
教皇レオ十四世、2026年9月16日、一般謁見演説
連続講話「第二バチカン公会議の諸文書」
Ⅳ.『現代世界憲章』(Gaudium et spes 23-32)
3.人間共同体(聖書朗読箇所:創1・27-28)
兄弟姉妹の皆様。おはようございます。ようこそおいでくださいました。
公会議の『現代世界憲章』(Gaudium et spes)は、第2章を「人間共同体」に当てて、「人々の相互関係の増加」を「現代世界の主要な様相の一つ」(同23)として考察するように招きます。しかし、この現実は「より深くは人格どうしの共同体において」実現されなければなりません。そのためには「人間の霊的尊厳を十分に尊重し合うこと」(同)が不可欠です。
このことは現代においてますます緊急性を帯びています。実際、技術の発展、マスメディアやソーシャルメディアの普及、人工知能の使用の拡大が新たな可能性を開き、障害や距離を取り払いつつある一方で、人間関係はますます非人格化、仮想化し、人間の良心にのみ属する決定をアルゴリズムにゆだねることが習慣化するおそれが生じています。このことに関連して、社会関係に現実的な実体と深い人格性をもたせるようにすることが、キリスト教共同体が目指す貢献です。
公会議は、造り主である神の計画から基準と力を引き出すように招きます。神は「すべての人が一つの家族を構成し、相互に兄弟の精神をもって接すること」を望まれました。だから「神と隣人への愛は第一の、そして最大のおきてである」。そしてこの愛はキリストのうちに完全に啓示され、実現されました(『現代世界憲章』24参照)。
人格の完成と社会の発展は互いに密接に関連するものとして考えられなければなりません。この二つを対立させたり切り離したりすれば、それらをともに無意味にすることになります。最近の歴史もこのことをはっきりと確認します。それゆえ、第二バチカン公会議の教父とともに、うむことなくあらためてこう述べなければなりません。「その本性からして社会生活を決して欠くことのできない人格は、あらゆる社会制度の起源、主体、目的であり、またそうでなければならない」(『現代世界憲章』25)。
『現代世界憲章』は、このような観点から、世界における個人と民の多様性は、危険や脅威ではなく、豊かさと成長をもたらす可能性とみなすべきだと述べます。時として暴力を悪化させる対立は、罪の力の結果であり、あらゆるレベルで破壊と死をもたらす思考と行動の条件です。わたしたちはますます相互の助け合いと分かち合いとケアの論理に心を開かなければなりません――人間のからだのさまざまな部分に見られるとおりに(一コリ12・21-25参照)。
この点に関して、『現代世界憲章』は次のように述べて、「共通善」の完結な定義も示します。すなわち、共通善は「集団と個々の成員とが、より豊かに、より容易に自己完成を達成できるような社会生活の諸条件の総体」(『現代世界憲章』26)です。『現代世界憲章』は同時に諸民族が相互依存関係にあることを認識して、こう述べます。「それぞれの集団は、他の諸集団の必要と正当な要求、さらには人類全家族の共通善を考慮しなければならない」(同)。
公会議教父は、このような基盤から出発して、さらに「実際的かつ急を要する結論」(同27)も指摘します。第一に、人間の人格の尊重です。『現代世界憲章』はいいます。「あらゆる種類の殺人、民族殺戮、堕胎、安楽死、自由意志による自殺など、すべていのちそのものに反すること、また、傷害、肉体的および精神的拷問、心理的強制など、すべて人間の尊厳を損なうこと、また、人間以下の生活条件、不法監禁、強制移送、奴隷的使役、売春、女性や未成年者の売買、さらに、労働者を自由と責任のある人格としてではなく、単なる収益の手段として取り扱う劣悪な労働条件など、人間の尊厳に反するこれらすべてのこと、またそれに類することは、まさに恥ずべき行為である」(同)。
第二の結論はこれです。敵対する人々、わたしたちと異なる意見をもち、異なる行動をとる人々をも尊敬し、愛するようにしなければなりません(『現代世界憲章』28参照)。
第三の結論は、社会正義を要求するすべての人の本質的平等です。『現代世界憲章』はいいます。「社会的差別であれ、文化的差別であれ、あるいは性別・人種・皮膚の色・地位・言語・宗教に基づく差別であれ、基本的人権に関するすべての差別は神の意図に反するものであり、克服され、排除されなければならない」(『現代世界憲章』29)。
最後に、公会議教父は、個人主義的な考え方を克服し、責任と参加に基づく態度をとるよう勧めます(『現代世界憲章』30-31参照)。
親愛なる兄弟姉妹の皆様。この「人格の共同体」としての人類に関するビジョンは、第二バチカン公会議が残した貴重な遺産です。この遺産は、わたしたち皆が、人格の尊厳、社会正義、共通善の構築への自由な参加という基準に基づいて、現代の社会的・政治的計画を責任をもって評価すべく、個人また共同体としての識別を行うための助けとなります。なぜなら、人類の未来は、わたしたち一人ひとりがより人間らしい世界を築くために神と兄弟と協力する努力にかかっているからです(『現代世界憲章』30参照)。
