UNIVERSI DOMINICI GREGIS 使徒座空位と教皇選挙に関して

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※これは参考として訳したものです。 正式には教皇庁のページをご覧下さい。

教皇ヨハネ・パウロ二世 使徒憲章

神のしもべたちのしもべ 司教ヨハネ・パウロ二世 永遠の記念に

主の群れ全体の牧者はローマ教会の司教である。その教会において使徒ペトロは、神のご意志によって殉教し、血をもってキリストに最高の証を立てた。その「崇高さゆえに、あらゆる教会が一致しなければならない」使徒座の正統な継承は、いつの時代にも特別の関心の的であったことを理解するのは難しくない。

実にこのゆえに歴代の教皇は、教皇特有の権利と同様に、後継者選出のために適切な規範を定めることを特殊の義務と考えた。それゆえ、最近もピオ十世、ピオ十一世、ピオ十二世、ヨハネ二十三世、そしてパウロ六世は、使徒座空位の時に教皇選挙という非常に重要で厳粛な任務が委ねられている選挙会を規定し、開催を準備し秩序正しくこれを進行させるために、それぞれの時の必要に答えて賢明かつ適切な規則を定めたのである。

今日ここに私がこの問題を扱うのは、既存の規則を軽視するためではない。むしろ高く評価しており、原理原則の大部分は再確認する意向である。この規則に手を加えるよう私を駆り立てるものは、非常に変化した状況の中で教会は今、生きているという認識と、司教団の賛意を得て実現した、教会法と東方典礼教会法の出版による見直された教会法全体を念頭に置く必要があるという理由のためである。第二バチカン公会議によって提唱された教会法の見直しにより私は、使徒憲章『Pastor Bonus』をもってローマ教皇庁を相応しく改革することに力を注いだ。教会法335条に記され東方教会の47条に転記されていることは、いかなる理由によれ、使徒座が空位の場合は必要な調整をするための特別法を発布し、絶えずこれを刷新する義務を促がしているととれる。

現代の必要を念頭におきながらも、新しい規律の作成に当たっては、今日まで続いた聡明で尊敬に値する路線を逸脱しないよう配慮した。

事実たとえ教皇が、使徒座にペトロの後継者として召された人を選出する方式を決めるにあたり、時代の変化に適応するとはいえ、原則はそのまま残ることは明白である。まず、教皇を選挙する人々の団体に関して言うと、この団体は、千年来続く慣習として教会の厳格な規則によって定められ、現行の教会法でも明言している(教会法349参照)ローマカトリック教会の枢機卿たちによって構成される。真に教皇の権能が、キリストから直接来るものであり、教皇は地上におけるキリストの代理者であるということが信仰の教義であるならば、教会における最高の権威は「正当な選挙により、司教の叙階とともに本人が受理する」ことによって与えられるというのは正しい。選挙を委ねられている団体の責任は非常に重大である。したがって神のみこころによって選ばれた人が、最高の職責をはっきり自覚して受諾するのに相応しい方式で選挙が行われるよう、選挙の規則は正確かつ明確でなければならない。

千年来の教会の伝統を反映する現行教会法の規則(教会法349C.I.C参照)を確認すると同時に、教皇を選挙するのはローマカトリック教会の枢機卿団のみであることを断言する。彼らは教皇職の2つの特徴というべき側面を現している。まずローマ。なんとなれば教皇はローマにある教会の司教である。したがってローマの司祭と助祭の肩書きを持つ枢機卿に代表されるこの街の司祭たちおよび、ローマ郊外の司教枢機卿と緊密な関係で結ばれている。次に普遍教会の教皇。なぜなら群れ全体を永遠のいのちの牧場に導く目に見えない牧者の見える代理者であるから。教会の普遍性は枢機卿団が、各大陸の枢機卿によって形成されていることによってよく表明されている。

現在、枢機卿団が全世界と、異なる文化的背景を持つ120人の枢機卿によって形成されていることで、教会の普遍性は十分反映されていると思える。選挙権を持つ枢機郷の最高数は120人であることを確認する。パウロ六世が定めた、使徒座空位の初日に満80歳を越えた枢機卿は選挙に参加しないという掟は、それらの枢機卿に対するいささかの敬意を欠くものではないことを明確にしながら、これを遵守する事を明言する。このきまりは、高齢な枢機卿に教皇選挙という重い任務からくる負担を与えないという理由によるものである。しかしだからといって80歳を過ぎた枢機卿であっても、後ほど記すように、準備のための枢機卿会議に出席することは自由である。この枢機卿団が使徒座空位と、特に教皇選挙の間、ローマの大聖堂や世界の国々の司教座聖堂で、神の民の指導者として、選挙者が神のみ前にあって「教会における最高の掟である霊魂の救い」だけを考えて選挙するよう、聖霊に熱心に祈ることを期待したい。

古来のコンクラーベ制度に私は特別の注意を傾けてみた。ずいぶん多くの先任教皇がこれに触れている。注意深く歴史をひもとくと、それらの制度は状況に応じて出来たもので、徐々に法制化されていったが、同時に規則正しく敏速に選挙が行われるよう、特に緊張や混乱が支配する時代のために作られたことが証明されている。

それゆえ、あらゆる時代の神学者や教会法学者が教皇選挙の有効性のために制度は必要ないと主張することを認識しながらも、私はこの憲章にも基本的制度をそのまま残すことを宣言する。しかし、今日の必要に適応するため、いくつかの変化をもたらす。とりわけ教皇選挙の全期間中、枢機卿および選挙に関係ある一切の仕事に従事する者は、バチカン市国内の適当な場所に居住するよう配慮した。たとえ小さくてもバチカン市国は、全教会にとって重要な行為のため、選挙者に必要な孤独と潜心を確保する環境を持っている。

教皇選挙がもつ神聖な性格ゆえに、相応しい環境で、典礼が有効に行われ、選挙者が内的霊の動きを識別出来るよう、選挙はシスティーナ礼拝堂で行うこととする。礼拝堂はいつの日かみな、そのみ前に出なければならない神の現存に満ちている。

