うべき事態にあります。9条は日本が世界に誇る宝であり、またイエス・キリストの愛の教えを最もよく表している条文であります。9条が存在するので日本は敗戦後一度も戦争で人を殺したことはなく、また殺されずにすんだのです。9条を護り生かすことはわたしたちの大切な責務です。

 去る4月28日、政府はサンフランシスコ条約締結の記念日に「主権回復の日」の式典を開催しました。この日は沖縄や奄美の人々にとっては本土から切り捨てられたと感じた日であるということを忘れてはいけません。沖縄は奄美、小笠原とともに講和条約発効後も米軍の統治下に置かれました。特に沖縄では土地は接収されて基地は拡大され、沖縄ではこの日を「屈辱の日」と呼んでいるのです。それにもまして、「日米地位協定」という不平等協定によって、いまだ日本の主権は回復していないことも忘れてはならないでしょう。
 わたしは、沖縄戦終結の日とされている6月23日(沖縄慰霊の日)にこの平和旬間の談話を発表します。沖縄の人々の想いに連帯することこそが重要なことであると考えるからです。沖縄の住民は本土による構造的差別と無関心そして米軍基地による様々な被害に今なお苦しんでいます。また、日米両政府は沖縄県民の声を無視して辺野古新基地建設を進めようとしています。

 わたしたちは信者として、また市民として自分の信じる平和への道を政治に反映させなければなりません。
 今年の平和旬間に先立つ国政選挙はそのための貴重な機会です。わたしたちは教会の教えを学び、よく祈り、良心に従って国民の権利と義務を遂行しましょう。
 皆さんの上に聖霊の導きを祈ります。

2013年6月23日
日本カトリック司教協議会
会長 岡田武夫

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