
2025年11月7日に発表された、COP30(第30回国連気候変動枠組条約会議、2025年11月10-21日、ブラジル、ベレン)へのメッセージ(原文英語)。メッセージは教皇庁国務省長官ピエトロ・パロリン枢機卿によって朗読 […]
2025年11月7日に発表された、COP30(第30回国連気候変動枠組条約会議、2025年11月10-21日、ブラジル、ベレン)へのメッセージ(原文英語)。メッセージは教皇庁国務省長官ピエトロ・パロリン枢機卿によって朗読された。COP30首脳級会合は11/6(木)から11/7(金)の2日間、開催された。
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(アンドレ・アラーニャ・コレア・ド・ラゴ)COP30議長
各国、政府首脳の皆様。
教皇レオ十四世の代理として、第30回国連気候変動枠組条約会議の参加者の皆様に心からご挨拶申し上げるとともに、教皇の寄り添いと支えと励ましを約束申し上げます。
平和を育むことを望むならば、被造物を守ってください。平和の構築と被造物の管理の間には明確なつながりがあります。「すべての人が神と人間と全被造物との分かちがたい関係を認めるなら、善意の人がもっと平和を追求しやすくなることは間違いありません」(1)。
現在の困難な時代において、国際社会の注目と関心はおもに国家間の紛争に焦点を当てているように思われる一方で、被造物への正当な尊重の欠如、天然資源の収奪、気候変動による生活の質の低下の増大によって平和が脅かされているという意識もますます高まっています。
これらの課題は、その世界的な性格のゆえに、地球上のすべての人の生命を危険にさらしており、それゆえ、国際協力と、結合力のある前向きな多国間主義を要求します。この多国間主義は、生命の神聖性と、すべての人の神授の尊厳と、共通善を中心に据えます。残念ながら、わたしたちは、政治的アプローチと人間行動が、集団的利己主義と他者の軽視と近視眼的思考によって特徴づけられた、逆の方向に向かうのを目にしています。「地球温暖化や武力紛争によって燃え盛る世界の中で」(2)、この会議は、互いと未来の世代に対する責任を心に留め、利己的な利害を脇に置きながら、共通の言語と合意を探求する共同の取り組みの中で他者の見解に対する敬意を通して、希望のしるしとならなければなりません。
議長。
教皇聖ヨハネ・パウロ二世は、すでに1990年代に、環境危機は「倫理的な問題」であり、「発展途上諸国と先進工業諸国とが、新たな倫理的連帯を緊急に必要として」おり、「自然と社会の平和で健康的な環境づくりを推進する責任を、諸国家はますます分かち合っていかなければなりません」(3)と強調しました。悲劇的なことに、もっとも脆弱な状況にある人々が、気候変動と森林破壊と汚染の破壊的な影響を最初に受けます。それゆえ、被造物の保護は、人間性と連帯の表現となります。
このような観点から、被造物と隣人の保護によって永続的な平和を実現するために、ことばと考察を、責任と正義と公平を基盤とした選択と行動に移すことが決定的に重要です。
さらに、気候危機はすべての人に影響を与えるため、救済的行動は、地方自治体、市長と知事、研究者、若者、起業家、信仰に基づく機関とNGOを含まなければなりません。
議長。
10年前、国際社会は、気候変動という緊急の脅威に対し、効果的かつ進歩的に対応することが必要であることを認め、パリ協定を採択しました(4)。残念ながら、わたしたちは、この協定で示された目標達成への道のりが依然として長く複雑であることを認めざるをえません。このような状況に対して、締約国は、パリ協定と国連気候変動枠組条約の実施を勇気をもって加速することが求められます。
10年前、教皇フランシスコは回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』に署名し、その中で、すべての人を含むエコロジカルな回心を提唱しました。なぜなら、「気候は共有財の一つであり、すべての人のもの、すべての人のためのものです。地球規模レベルで見ればそれは、人間として生きるために不可欠な諸条件の多くとつながっている一つの複雑なシステム」(5)だからです。
COP30のすべての参加者と、その作業を積極的に見守っている人々が、気候危機の人間的な側面を念頭に置きながら、思考と行動におけるこのエコロジカルな回心を勇気をもって受け入れるように促されますように。
このエコロジカルな回心が、すべての国々、とくにもっとも貧しい人々と、気象災害に対してもっとも脆弱な人々が彼らの潜在能力を完全に発揮でき、市民としての尊厳が尊重されることを保証する、新たな人間中心的な国際的金融制度の発展を促しますように。この制度は、環境債務と対外債務のつながりも考慮に入れるべきです。
個人、家庭、共同体、政治レベルでの決定がわたしたちの共通の未来を形づくる理由を説明するとともに、環境危機への意識を高め、被造物をいっそう尊重し、人格の尊厳と人間のいのちの不可侵性を守る考え方と生活様式を奨励する、総合的な環境教育が推進されますように(6)。
このCOP30のすべての参加者が、平和な世界を築くために、神からゆだねられた被造物を守り、大切にするために努めてくださいますように。
このCOP30において共通善と人類の未来のために重要な決定をなさる皆様のために教皇が祈ることを約束致します。