使徒的権威をもって、直接、間接に選挙に関する一切のことに対して、厳重に秘密を守ることを命じる。しかしこれに関しても疑いや心配、良心的な問題を避けるために規則の簡素化を計った。

最後に時代の変化や現代文化の方向性を念頭において、選挙の方法について見直す必要を感じた。枢機卿の数と出身地を考えると、全員の考えを理解するのは難しいと思えるので、発声による選挙方法を廃止する方がよいと考えた。同様に、委任による選挙法も廃止することにした。過去においては必要と思われて考案された規則だが、実際にこれを行うのは非常に難しいばかりか、個人が意志表明することがないので責任逃れを生み出す恐れを考慮してのことである。

熟考の末、教皇選挙は秘密投票のみにしぼるという結論に達した。以下にこれに関する規則を詳細に紹介する。この方法は実に教皇選挙のための明白さ、単純さ、透明性、とりわけ効果性と枢機卿全員の積極的な参加が保証される。

以上のような意図で、この使徒憲章を発布する。憲章には、使徒座が空位になった時、教会の可視的頭、神の僕の僕であるペトロの後継者を選挙する権利と義務を有する枢機卿たちが、厳重に守らなければならない規則、規範が述べられている。

第一部 使徒座空位

第一章 使徒座空位期間の枢機卿団の権能

1.使徒徒座空位の期間中、枢機卿団は、生存中の教皇が扱う問題に関する一切の職権も司法権も持たない。これらの問題は、すべて新教皇に委ねられる。この憲章に定められている範囲を越えて枢機卿団が教皇に委ねられている権限を行使しようと判断した場合、すべては無効であることを宣言する。

2.使徒座空位の間は、通常かつ延期出来ない事務と、教皇選挙に必要なことに関してのみ枢機卿団に委ねられる(n。6参照)。これは、本憲章の規定に基づいて行われなければならない。したがって、いかなる理由によっても、教皇の権限にのみ属することを行ってはならず、教皇選挙に関して本憲章に規定されている以外のことを行ってはならない。

3.なお枢機卿団は、いかなる方法によっても、使徒座とローマ教会の権限を随意に決したり、教皇の死後、不和を解消するため或いはこれらの権威に反対する行為を追求するためであっても、直接、間接にこれを喪失させることは出来ない。これらの権威を擁護することこそ枢機卿団の義務である。

4.使徒座空位の間、教皇が公布した規則を、いかなる理由や方法によっても、訂正し、更新することは出来ず、また、特に教皇選挙に関して、何かを加筆、削除したり、あるいは一部分を免除することは出来ない。もしこれらのことが行われるなら、私は最高権威に基づいて、その無効を宣言する。

5.この憲章に含まれている規則や実行方法に疑問が生じた場合は、教皇選挙を除く問題であるなら、これを解釈し、必要な場合は決定を下す権限を枢機卿団に与え、その判断に委ねる。出席している枢機卿の多数の意見が一致していれば、それで十分である。

6.また多数の枢機卿が延期不可能と判断する問題が生じた場合、枢機卿団は多数の合意のもとに処理することが出来る。

第二章 教皇選挙にそなえての枢機卿会議

7 使徒座空位期間の枢機卿会議には、全体会議と特別会議の二通りがある。

  1. 全体会議は:使徒座空位の通知を受けた時から、正当な妨げのない枢機卿は全員出席しなければならない。選挙に入るまで続く。80歳以上の枢機卿は参加自由。
  2. 特別会議は:ローマ・カトリック教会のカメルレンゴ(財政係)と他に3人の枢機卿(アシスタンスとよばれる)が参加する。3人の枢機卿は、ローマに到着した枢機卿の中から抽選で決める。この3人の任務は3日間で、3日が過ぎたら再度抽選できめ、選挙が始まっても同じ形式で続けられる。

 選挙の期間に特に重大な問題は、全体会議で取り扱われ、通常の問題については、特別会議が扱う。全体会議と特別会議において枢機卿は、黒のスータンを着用し、緋色の帯を締め、ベレッタ(角帽)をかぶり、胸の十字架と指輪をつけること。

8 特別会議では日々、あるいはその時々に通常のことだけを扱う。もし重大なことが起きた場合は、全体会議に委ねる。ある特別委員会が決めたり、解決したこと、また拒否したことを、他の特別委員会が取り消したり、変更したり、受諾することは出来ない。これらのことは全体会議の多数決をもってのみ行うことが出来る。

9 枢機卿の全体会議は、通常バチカン宮殿で行うが、状況によって枢機卿たちが他の場所の方を選ぶ場合は他の場所でする。全体会議の議長は首席枢機卿が務め、欠席や正当の理由で出席出来ない場合は、次席枢機卿が代理を務める。2人とも欠席の場合は枢機卿歴の最年長者が議長を務める。

10 枢機卿会議中、重大なことに関しては口頭ではなく、秘密投票を行う。

11 選挙前の枢機卿たちの準備会議は、ローマカトリック教会のカメルレンゴと3人の枢機卿が定めた日から、毎日開かれる。教皇の葬儀が行われる期間にも会議は開かれること。これはカメルレンゴが皆の意見を聞いたり、必要かつ有益と思われるコミュニケーションをすることが出来、また参加者の方では問題を提起したり、疑問を解決したり、提案を行うことが出来るためである。

12 全体会議の初めに、本憲章を各枢機卿に配り、中に書かれている規範についての意味や実践方法について質問をする機会を与えること。また使徒座空位に関する箇所を読むことが勧められる。その際枢機卿は全員、憲章に含まれている規則と秘密を厳守することを宣誓しなければならない。遅刻して途中から参加する枢機卿もこの宣誓をする必要がある。現憲章n9に規定されているとおり、他の枢機卿も出席のもと、首席枢機卿か他の枢機卿が以下の宣誓文を読み上げる。
 私たちローマカトリック教会の枢機卿は全員、教皇ヨハネ・パウロ二世の使徒憲章『Universi Dominici Gregis』(ウニベルシ)の中に含まれているすべての規則を正確かつ忠実に遵守し、教皇選挙に関する一切のこと、または使徒座空位の間のことで秘密を要求されることについては厳重に秘密を守ることを誓います。
 その後枢機卿は1人ずつ、私…枢機卿はこれを義務とし、固く守ることを約束することを誓いますと宣誓し、福音に手を置き、神と今触れるこの福音が私を助けてくださいますようにと結ぶ。

