2025年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって 日本カトリック司教協議会会長呼びかけ

日本のカトリック信者の皆様 2025年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって  教皇フランシスコは、性加害の問題に教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽 […]

日本のカトリック信者の皆様

2025年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 教皇フランシスコは、性加害の問題に教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求め、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けられました。日本の教会では、四旬節・第二金曜日を、この祈りと償いの日と定め、2025年にあっては、来る3月21日(金)がこの日にあたります。
 どうぞ、四旬節第二金曜日に、またはその近くの主日に、教皇様の意向に合わせ、司教団とともに、祈りをささげてくださいますようにお願いいたします。
 2025年はカトリック教会にとって、25年に一度の聖年にあたります。教皇フランシスコは大勅書「希望は欺かない」において、この一年を、「ついえることのない希望、神への希望を際立たせる聖なる年」とするように呼びかけ、全体のテーマを「希望の巡礼者」とされました。
 神のいつくしみに与り、罪のゆるしを得る恵みの年に、教会はいのちを生きる「希望」を高く掲げ、すべての人と歩みをともにしたいと願っています。
 罪のゆるしを求めるためには、自らの過去を振り返り、罪を認め、同じ罪を繰り返すことのない決意を持たなくてはなりません。ともにこの聖年を歩むようにと呼びかける教会は、自らの過去を振り返り、罪を認め、同じ罪を繰り返すことのない決意を固めない限り、希望をあかしする存在とはなり得ません。
 希望をあかしするべき教会にあって、率先して模範を示すべきなのは聖職者や共同体の指導者です。世界において、また日本にあっても、神からの賜物であるいのちに対する暴力を働き、なかでも性虐待という神の似姿としての人間の尊厳をないがしろにする行為を、聖職者や共同体の指導者が働いたという事例が、近年相次いで報告されています。組織内における優位な立場を利用して、人間の尊厳を辱め蹂躙する性虐待や性的暴行を働き、多くの方を深く傷つけた聖職者や指導者が存在します。
 信頼していた聖職者から暴力を受け、心に深く消えることのない傷を負われた方々に対して、あたかも被害を受けられた方に責任があるかのような言動で加害者を擁護するなど、二次加害によってさらに被害を受けられた方々を傷つけた事例も、教会内にあります。これらの言動が、人間の尊厳をさらに深く傷つけています。責任は優位な立場を利用した加害者にあるのは当然です。
 被害を受けられた多くの方々に、心から謝罪いたします。
 昨年10月に閉幕したシノドスの最終文書には、その150項に、以下のような指摘があります。
 「もう一つの非常に重要な分野は、教会のすべての側面において、未成年や社会的弱者にとって共同体をより安全な場所にするために、保護の文化を推進することです。虐待の防止と不適切な行為への速やかな対応を可能にする規則と法的手続きを、教会組織が備えるための作業はすでに始まっています。・・・被害者が歓迎され支援されることが不可欠であり、それは細心の配慮を持って行われなくてはなりません。これは深い人間愛と、資格を持った専門家の助力が必要です。・・・セーフガーディングのプロセスは絶えず監視され評価されなくてはなりません。被害者とサバイバーは、細心の配慮のうちに歓迎され、支援されなければなりません。(試訳)」
 また95項から102項までは、「透明性、説明責任、評価」の重要性が説かれており、今後、ハラスメントなどへの対応についても、随時見直しながら、必要に応じて、社会的に評価される組織やプロセスに常に変えていかなくてはなりません。
 現状の教会の組織形態や日本の法律上の組織形態では、それぞれの司教区や修道会は独立しており、一致協力して透明性、説明責任、評価に取り組むことができておらず、この点は多くの被害者の方々、支援者の方々から厳しく指摘をされています。また、独立した異なる組織が林立しているため、迅速な対応ができていないのも事実です。現在、教皇庁未成年者保護委員会の助けをいただいて、司教協議会と男女の修道会協議会とで、既存の枠を越えた協働関係の枠組み構築を急いでいるところです。
 被害を受けられた方々と歩みをともにするためには、教会内外のいわゆる外部専門家の協力と協働がなければ、ふさわしく対応することはできません。今の時代を担う青年たちや教会全体の声に耳を傾け、よりふさわしく十分な対応のあり方やそのための組織の改編、さらには聖職者や共同体の指導者の啓発などを検討してまいります。
 あらためて、無関心や隠蔽、二次加害も含め、教会の罪を心から謝罪いたします。聖年にあって、わたしたちの希望そのものである神の手によって、被害を受けられた方々の心が包まれますように、祈ります。また聖職者のためにも、その召命を忠実に生きることができるように、どうかお祈りくださいますようお願いいたします。

2025年2月1日

日本カトリック司教協議会 会長
菊地功

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