『見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き』7月1日発売

『いのちへのまなざし』以来となる、司教団文書の刊行 『見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き』7月1日発売 見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き 日本カト […]

『いのちへのまなざし』以来となる、司教団文書の刊行
『見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き』7月1日発売

見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き
日本カトリック司教団・著
B6判並製160頁
定価880円(税10%込)
ISBN978-4-87750-251-5

*English version will follow.

関連リンク


推薦のことば

小原克博 (同志社大学学長、神学部教授)

 本書は、回勅『ラウダート・シ』が投げかける諸課題に対する日本のカトリック教会の応答をまとめたものである。水俣病をはじめ、日本社会の問題を交えた本書を読み進めていく中で、読者はグローバルな課題を「自分ごと」にする手がかりを得ることもできるだろう。また、本書が発する問いかけは、他の宗教や一般社会にも届くものとなっている。言い換えれば、本書の柱となっている「観る」「識別する」「行動する」は、カトリックに限定されない普遍性を持っており、まさに「共通善」への気づきとその実践を広く促している。この世の問題と信仰的視点をどのように重ね合わせることができるのかを考える上でも、多くの宗教者に手に取ってもらいたい一書である。

髙見三明 (長崎名誉大司教)

 今や「皆がともに暮らす家」である地球の自然環境と生活環境は相まって危機的状況にあります。日本司教団は、教皇回勅『ラウダート・シ』を土台にして、「すべてのいのちを守るための取り組みに参加するよう呼びかける」ため指針を作成しました。キリスト信者は、すべての被造物が神の贈り物であることを感謝し、神とほかの人々と自然と、そして自分自身とはすべて互いに分かちがたくつながっていることを信じ、それらの関係改善に努めなければなりません。それが「人と被造物すべてに対する神の愛」をあかしすることになります。冊子の文章は格調高く、内容は包括的です。一人でも多くの人と学び合い、何よりも実際に行動を起こすことを願っています。

萩原千加子 (カリタス女子中学高等学校校長)

 葬送曲を延々聴かされる覚悟で読み始めると、深層で流れていたのは歓喜の歌だった。題名を見ればその通り、創世記1章。環境問題に明るい未来は見えないが、この世界に注がれる恵みの豊かさを祈りを通して味わわなければ、問題に立ち向かう力も湧いてこない。9年前、回勅『ラウダート・シ』が出された時には「なぜ教皇様が環境問題を?」と思ってしまったが、環境問題と貧困問題は直結していて、信仰の在り様が試されていた。しかし、しばらくすれば意識は薄れるのが常。断捨離の本は、読んでいる際には目新しいことは何も感じずとも、読み終える頃には頭が断捨離モードになり、猛烈に大掃除を始めることになる。この本もそれと似て、具体的な行動が肝心だ。一読をお勧めする。




WYDリスボン大会に参加した青年の一人に、若者代表として校正刷に目を通してもらい、感想を寄せていただきました。
昨年のワールドユースデー(WYD)リスボン大会で、インテグラルエコロジーをテーマにしたグループ発表を担当し、準備や分かち合いを通して考える機会をもちました。本書が最初に教えてくれるのは、すべては神から人間への贈り物だということです。天の父がわたしたちに自然を与えてくださった意味を真摯に受け止め、被造物と手を携えながら、調和のうちに生きられるよう祈り求めたいと思います。本書はまた、わたしたちが話し合い、分かち合い、自らを振り返りながら変えられていく旅へと招いています。複雑な構造や強大な権力、山積する課題を前にしても、単純だが、オフィスでも家庭でも丁寧に生き、福音を伝えるよう背中を押された気がします。 内山七海さん(東京教区信徒)


本書について

 本書のタイトルとなっている「見よ、それはきわめてよかった」は、旧約聖書の創世記1章31節にあることばです。創造主である神は、すべての被造物を「よいもの」としてお造りになりました。その「よいもの」が、いまや瀕死の状態にあります。環境危機への対応は、まさに全人類共通の喫緊の課題です。
 日本の司教団は、教皇フランシスコが2015年に公布した回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』に学び、時間をかけて、環境危機を扱う本文書の作成を進めてきました。
 副題にも表現されていますが、中心となるテーマは、教皇が『ラウダート・シ』で説いた「総合的なインテグラルエコロジー」です。それは、あらゆるものは密接に関係し合っているという考えから出発するものです。カトリック教会は、神と、他者と、自然と、そして自分自身との調和ある関係を追求して生きていくようにと呼びかけることで、持続可能な人間開発の実現を目指しています。
 環境危機についての考察はつねに、その人間的側面と社会的側面とを取り上げてなされなければなりません。それを可能にするのが、総合的なインテグラルエコロジーの考えであり、そこから導かれる姿勢です。
本書は、次のような3部の構成となっています。

 第一部 観るSEE――「ともに暮らす家」を観る
 第二部 識別するDISCERN――信仰に照らされて識別する
 第三部 行動するACT――ともに生きるために行動する

 観る、識別する、行動する――この3段階のプロセスは、カトリック青年労働者連盟(JOC)の実践から生まれ、教皇ヨハネ二十三世の回勅『マーテル・エト・マジストラ』(1961年)に取り入れられたものです。
 ともに暮らす家、すなわち地球で今起きていることに対応するには、まず何が起きているのかを具体的に知り、知ったことについて、しかるべき原理に照らして判断を加え(カトリック教会においては、教会の社会教説[教会の社会についての教え]が基準となります)、その判断を踏まえて、なすべきことを決定し実践へとつなげていかなければなりません。こうした考えを本書は骨組みとしています。
 今人類には、大胆なライフスタイルの刷新が求められています。それをどのように行っていくかは、各人が置かれた場(家庭、学校、職場、地域、信仰共同体など)によって異なります。
 また、国や自治体あるいは企業などに訴えていく、社会全体に働きかけていくといった行動もあれば、個人の努力や心掛けによってなされる行動もあります。さらには、学校、勤め先、地域といった、身近な人間関係の中で協力して進めていく行動もあります。
 そうした包括的な見地を本書は備えており、それを踏まえて読者に、環境やエコロジーについての理解と実際的な行動を促しています。
 日本司教団は2020年に「すべてのいのちを守るためのキリスト者の祈り」を公にしました。地球を傷つけてきたことを真摯に反省し、神の愛の道具となることを願う祈りです。本書は、この祈りの引用によって結ばれています。
 カトリック教会の司教団が著すものですから、すべては信仰の視座に基づいています。ですが、ここに述べられた訴えは、カトリック教会のみに向けられたものでもありません。
 「すべての人が与えられたいのちを十全に生きることができるように」、その願いをもって日本司教団は、2001年に『いのちへのまなざし』を、2017年にはその増補新版を刊行しました。それは、宗教者の立場からでありながらも、一宗教の枠を超えて広く社会全般への呼びかけとなることを願って発せられたメッセージです。教会は社会から遊離したものであってはならず、社会への訴えかけは義務であり、欠くことのできない務めです。
 その自覚をもって、『いのちへのまなざし』を受け、その主題をさらに展開していくものとなること――、本書刊行の意図は、そのように表現できるものでもあります。


『見よ、それはきわめてよかった――総合的なインテグラルエコロジーへの招き』

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