日本カトリック司教団核兵器廃絶宣言2025 「核兵器の破壊的な力を体験したわたしたちには、その貴重な証人として、核兵器の廃絶を訴え続けていかなければならない責任があります」(「平和への決意 戦後五十年にあたって」)。 […]
日本カトリック司教団核兵器廃絶宣言2025
「核兵器の破壊的な力を体験したわたしたちには、その貴重な証人として、核兵器の廃絶を訴え続けていかなければならない責任があります」(「平和への決意 戦後五十年にあたって」)。
日本カトリック司教団は、戦後80年を迎えるにあたり、唯一の戦争被爆国の司教団として、広島・長崎の被爆者と市民が抱えてきた重い歴史と痛みを深く胸に刻み、核兵器廃絶に向けた強い決意をここに宣言します。
広島、長崎では、1945年の原爆投下により多くの生命が失われ、今なお多くの人がその苦しみと後遺症を背負って生きています。この悲劇を繰り返してはなりません。
核兵器の存在は、神がきわめてよいものとして造られたこの世界と人間の尊厳をおとしめるものであり、すべてのいのちを脅かす深刻な脅威です。核爆発の際に発生する放射性降下物(フォールアウト)による被害や広範囲の環境破壊は、地球規模で生態系に甚大な悪影響を及ぼします。また、被爆者をより広義で捉える「グローバル・ヒバクシャ」の視点からは、核実験やウラン採掘などに関連する被害者の存在も忘れてはなりません。したがって、核兵器の開発、実験、製造、保有、使用は、倫理的に許されるものではありません。
核抑止力という考え方は、紛争解決における有効な手段とはいえないばかりか、「安全保障のジレンマ」に陥ることで、むしろ世界を核戦争の危機へと向かわせるものです。このような考えをわたしたちは決して容認できません。
わたしたちは、武力による威嚇を国家間の紛争解決の手段として否定する日本国憲法の精神を重んじ、平和的対話を通じて共存の実現に向けて働きかけてきました。いかなる紛争下においても、核兵器を威嚇手段として用いることは、国際法および国際規範の観点からも、決して容認されるべきではありません。
わたしたちは、キリストの福音に従い、対話を通じた平和の実現を目指し、すべての人の生命と尊厳を守るために、核兵器を完全廃絶するよう強く求めます。
わたしたち司教団は、以下の行動を続けます。
- 被爆の実相を世界中に伝え、核兵器の非人道性を訴え続けます。
- 核兵器廃絶を目指す国内外の運動と連帯し、その実現に向けた行動を推進します。
- 核兵器禁止条約(TPNW)の理念を支持し、日本政府が一刻も早くこれを署名・批准するよう働きかけていきます。
- 平和教育や啓発活動を通じて、次世代に平和の理念を引き継ぎます。
世界は核兵器によらない平和を選択できるはずです。核兵器廃絶を望む皆様に呼びかけます。すべてのいのちを脅かす核兵器によってではなく、すべてのいのちを尊ぶ神の愛の実践によって、神との、人々との、自然とのわたしたちの関係を調和のうちに保ち、平和な社会を実現するために祈り、力を尽くしてまいりましょう。