国務省、画像と紋章保護の「原則とガイドライン」

原則とガイドライン Ⅰ はじめに  教皇庁国務省は、教皇の公務を間近で支える役割を担っており、その権限のもとに、教皇の画像、教皇ご自身とバチカン市国の紋章や他の明確なしるし(旗など)を保護する。  ここ数年、マスメディア […]

原則とガイドライン

Ⅰ はじめに

 教皇庁国務省は、教皇の公務を間近で支える役割を担っており、その権限のもとに、教皇の画像、教皇ご自身とバチカン市国の紋章や他の明確なしるし(旗など)を保護する。

 ここ数年、マスメディア(とりわけインターネット)の重要性が拡大しているが、その一方で、画像や商標がさまざまな商業目的のために乱用されている。したがって国務省はこの点にさらに注目し、さまざまな対策を講じる必要性を感じている。

 それらの対策のおもな目的は、教皇の信者へのメッセージがそのままのかたちで確実に伝わるようにすること、さらには教皇の情報と教皇庁の紋章が商業上の目的のために使われたり、乱用されたりしないようにすることである。もしそのようなことが起こったら、その商業的な取り組みが、ありもしない教皇庁の慈善活動の一環であると信者が誤解してしまう恐れがある。もう一つの重要な目的は、写真と紋章の乱用の背後にある違法行為を出来るだけ阻止することである。ただしそれは、諸国政府から支援が得られるかどうかにかかっている。

 上記の分野における国務省の取り組みの一つとして、「画像と紋章を保護するための調整部門(CCTIS)」が設立された。その任務は画像と紋章の保護に関する活動を調整することである。それらの活動は、国務省、もしくは普遍教会や地方教会の他の機関が直接行うべきものである。

 国務省がすでに行っているもう一つの取り組みとして、数か月前に設立された「国際監視局」が挙げられる。その目的は、画像や紋章がどのようなかたちで使用されているかを監視し、悪用していると確証できるケースをつきとめ、可能な範囲で法的措置をとることである。

 しかし、画像と紋章の保護が効率的に行われるためには、国務省が直接的な活動をするだけでなく、普遍教会と地方教会の他の組織が、それぞれの管轄分野で協力することも必要である。それにより、域内で活動するさまざまな機関の間の協力関係は徐々に高まるであろう。

 上記の枠組みを進めるにあたり、教皇使節が制度上の役割に応じて派遣される。彼らは国務省の代表として、それぞれの管轄地域で活動しなければならない。

 つまり教皇使節は、画像と紋章の保護に関する情報と文書が、地域で活動する個人や組織と、国務省の間で効率的に交換できるよう保証する責務を負う。

 情報と文書の交換を出来るだけ効率的で安全なものにするために、国務省と教皇使節が共有する「専用のITプラットフォーム」が立ち上げられ、すでに活用されている。この専用ツールを活用することにより、普遍教会と地方教会の間の調整は今後も進むであろう。また国務省と教皇使節も、一つの統合されたシステムの一員として、あらゆる目的のために活動し、すべての「教区、小教区、そして普遍教会と地方教会に含まれる他の組織(今後は「受け手」と記載)」の活動を調整し、導くという使命を果たすことができるであろう。

 この文書は、画像と紋章の使用の分野において受け手が従うべき主要な原則を明らかにするためのものである。その目的は、普遍教会と地方教会のさまざまな機関の中で、より組織的、効率的、共働的で統合された保護システムを促進することである。

 すべての受け手はこの文書に記された原則に従わなければならない。

Ⅱ 適応されるケース

1. 画像、紋章が乱用されているケース
 ここでいう「乱用」とは、画像と紋章に対する、不法となりうる行為、もしくはもっとも広い意味での乱用を指す。後者は、教皇の栄誉と名声、もしくはカトリック信者の心情を傷つけるために用いられる場合、もしくは然るべき許可も得ずに商業的目的のために用いられる場合である。後者の詳細については、2項の下記を要参照。

 乱用が行われた場合、そのことに気づいた受け手は、取得した関連情報と文書を裁治権者/管区長に報告しなければならない。

 すべての情報と文書は、域内の司法権を有する教皇使節に最終的に届けられなければならない。教皇使節は、可能であれば意見を添えて、正規のルートを通してそれらを国務省に送るべきである。それにより国務省は、法廷等で行いうる行為に関する最終的な判断を下し、通達する。

 上記の連絡行程は、迅速かつ正確に行われることが好ましい。それは、画像と紋章を保護するという教皇庁の権限を脅かさないためである。

 国務省から前もって許可を受けてはじめて、保護活動を行うことができる。

2. 画像、紋章が、乱用されずに用いられる場合
 前項に記された事項により、乱用されていないことが判明したが、受け手が画像、紋章を使用するか処分したいと望んでいる場合、もしくはその権限を第三者に与えたいと望んでいる場合、この項に記された原則に従って行動すべきである。

2.1 国務省の独占的権限
 画像、紋章を使用したり処分したりする権利、もしくはその権限を第三者に与える権利を有するのは、国務省だけであるということが、当該の法規のもとに事前に伝えられるべきである。ただし、教皇使節は国務省から命令されれば、その権利を限られた範囲でもつことができる。