13 これに続く会議で枢機卿団は、規定のプログラムに従い、教皇選挙に関する緊急事項を決める。つまり:

  1. 信徒たちの弔問に付すために教皇の遺体を聖ペトロ大聖堂に移す日時と方法。
  2. 亡くなった教皇のために、9日間続く死者の祈りに必要な諸事項とこれをはじめる日を、特別の事情がない限り、死後4日から6日の間に埋葬が行われるよう配慮すること。
  3. 国務庁長官であったカメルレンゴとバチカン市国委員会の議長を務めていた枢機卿によって構成される委員会が、到着した有権枢機卿たちが宿舎サンタ・マルタ館に早く落ち着くことが出来、また本憲章46条で定めている他の人たちが適当な場所に宿泊出来るように、またシスティーナ礼拝堂のミサや選挙の準備を整えるよう速やかに対応すること。
  4. 確固とした教義に裏付けられ、学徳に優れ、倫理性に秀でていて、信憑性のある2人の聖職者に、教会が現在直面している問題についてと、照らされた選挙が出来るよう2つの黙想を依頼する。その際、最初の黙想をする日時を決める。
  5. バチカン市国政庁が提出する教皇の死から次期教皇選出までにかかる費用を承認する。
  6. 教皇が枢機卿団に書き残した文書がある場合はそれを読み上げる。
  7. 漁夫の指輪と使徒的書簡に捺印するために使われた鉛の印を破棄する。
  8. 抽選で枢機卿たちの部屋を決める。
  9. 選挙を開始する日時を決める。

第三章 使徒座空位期間の職務について

14 使徒憲章『Pastor Bonus』6に規定されているように、教皇の死によって、国務庁長官をはじめローマ教皇庁諸省の長官、議長はみな職務から解かれる。カメルレンゴと内赦院長だけはこの限りではなく、通常の業務を続け、教皇に提示すべきであったことは、枢機卿団に提示する。
 ローマの司教も使徒座空位の期間職務から解かれない。同時に聖ペトロ大聖堂首席司祭枢機卿とバチカン市国総代理枢機卿も司法権を保持する。

15 教皇が死亡した時或いは後継者が選出される前にローマ教会のカメルレンゴか内赦院長が欠員の場合、枢機卿団は選挙前の出来るだけ早い時期にこの任にあたる枢機卿を選出しなければならない。いずれの場合も出席枢機卿全員で秘密投票を行う。儀式係が投票用紙を配り、記入後これを集め、カメルレンゴと3人の枢機卿の前で開く。選挙された枢機卿は職務の全権を受ける。

16 使徒座空位の間にローマの司教が死去した場合は、現職の代理司教が、代理司教としての通常裁治権の他に枢機卿の権限をもって職務する。総代理司教が欠員の場合は補佐司教がこれに当たる。

17 ローマカトリック教会のカメルレンゴは、教皇死去の知らせを受けたら直ちに教皇庁儀典長、高位聖職者、秘書官、教皇庁会計院書記官の立ち会いのもとに、公に教皇の死を確認しなければならない。会計院書記官は死亡証明書に必要事項を記入して、これを作成する。カメルレンゴは教皇の書斎と居室を封印する。埋葬の後居住館全体が閉鎖されるが、それまでのあいだ教皇が居住していた館に常住していた人が住むように配慮する。ローマの司教と聖ペトロ大聖堂首席枢機卿に教皇の死去を通知する。ローマの司教は市民に訃報を告げる。聖ペトロ大聖堂首席枢機卿は、自分で或いは代理人によってバチカン、ラテラノ、カステルガンドルフォの宮殿を管理する。死去した教皇が遺言を残していない場合、3人の補佐枢機卿の意見を聞いて教皇の埋葬について決める。使徒座空位の期間、聖座の財産を管理し権威を守るのはカメルレンゴの使命である。

18 内赦院長とその職員は空位の間1935年3月25日ピオ十一世の使徒憲章『Pastor Bonus』によって定められ、私が確認した事項に関してのみ行為する。

19 枢機卿団の首席枢機卿は、カメルレンゴか教皇館長官から教皇死去の知らせを受けたら速やかに世界中の全枢機卿に通知し、枢機卿会議を招集する任務を帯びる。同様に、バチカン駐在の各国外交官、及びそれぞれの国の元首にも教皇の死亡を通知する。

20 教皇空位の期間、バチカン国務庁次官、国際関係評議会秘書、ローマ教皇庁諸省秘書官はそれぞれの省庁の責任をとり、枢機卿団の質問に答える。

21 同様に、教皇特使などバチカンの外交官も職務と権限を保持する。

22 教皇付き施し物分配担当者も教皇生存中の基準にしたがい、任務を続行する。新教皇選出までは、枢機卿団のもとにある。

23 使徒座空位期間、教皇のバチカン市国の統治権は枢機卿団に属する。しかし枢機卿団は、緊急を要する場合以外市国令を公布することは出来ない。また公布した場合、新教皇が認可しない限り、新教皇選出と共に効力を失う。

第四章 使徒座空位期間の教皇庁諸省の権限

24 空位期間、本憲章26条に規定してある以外は、全体会で扱う事項や教皇のみが長官、議長、秘書官などに与えられる権利を行使することは出来ない。

25 これに反し、各省庁の通常権はそのまま行使される。しかし、重大なもので延期可能なものに関しては、新教皇の選出を待たねばならない。延期出来ないものに関しては枢機卿団が、教皇死去まで長官を務めた枢機卿或いは議長の大司教に委ねることが出来る。

