「船員の日」メッセージ 2025年

教皇庁総合人間開発省は、7月の第2日曜日を「船員の日」と定め、世界中の司牧者、信徒に船員たちのために祈るよう呼びかけています。日本カトリック難民移住移動者委員会も、船員たちとその家族のために祈るよう皆様に呼びかけます。 […]

教皇庁総合人間開発省は、7月の第2日曜日を「船員の日」と定め、世界中の司牧者、信徒に船員たちのために祈るよう呼びかけています。日本カトリック難民移住移動者委員会も、船員たちとその家族のために祈るよう皆様に呼びかけます。


2025年 船員の日メッセージ

海で働く人々とその家族のために



 人々の生活と世界の経済に重要な貢献をしている、海で働く人々、船員たちとその家族、さらに彼らを支援している司牧者やボランティアの人々に思いを馳せる日として「船員の日」は定められました。この日は、キリスト教を基盤とするエキュメニカルな動きの一環として、1975年イギリスで始まりましたが、英仏海峡を越えて広がり、現在は全世界で取り組まれています。世界の9割近く、そして日本では99.7%もの物資を海上輸送しているおよそ180万人の船員たちのために、今年も祈りを呼びかけたいと思います。

日常生活を支える無名の英雄たち
 荷物を安全に港まで運ぶ船員たちの献身的な奉仕なしには、わたしたちの生活は成り立ちません。2012年に、国際海事機関(IMO)の当時の関水康司事務局長が「わたしたちが手に取るもののほとんどは、どこかの時点で、海を渡って運ばれてきたものです」と指摘した状況は、今もまったく変わっていません。船舶は、全ての人々が頼りとする食料、燃料、原材料、商品を輸送しています。わたしたちの目には見えない船員たちの働きが、暮らしを支えてくれているのです。

 言うまでもないことですが、一人ひとりの船員には、それぞれの愛する家族がいます。船員の多くは、9カ月から12カ月の間、家を離れて航海しています。家族との食事、抱擁、そして誕生日を一緒に祝うことなどを恋しく思いながら。嵐の中を航海し、何週間も太陽を見なかったり、果てしなく広がる海の水平線を眺めたりしながら懸命に働いています。船舶が届ける物品をわたしたちが享受する一方で、船員たちは、新年や記念日、休日を、遠い家族を思いながら過ごすのです。

困難を乗り越えて
 海での生活は過酷で孤独なものです。激しい嵐から、海賊の脅威や戦争にいたるまで、船舶は、あらゆる困難に直面します。ミサイルやドローンの攻撃にもかかわらず、数百隻の船舶が紅海を航行し続けています。新型コロナウィルス感染症のパンデミックの数年間、大勢の船員が、その契約が満了しているにもかかわらず家に帰ることができず、何カ月も海上で立ち往生しました。このような状況の中で、狭いスペース、プライバシーのなさ、昼夜を問わない過酷な労働に従事しつつ、精神的ストレスやホームシックと闘う多くの船員がいます。

 彼らが届ける船荷は、港を経由し、世界中の家庭の毎日に多大な恩恵と糧をもたらしています。スーパーで食品を買ったり、ドラックストアで薬を買うとき、朝起きて服を着るときにも。船員たちは、その仕事を通じて世界中の家族の暮らしを結びつけています。

祈りのうちに彼らに思いを馳せながら
 心からの感謝をもって、このような船員たちを思い巡らす時間をもちましょう。すべての船員とその愛する家族の安全と幸せのために、夕食時、また就寝前に、短い祈りや黙想をささげることができます。こうしたわたしたちの祈りが、暴風雨や孤独の中でも、また心配して待つ家族のなぐさめのためにも、大きな助けとなるでしょう。

 港湾で働く人々、港のチャプレンにも感謝します。そして、寄港した船員を訪問して小教区で歓迎し祈りや食事の時間を共有したり、依頼があれば車で送迎したり、プレゼントのニット帽を編むなど、各地のボランティアグループや小教区での取り組みにも敬意を表します。これらの活動を参考にしながら、日本のステラマリス(船員司牧)がさらに広がり、根付いていくことを願っています。

2025年6月13日
日本カトリック難民移住移動者委員会
委員長 山野内 倫昭