第25回日韓司教交流会記念メッセージ

第25回日韓司教交流会記念メッセージ  わたしたち日本と韓国のカトリック司教有志は、1996年に最初の集まりを開催して以来、25回にわたり、相互の国と教区を訪問しながら、交流の機会を設けてきました。  わたしたちは、「両 […]

第25回日韓司教交流会記念メッセージ

 わたしたち日本と韓国のカトリック司教有志は、1996年に最初の集まりを開催して以来、25回にわたり、相互の国と教区を訪問しながら、交流の機会を設けてきました。
 わたしたちは、「両国民が過去の不幸な歴史を乗り越え、正義と平和の満ち溢れる明るい未来へと共に歩んで行くために真摯な対話と多様な交流を」行うことを目的としてこの集まりを始めました(2017年「北東アジアの平和を願って」)。日本と韓国の間には、お隣同士の国として様々な物と人の交流を積み重ねてきた歴史があります。過去の歴史を誠実に振り返り、真摯な反省の上に立った前向きな希望を共有しながら、ともに歩みを進めることで、この地域において教会が、「神との親密な交わりと全人類一致のしるし、道具」(教会憲章第1項参照)となりうると信じています。
 当時、日本司教協議会副会長であった濱尾文郎司教(のち枢機卿)と、韓国司教協議会会長であった李文熙(イムニ)大司教は、日本と韓国の教会が、国家の利益を代表するものではなく、同じ信仰における兄弟姉妹として、相互理解と苦難の歴史に対する認識を持つことによって、神が望まれる「愛」と「平和」を実現することができるという理念のもと、交流会を始められました。このような努力をなさったお二人の司教様方に、心からの敬意を表します。
 当初の交流会のこの目的は、2004年5月に韓国で、「若者に伝えたい韓国の歴史――共同の歴史認識に向けて」が出版されたことへとつながり、同年11月には日本語訳も出版されました。
 その後も互いの交流は継続され、近年は、歴史認識の共有にとどまらず、この地域における福音宣教の課題や、社会が直面する様々な課題についての意見の交換や共通認識の形成を目指してきました。両教会の交流が進むにつれ、教区間の協力関係も深まり、司祭・修道者や信徒の交流や協力も広く見られるようになりました。
 25回目となる節目の交流会は、この3年間世界が直面してきたコロナ感染症の影響を受けて延期が続いてきました。状況が落ち着き、互いの国の間の交流も復活したことを受け、今年、2023年11月、東京において交流会を開催することができました。
 この節目の時に、わたしたち日本と韓国の司教有志は、世界が暴力によって負の影響を強く受けている現実を目の当たりにしています。神からのたまものであるいのちを危機に直面させるような状況は、悲しいことに世界各地に見受けられ、残念なことに解決の糸口さえ見いだすことができずにいます。なかでもイスラエルとパレスチナ、ウクライナをはじめとして、世界各地で続いている戦争状態のなかで多くのいのちが危機に直面している状況に、わたしたちはあらためて暴力ではなく平和の構築を最優先するように呼びかけます。また東アジアにおける政治的な緊張は続いており、この地域の安定のために、日本と韓国をはじめ各国が自制心を発揮し、武力に頼ることなく、対話のうちに平和が確立されることを強く求めます。
 また不安定な世界の情勢は、難民や移住者を多く生み出しており、いのちを守るために祖国を離れ、安全と安心を求めて韓国や日本にやって来る人々も少なくありません。特に感染症の影響下にあったこの3年、世界は利己主義を強め、「異質な存在」に対して排他的になり、時に暴力的な対応すら見られるようになっています。わたしたちは、誰ひとり排除されることなく、すべてのいのちが、神からのたまものとして大切に守られ、人間の尊厳が尊重される世界を実現するよう、すべての人に呼びかけます。
 これからも、日本と韓国の司教団は互いの交流を深め、ともに祈り合い、ともに支え合うことで、シノドス的な教会を率先してあかしするものとなり、この地域において神の平和が確立されるように、取り組んで参ります。

2023年11月16日 東京にて
第25回日韓司教交流会参加司教一同

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