26 大審院の最高法廷と控訴院の法廷は、規則にもとづいて憲章 『Pastor Bonus』18条1、3に規定していることを遵守しながら裁判を続行する。

第五章 ローマ教皇の葬儀

27 教皇の死後枢機卿たちは、ローマ教皇葬儀の式次第に忠実にしたがって、教皇の冥福のため9日間の祈りを捧げる。

28 遺体が聖ペトロ大聖堂に埋葬される場合、証明書は聖ペトロ大聖堂参事会の公証人か、正式な記録保存係が作成する。カメルレンゴと教皇宮殿長の各代理が、教皇庁会計院のメンバーと教皇宮殿のメンバーが埋葬を確認出来るよう、それぞれの前に証明書を提示する。

29 教皇がローマ以外の地で死去する場合は、遺体を丁重にバチカンの聖ペトロ大聖堂に移す。このために必要な一切は枢機卿団が考慮する。

30 何人といえども、病臥する教皇と死去した教皇の写真を撮り、言葉を録音してこれを再生することなどは厳禁する。教皇の死後、証拠写真を撮りたい人は、ローマ教会のカメルレンゴ枢機卿団の許可が必要。しかし教皇服を召された後の撮影のみが許可される。

31 教皇の埋葬後と選挙の期間中、だれも教皇宮殿に居住することは出来ない。

32 教皇が遺言書、または私的書簡を残し、遺言相続人を指名している場合、教皇の個人的財産と書き物の処理はその者が行う。この人は処理したことについて、新教皇にだけ報告する。

第二部 ローマ教皇の選挙

第一章 ローマ教皇を選挙する人

33 教皇の選挙権はローマカトリック教会の80歳未満の枢機卿にのみ属する。選挙者数は120人を越えてはならない。教会のいかなる高位聖職者も選挙権を持つことは出来ないし、いかなる世俗権威も選挙に干渉することは出来ない。

34 ローマ或いは他の場所で公会議、またはシノドスの開催中に使徒座が空位になった場合、教皇選挙は公会議やシノドスではなく、有権枢機卿によってのみ行われる。従って選挙に関する規則や有権者を変更する行為は一切無効であると宣言する。公会議やシノドスは使徒座空位の通知を受けた時点で即刻、中止されねばならない。いかなる集会や会議をすることも、また文書を作成したりすでに準備されたものを発表することも禁じられている。もしこのような行為をした場合、それは無効となる。いかなる理由のもとにも、たとえ重大な理由であろうとも、新教皇が継続或いは再開を命じない限り、公会議もシノドスも中断される。

35 本憲章40条を遵守しながらも有権枢機卿は、いかなる理由あるいは口実のもとにも選挙、被選挙から除外されることはない。

36 枢機卿会議が開かれる前に任命され、公表された聖なるローマ教会の枢機卿は、たとえまだベレット(枢機卿帽)と指輪を授与されず、宣誓をしていなくても、すでに教皇の選挙権を有する。しかし教会法的または教皇の同意を得て枢機卿職を放棄した者はこの権利を持たない。使徒座空位期間に枢機卿団は、上のような枢機卿を復職させることは出来ない。

37 教皇選挙のためには、使徒座が空位になってから15日間待たねばならない。重大な理由がある場合、数日これを延ばすことは、枢機卿団の判断に委ねる。しかし20日を過ぎない内に選挙をはじめなければならない。

38 教皇選挙のために首席枢機卿または首席代理枢機卿によって召集されたすべての枢機卿は、従順によって指定された場所に行かねばならない。病気、または他に重大な障害があり、枢機卿団からそれを承認された場合はこの限りではない。

39 遅れて到着する枢機卿は、選挙前ならその時点から選挙の準備に参加することが出来る。

40 有権枢機卿が、医師が診断を誓い、大多数の枢機卿が承認した病気がないにもかかわらず、選挙のためにバチカンに入ることを拒み、義務の遂行を免れようとするなら、他の枢機卿は、その人を待つことなく選挙を進めることが出来る。もしある枢機卿が病気のためにバチカンを出なければならない場合、その人の投票なしでも選挙することが出来る。しかし病気が回復し、選挙会場に戻りたい場合は受け入れなければならない。
 枢機卿の多数が認める重大な理由のためにバチカンを出た枢機卿は、再びバチカンに戻って選挙を続けることが出来る。

第二章 選挙会場と、職務のため入場を認められる者

41 教皇選挙のためのコンクラーベは、バチカン市国内の所定の場所で行われ、有権枢機卿および選挙が順調にいくように正式に協力を求められた人たちが安心して日を過ごすことが出来るように、外部の人たちから遮断される。

42 選挙が始まる時には、枢機卿全員が、近年バチカンに建築されたドームス・サンタ・マルタ(聖マルタ館)に、ふさわしい宿泊の場を割り当てられ、確保されなければならない。
病気のために選挙期間中も介護を必要とする枢機卿のためには、該当する枢機卿会が前もって認めたなら、付き添いの看護士にも適当な宿泊所を提供しなければならない。

43 選挙過程開始から新教皇の公式発表までの間、ドームス・サンタ・マルタと、特にシスティーナ礼拝堂、および典礼に使用される他の場所は、カメルレンゴ枢機卿の権限に基づき、また外部からは国務省次官の協力を得て、以下に列記される人以外立ち入りが禁止される。
 バチカン市国全域と、市国内にあるオフィスは通常の仕事を続けるが、この期間中は教皇選挙に関することが慎重かつ自由に行われるよう、気を配らねばならない。特に枢機卿たちがドームス・サンタ・マルタ(聖マルタ館)からバチカン宮殿に移動する間、だれも近づけないように配慮する必要がある。

44 枢機卿は、選挙が始まってから、教皇が選出され、公式に発表されるまで、外部の人との手紙や電話その他の手段によるコミュニケーションを控える。特別委員会から認められた重大かつ緊急事の場合はこの限りではない。