 紋章(教皇庁、教皇、もしくはバチカン市国の公的象徴)に関しては、国務省が1883年3月20日に「工業所有権の保護に関するパリ条約」に調印しており、加盟国の資格をもつ(1975年より)。この条約が定める規定に基づき、国務省は、この条約のすべての調印国により、紋章を保護する権利を国際的に認められている。

 同様に、画像については、最近発表された「知的財産の著作権と、それに関連する権利の保護に関する法規CXCVII」の第3条5項と6項に次のように記されている。「国務省は、教皇の個人的権利の行使、放棄、保護がかかわるあらゆる活動を行う権利を有する。国務省は、教皇使節を通して行動する資格も有する」。そして教皇使節が法廷で行動するためには、「個々の場合に応じて国務省から権限を受け」なければならない。

2.2 国務省によって「暫定的(ad experimentum)」に規制が緩和される活動
 国務省は、地元の宗教機関の役割と独立性を促進するために、暫定的に一年間(この文書の日付から)、国務省から権限を受けたり報告したりせずに画像、紋章を独自に使用する権限を、次の条件のすべてを満たす場合にのみ、それぞれの受け手に、その組織的、地域的権限の範囲内で与える。ただし、2.1段落に記された事柄はこれにより影響を受けることはない。

a) 受け手の組織的な目的のためだけに、教会法や民法のもとに、受け手の権限と統治地域内で行われる。
b) 直接的にも、間接的にも、商業的、宣伝的な性質がない。
c) 画像、紋章を使用する許可を第三者に与える活動にかかわっていない(下記で説明する趣旨に沿っている契約者の場合のみ例外)。
d) 教皇の訪問や公的な記念行事(聖年、教皇職就任記念日など)とは無関係に行われる。
e) 当該の教会法や民法、もしくは教皇によって示された優先事項に反しない。

 この項に記される事項に自主的に従いながら、画像、紋章を使用したり、処分したりするためには、a)からe)までのすべての条件が満たされていなければならない。指摘された条件のひとつでも満たされなければ、受け手は、国務省から指示や許可を得るために、教皇使節に報告しなければならない。

 受け手は、指示や許可を得るために、保持している情報や文書を教皇使節局に提出し、教皇使節局もしくは国務省から直接送られる評価に従うべきである。その際、以下の情報が正確に伝えられるべきである。

  • 画像、紋章を使用する当事者の個人情報
  • 使用の主題と、計画された活動の説明
  • 活動の地理的範囲
  • 活動の期間
  • 製品を作ることが予定されている場合には、作られる標本(版)の数と、その配布方法。
  • 価格、支払い条件等の金銭的条件

受け手が、a)からe)までの条件の中の一つ以上に合致しないのではないかと疑問に思う場合、またその解釈に疑問を抱く場合、さらには「非常に関わり」のある出来事や、とりわけ複雑な関連する問題に対して疑いをもつ場合にも、受け手はそのことを教皇使節に報告しなければならない。それにより、とくにこの文書に記された原則が適用される初期の段階で、共通の利益をもたらす非常に有益な話し合いと調整が促されるであろう。

2.3 2.2項に記された緩和される活動に関する説明と例
2.2項で条件a)からe)として示されたものに関する説明と例は以下のとおりである。

1)条件a)の中の「組織的な目的」とは、受け手がその内部規則や他の当該の法律に従いながら果たす使命のことを指す。したがって受け手は、自分自身の組織や管轄地域の領域のみに属する活動のために、画像、紋章を使う権利を与えられる。
2)条件b)の中の「商業的、宣伝的な性質」とは、直接的、間接的な商業目的のために、画像、紋章を使用することを意味する。たとえば、企業などの商標や名前と一緒に、画像、紋章が使われる場合である。このケースは、少なくとも間接的に商業的、宣伝的性質を帯びていると考えられる。
3)条件c)の中の、受け手が「画像、紋章を使用する許可を第三者に与える」ケースは、次の二つに区分される。
3.1)第三者に許可を与えることが、受け手の組織的な目的と厳密に結びついた物品、サービスの供給のためにのみ役立っている場合、(たとえば、受け手である小教区が、その組織的な目的のために使われる宗教的な出版物を発行する必要に迫られ、その印刷を印刷会社に委託する場合)、教皇使節を通して国務省に連絡したり、許可を求めたりする必要はない。
3.2)3.1)に当てはまるかどうか不明なときはつねに、教皇使節に報告し、国務省の許可を申請しなければならない。
4)条件d)に関しては、とくに説明の必要はないように思われる。教皇の訪問や公的な記念行事は、並はずれた事態になることが予想される。したがって、画像、紋章を使用する際にはつねに教皇使節もしくは国務省に前もって報告して許可を受け、個々の場合に応じて原則に従う必要がある。
5)条件e)は、画像、紋章の使用が、当該の教会法や民法の一般原則、もしくは教皇の声明のもとに禁止されていると判断されるすべてのケースに当てはまる。たとえば、公共の建物にビラを貼ることも、特別な許可を得ていなければ、多くの国の規範に反する。もちろん、各々の受け手は、あらゆる規範と当該法の他の規定に照合し準ずる責任を担い、その例外はこの文書には示されない。同様に、メダルやコインなどの高価なものに画像を使うことも、教皇の意思に反するものと考えるべきである。

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