45 以下の46条に記されていない人、また43条により正当な理由でバチカン市国内にいる人が、選挙期間中に偶然有権枢機卿に出会ったとしても、理由や形式のいかんを問わず言葉を交し、立ち止まって相対する事は厳禁される。

46 枢機卿たちの個人的必要や、選挙事務局の必要に応じられるよう、選挙会の秘書を務める枢機卿団秘書官、教皇庁儀典長と2人の儀式係、香部屋係の2人の修道者、および首席枢機卿あるいは代理枢機卿を補佐する聖職者は、本憲章43条が示す相応しい場所に居住しなければならない。
 この他、告白のために種々の言語を話す司祭と、緊急事に対処出来るよう、2人の医師が常時待機しなければならない。
 食堂と清掃にあたる人も、適当な人数を揃えられなければならない。
 以上の人々は、事前にカメルレンゴ枢機卿と3人の補佐枢機卿の承認を得る必要がある。

47 本憲章46条に記されているすべての人は、理由や時を問わず、直接あるいは間接に選挙に関して、とりわけ投票に関して知った場合、有権枢機卿以外の人にこれを口外することは絶対に禁じられている。このため以下に記す誓願文によって宣誓しなければならない。

48 本憲章46条に記されている人は、宣誓の意味と重要性について勧告を受けた後、適当な時にカメルレンゴ枢機卿、あるいはその代理の前で、2人の儀式係の立ち会いのもと、以下の宣誓を行い、署名しなければならない。

 私…(名前)は、直接あるいは間接に、教皇選挙に関する一切のこと、特に投票に関しては、選出された教皇或いはその後継者から特別の権限を明確に賦与されない限り、選挙団以外の人には永遠に秘密を厳守することを約束し、誓います。
 同じく、選挙の期間にバチカン市国内で繰り広げられること、とりわけ直接、間接に選挙に関することに対して録音したり、視聴覚用の器具一切の使用を絶つことを約束し宣誓します。
 この宣誓によって、これを犯した場合、新教皇が定める精神的かつ教会法的制裁(教会法1399)が私に課せられると自覚していることを宣言します。
 神と、今手を置く福音が、私をまもってくださいますように。

第三章 選挙開始

49 死去した教皇の葬儀を規定通りに済ませ、選挙の準備が出来たら、規定の日(教皇死後15日から20日の間)に、枢機卿たちは、バチカンの聖ペトロ大聖堂、あるいは必要に応じて他のところに集まり、「教皇選挙のためのミサ」を捧げる。以下に規定されていることを午後に行うことが出来るよう、ミサは出来るだけ午前中の適当な時間に行うべきである。

50 有権枢機卿は、午後の相応しい時間に使徒宮殿のパウロ礼拝堂に集合し、そこから聖霊の助けを求めるために「聖霊来たりたまえ」の歌を歌いながら、選挙会場であるシスティーナ礼拝堂まで行列する。

51 コンクラーベの本質的要素を守りながらも、選挙の本来の目的には関係のない付随的な部分を変更し、本憲章の以下に続く条項に規定される教皇選挙は使徒宮殿のシスティーナ礼拝堂内で行うよう定める。したがって教皇選挙に関して直接あるいは間接的に言及され、または行われたことの秘密が絶対に守られるよう、システィーナ礼拝堂は、教皇選挙の間、そのためだけに使用される。
 選挙が規則正しく行われ秘密が守られるよう、システィーナ礼拝堂とその周辺を事前にきちんと整えるのは、カメルレンゴと特別委員会(7参照)の権限と責任のもとに働く枢機卿団である。これには国務庁次官の外部からの協力を得る。
 会場とその週辺に外部に通じる視聴覚の制作・通信機器が設置されていないか、信仰心の厚い専門技師の助けを借りて厳しくコントロールしなければならない。

52 システィーナ礼拝堂に入ったら、まだ行列に参加した人々がいる前で、枢機卿たちは50条にもとづき以下の手順に従って宣誓する。
 本憲章9条にもとづき、首席枢機卿か最年長の枢機卿が宣誓文を声高に読み上げる。その後各枢機卿は、福音書に手を置き次の条項に示されている通りに宣誓する。
 最後の枢機卿が宣誓した後、教皇庁儀典長が「Extra Omnes」(全員退場)を告げ、コンクラーベに関係のない人はみな、システィーナ礼拝堂を去らなければならない。
 聖堂の中には儀典長と、13条dに基づいて選ばれ、枢機卿団に今から行おうとしている使命の重大さと、普遍教会の善益のために正しい意向をもって行為するよう、2回目の黙想をする聖職者だけが残る。

53 前条に記されている通り、首席枢機卿あるいは最年長の枢機卿が以下の宣誓文を読み上げる。

 「教皇を選挙するためここに集まった私たち有権枢機卿は、全員としても個人としても、1996年2月22日に発布された教皇ヨハネ・パウロ二世の使徒憲章 『Universi Domini Gregis』に含まれているすべての規則を忠実に厳守することを約束し、誓います。同様に、神のご意志によって教皇に選ばれた者は誰であれ、普遍教会の司牧を忠実に果たし、また聖座の霊的・現世的権利および自由を擁護することを誓います。更に教皇選挙に関しては、会場で起こるあらゆることについて、とりわけ投票と直接・間接にその結果に関して絶対に秘密を守ることを誓います。新しい教皇の選挙中もその後も、新しい教皇が明白な許可を与えない限り、この秘密を漏らさないこと、また、あらゆるレベルの世俗権力や圧力グループ、反対勢力、ローマ教皇選挙に関与したい個人の介入などに左右されないことを誓います」。

この後枢機卿たちは、親任年順に以下のように宣誓する:

 「私…枢機卿は約束し、これを義務として負うことを誓います」。
そして福音の上に手を置いて、
 「神と今手を置く福音書が私を守ってくださいますように」。

54 黙想の説教を終えた聖職者は、儀典長と共にシスティーナ礼拝堂を出る。式次第に規定されている祈りを唱えた後、首席枢機卿(或いは代理者)が、枢機卿団に、選挙に入る準備が出来ているか、あるいは本憲章が定める規則や方法に関してまだ疑問があり、はっきりさせる点があるか否かを尋ねる。しかし全員がそれに賛意を表明したとしても、選挙の本質に関しては変更することが出来ない。
 枢機卿の大多数が異義を唱えないなら、本憲章の規則に基づいて直ちに選挙に入る。

第四章 教皇選挙に関する一切のことに対する秘密の遵守について

55 カメルレンゴ枢機卿と、一時的に選ばれた3人の補佐枢機卿は、選挙が行われるシスティーナ礼拝堂と、その週辺で行われることについて選挙前、選挙中、選挙後に何事も異常がないよう厳重に警戒する義務がある。
 信用出来る2人の専門技師の助力を得て、選挙会場内に撮影、通信用の視聴覚器材などが設置されていないよう、秘密厳守には配慮すること。
 これに反する行為をした場合、新教皇から重大な罰が課されることを認識しておくこと。

56 選挙期間中、枢機卿は、枢機卿専用の宿舎に正当に宿泊する権利のない人と文通をしたり電話や通信で対話することを禁じられている。
第7条に記されているように、枢機卿の特別委員会が承認した、重大で緊急な事情のあることに限り、対話が許される。

57 同様に、正当な許可のもとにバチカンに居住する人を通してバチカン市国外にメッセージを送ったり受け取ってはならない。特に教皇選挙の期間枢機卿は、新聞や雑誌を受けたり、ラジオ・テレビの放送を聞くことは禁じられている。

58 本憲章46条に基づいて奉仕のために呼ばれた人が、直接或いは間接に言葉、文字、絵などを使って秘密を漏らすことが出来たとしても、それは絶対に避けなければならない。さもなければ、使徒座に保留されている破門の罰(latae sententiae)に処せられる。

59 特に有権枢機卿が、直接あるいは間接に投票に関する情報、また教皇選挙について選挙前、中、後の枢機卿会議で扱われたり決定されたことを他人にもらすことは禁じられている。この義務は、第7条の規定によって全体会議に参加する非有権枢機卿にも適用される。

60 枢機卿たちは、教皇から特別、明示的権限を与えられない限り、新教皇選挙に関する一切のことに関して、選挙終了後も、重大な良心的義務のもとに、秘密を厳守することを命じる。

61 更に枢機卿たちに圧力をかけたり、判断を強制し、また決定の自由を妨げるような他人の横暴さや策略から枢機卿たちを守るために、音声や映像、文章を録音(画)、再生、伝達する機器を選挙会場に持ち込んだり、もし既にあるなら、これの使用を厳禁する。

第五章 選挙

62 発声と妥協による選挙方法が廃止されたので、今後教皇選挙は投票による方法だけとなる。
 選挙の有効性のためには有権者数の3分の2の得票が必要である。
 出席者数が3等分出来ない場合は、1票を加算する。

63 本憲章第54条の規定を果たしたら、直ちに選挙に入る。
 選挙が1日目の午後に始まるなら、その日は1回だけ無記名投票する。2日目以降は、午前2回、午後2回ずつ無記名投票を行う。選挙は、前もって定められた時間に始められなければならない、枢機卿準備委員会或いは選挙期間に定めた時間に始め、本憲章第64条以下が規定する方式に従い。

64 選挙には3段階ある。第1段階は選挙の準備である。(1)儀式係は各枢機卿に2、3枚の投票用紙を配る。(2)抽選で、開票係3人、一時的に病人係と呼ばれる病気で会場に出席出来ない枢機卿の投票を回収する係3人、審査係3人を決め、助祭枢機卿の最後の人が9人の名前を読み上げる。(3)病人係と審査係に、健康状態が優れず任務を遂行出来ない枢機卿の名前があげられた時には、別の人が選ばれる。

65 投票のこの段階では以下のことを守る。(1)投票用紙は長方形で上半分に「私は教皇に選挙する」(Eligo in Summum Pontificem)と印刷してあり、下半分は選挙人が被選挙者の名前を書き込めるように空白になっており、2つ折り出来るようになっていること。(2)用紙の記入は個人的に秘密に行う。出来るだけ記入者がわからないように書き、1人の名前だけを書き込む。2人以上の名前が記入してある投票は無効になる。用紙は4つ折りにする。(3)投票の時は枢機卿だけがシスティーナ礼拝堂に残る。したがって、用紙を配布し終わったら、記入が始まる前に枢機卿団秘書、儀典長、儀式係は会場を出なければならない。彼らが退場したら1人の枢機卿が扉を閉める。そして、たとえば病人係が会場を出入りするような場合、必要に応じてその都度、開閉する。

66 第2段階は、実際に投票とよばれる部分で、次のことを含む。(1)用紙を投票箱に入れる。(2)よくそれを混ぜ、数を数える。(3)開票する。枢機卿は記名を済ませたら投票用紙の折り目をよく見えるように高く上げ、順位に従って祭壇に向かう。祭壇の側には開票係がおり、祭壇上には皿のようなもので覆われた投票箱がある。枢機卿は、祭壇前で以下のように宣誓する。

 私が、神のみ前にあって選ばれるべきと判断した人に、私の票が正しく投じられたことをあかししてくださいますよう、私は主キリストを呼び求めます。

 それから用紙を皿の上に置き、これを斜めにして箱の中に入れる。入れ終わったら、祭壇に一礼して自分の場所に戻る。
 病気のために祭壇に行けない枢機卿がいる場合、開票係の1人が彼のところに行き、宣誓をしたことを前提に用紙を受け取り、見えるように高く上げて最壇に行き、宣誓はせず用紙を皿にのせ、投票箱入れる。

67 本憲章41条に記すように、病気のため自室に残った枢機卿がいる場合、3人の病人係の枢機卿が、用紙を入れるため穴が上にある箱を持ってその枢機卿を訪れる。開票係の枢機卿は、箱が空であることを全員が認めることが出来るように、箱を病人係に手渡す前に皆の前で開き、閉めてから鍵を祭壇の上に置く。
 病人係は適当数の投票用紙を盆にのせ、枢機卿の宿舎であるサンタ・マルタに行く。病人は、用紙を受け、秘密裡に投票し、箱に入れる。書くことの出来ない枢機卿は、病人係かあるいは自分が選んだ枢機卿が、病人係の前で秘密を守ることを誓ってから用紙に記名する。その後病人係の枢機卿は箱を聖堂に持って行く。開票係は全員の枢機卿が投票を済ませた後これを開け、病人の数に合致するかを調べてから一票ずつ皿の上に置き、全部一緒に投票箱の中に入れる。投票があまり長くならないため、病人係は、最初の枢機卿が票を箱に入れた後、すぐに自分の投票用紙を箱に入れ、他の枢機卿が投票している間に病人の票を回収に行くことが出来る。

68 全員の枢機卿が投票用紙を箱に入れ終わったら、第1の開票係が何回も箱を振り、よく混ぜる。それから最後の開票係がよく見えるように1枚ずつ箱から出し、もう1つの箱に入れながら数を数える。もし用紙の数と選挙者数とが合致しない場合、用紙は焼却され、再び投票を行う。数が合致する場合は開票に進む。

69 開票係は祭壇の前に準備された椅子に掛ける。第1開票係が1枚用紙を取り出し、名前を確認してから第2の開票係に渡す。2番目の人も同じように名前を確認してから3番目の人に渡す。3番目の開票係は、名前を確認してから、選挙者たちが配られている用紙に得票数を書き込むことが出来るよう、はっきりと名前を読み上げる。開票係も読み上げた名前をメモする。開票のときに、同一人物が書いたと思える2枚の用紙が折られている場合、名前が同じなら1人として数えられ、2人の違う名前の場合は、2枚とも無効になる。
 開票が終了したら、開票係は名前ごとに得票数を合計し、別の用紙に書き込む。最後の開票係は、名前を読み上げた後、用紙を確実に保存出来るよう、「選挙する」という文字のところに針をあて、糸で綴る。開票が終わった、らこの糸の両端をくくって箱の中に入れるか、祭壇の上に置く。

70 次に「投票後の行為」(post-scrutiny)と呼ばれる第3段階に入る。(1)投票の集計(2)票の検査(3)用紙の焼却、がある。
 開票係は各人の票を集計する。3分の2の得票者がいない場合、教皇は選出されなかったことになる。もし3分の2の得票者がいれば、会法的に教皇が選出されたことになる。
 教皇が選出されたか否かにかかわらず、開票係が忠実に任務を果たしたかどうかをみるため、審査係は開票係が扱った票とメモを検査する。
 審査が終わり、最初の枢機卿がシスティーナ礼拝堂を去る前に、枢機卿団秘書と儀式係が会場に呼び入れられる。開票係はこの人たちの助けを借りて、投票用紙を焼却する。しかし、続いて2回目の投票に移る場合は、1回目の投票用紙は2回目の用紙と一緒に焼かれる。

71 秘密が厳守されるよう、 選挙者は投票の結果について書いたものがあれば、投票用紙と一緒に焼かれるため、カメルレンゴか3人の補佐枢機卿の1人に預けることを命ず。
 選挙の終わりにあたってローマ教会のカメルレンゴ枢機卿は、それぞれの投票の結果を含む報告書を作成し、三人の補佐枢機卿の承認を得る。報告書は一枚の封筒に入れ、封印し教皇に手渡され、特別の記録保存所に保管される。この報告書は教皇の明示許可がない限り、だれも開封することは出来ない。

72 私は先任教皇であるピオ10世、ピオ12世、パウロ6世が定めたように、コンクラーベ初日の午後を除き、毎日午前も午後も、一回目の投票で教皇が選出されない場合は、引き続き2回目の投票に入ることを定める。2回目の投票は、1回目と同じ方式による。ただし再び宣誓したり、開票係、病人係、審査係を再選する必要はない。1回目の人が任務を続行する。

73 上に規定されていることは毎日、午前と午後、コンクラーベ式次第に規定されている儀式或いは祈りを唱えた後に行われる投票において、厳密に遵守されなければならない。

74 本憲章62条以下の規定に従って行われる選挙が3日続いても教皇が選挙されず選挙が難航する場合は、祈ったり、選挙者同士のあいだでの意見交換、助祭枢機卿による講話を聞くために1日選挙を休む。その後同じ方法で選挙をし、7回投票しても結果をみない場合、祈り、意見交換、講話のためにもう1度休みを取る。投票を再開し、7回投票しても教皇が選出されない場合は、同じように休みをとる。そして投票を開始し、また7回繰り返す。

75 前条の規定に従っても結果が出ない場合、カメルレンゴは投票の仕方について皆の意見を聞き、過半数の意見に従って投票する。
 いずれにせよ、過半数による投票かあるいは2人の決選投票によっての有効な選挙を放棄することは出来ない。決戦投票は、最後の選挙で多数を得た2人の間で行う。

76 本憲章に規定されている以外の方法で選挙が行われた場合、その選挙は無効であり、選出された人にはいささかの権限も持たない。

77 教会法333条2項と、東方教会教会法44条2項の規定に基づき、教皇が教皇職を辞任したために使徒座が空位になったとしても、教皇選挙前と選挙に関する規定は、全面的に遵守されなければならない。

第六章 教皇選挙において遵守すべきことと、避けるべきこと

78 教皇選挙において聖職売買(シモニア)の罪が犯された場合-神がこれからお守りくださるように-それに関与したすべての人は、伴事的破門(excommunication latae sentensiae)の制裁を受けることを、私は宣言する。同時に私は、私の前任者がすでに確立したように、教皇選挙の有効性がこの理由によって異議を申し立てられることがないよう、同じ聖職売買規定による無効性を取り除く。

79 先任教皇の定める通り、私も、たとえ枢機卿であっても、教皇が生存中に彼の後継者について、交渉したり投票を約束したり、秘密集会でこれに関して決定することなどを禁ず。

80 ゆえに、聖なる従順の徳と伴事的破門制裁の下に、現在においても将来においても、各々すべての有権枢機卿と、枢機卿団秘書や選挙遂行に必要なすべての準備をするために働く者であっても、どのような口実があろうと、いかなる俗世の権力から、拒否権や候補者への異議申し立て(exclusiva)の行使について、たとえそれが単なる希望であったとしても、選挙者全員に対してまたは選挙者個人に対して、書かれたものによるか口頭によるか、直接か個人的または間接的か、選挙前か選挙期間中であるかにかかわらず、伝えることを、私は再び禁じる。この禁令は、あらゆる干渉、反対、示唆などによって、教皇選挙に関与しようとする一切の世俗的権威、個人、団体に及ぶ。

81 有権枢機卿は、強制的に特定の人に投票させたり、或いはそれを控えさせる義務を負わせるあらゆる形の駆け引き、協定、約束などを受けてはならない。それらのことを受けた場合、たとえ誓っていても、そのような義務は無効であり、だれもそれに従う義務のないことを宣言する。この掟を犯す者に対しては、あらかじめ破門を申し渡す。だがこれは、使徒座空位の期間に教皇選挙に関する意見の交換を禁じるものではない。

82 私は同様に、枢機卿が選挙前に、彼らのうちの誰かを教皇に挙げようと共通の確認をとるいかなる約定に加わることを禁止する。たとえこれらの約定が宣誓の下に結ばれたものであっても、私はこれらが無効であることを宣言する。

83 先任教皇と同じく、枢機卿たちは教皇の選挙に当たって個人の好感や反感に左右されたり、個人的関係や受けた恩恵に影響されたり、また権威ある人や圧力団体、コミュニケーションメディア、脅迫、恐れ、人気などに動かされてはならないことを私も強調する。神の栄光と教会の善益のみを見つめ、神の助けを祈り求めた後、枢機卿団以外の人でも普遍教会の指導者として選ぶであろうと思える人に投票しなければならない。

84 使徒座空位期と、特にペトロの後継者を選挙する間、教会は、牧者たちと一致し、中でも有権枢機卿たちと一致して、神のいつくしみと摂理の賜物として新しい教皇が与えられるよう祈るように。使徒言行録に記されている初代のキリスト教共同体の模範にならい、普遍教会はイエスの母であるマリアに霊的に一致して心を合わせて祈らなければならない。こうするなら教皇選挙は神の民から孤立して、枢機卿団だけが行うのではなく、ある意味で教会全体の行為となる。したがってすべてのところで、使徒座空位の知らせを受けたら、特に逝去した教皇のために荘厳に祈った後、枢機卿たちが、魂の救いと神の民の善益のために一致して使命遂行にあたり、迅速に効果的な選挙を行うことが出来るよう、有権者の魂を照らしてくださるように、主に謙遜で熱心な祈りを捧げるように。

85 このことを、特に年齢のために選挙権を有さない枢機卿たちに心から願う。枢機卿職は使徒座との特別に密接な関係ゆえに、ローマの司教座聖堂と他の部分教会に集う神の民の指導的立場にあって、特に教皇選挙の間有権枢機卿たちが、必要な神の助けと聖霊の光を受けるように熱心に祈ること。こうして普遍教会に牧者を与えるという、厳しく、重い使命に実質的、効果的に参与することになる。

86 選ばれた人は、重責を恐れてこれを拒むことなく、神のご意志に謙虚に従うよう願う。神は重荷を与えるとき、同時にそれを相応しく果たすよう、御手を差し伸べて支えてくださる。要職に就かせると同時に職務の重みに打ちひしがれないよう、力を与えてくださる。

第七章 新教皇の受諾、公表、教皇職開始

87 有効な選挙が終了すると、助祭枢機卿の最後の人が、枢機卿団秘書と儀典長を聖堂内に呼び入れる。首席枢機卿或いは最年長の枢機卿が枢機卿団を代表して選挙された枢機卿に次のような言葉で受諾を求める。「教皇に選挙されたことを受け入れますか」。受諾したら次に、「どんな名前を選びますか?」と尋ねる。儀典長は公証人を務め、その時呼び入れられる2人の儀式係を証人として新教皇の受諾と名前に関する証明書を作成する。

88 選出された人が司教なら、受諾した時からローマ教会の司教、教皇、司教団の頭として普遍教会に対して最高権を有し、これを行使することが出来る。
選出者が司教でない場合は直ちに司教に叙階される。

89 コンクラーベ式次第の規定にしたがって、すべてを済ませたなら、枢機卿は1人ずつ新教皇に敬意と従順を表明する。ついで神に感謝を捧げ、第1の助祭枢機卿が選挙の結果を待ち受けている群集に選挙の結果と新教皇の名前を告げる。新教皇は聖ペトロ大聖堂のバルコニーから「Urbi et Orbi」(ローマと全世界)の使徒的祝福を与える。
 当選者が司教でない場合、敬意の表明と公表は、司教叙階の後に行われる。

90 当選者がローマの外に住んでいる場合、上記のコンクラーベ式次第の規定を遵守しなければならない。
 当選者が司教でない場合、本憲章88、89が規定する司教叙階は、枢機卿団首席枢機卿、欠員の場合は次席枢機卿、この人も出来ない場合は最年長の枢機卿が教会のしきたりによって行う。

91 選出された新教皇が受諾した時、彼が他のことを命じない限り、コンクラーベは終了する。この時から国務庁次官、国家外務評議会次官、教皇館長官、その他新教皇と取り扱わねばならないことがある人はだれでも教皇のところに行くことが出来る。

92 荘厳に教皇就任式を終えた教皇は、適当な時に規定の儀式により、ラテラン教会の着座式にのぞむ。


発 布
(最後にこの憲章を発布することが書かれている)

1996年2月22日 ローマ聖ペトロの座にて。教皇登位18周年の日に

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