「信仰年」に際して与えられる特別免償に関する教皇庁内赦院教令

 教皇庁内赦院は、10月5日(金)、「信仰年」(2012年10月11日~2013年11月24日)に際して与えられる特別免償についての教令を発布しました。この教令は、「信仰年」の開催を機会に、定められた条件を満たした者に免償を与えることを定めたものです。以下は教令の全訳です(原文ラテン語)。
 免償とは、罪科としてはすでに赦免された罪に対する有限の罰の神の前におけるゆるしです。キリスト信者はふさわしい心がまえを有し、一定の条件を果たすとき、教会の助けによってこれを獲得します。免償は、罪のために負わされる有限の罰からの解放が部分的であるか全体的であるかによって、部分免償および全免償とに分けられます(教会法992~993条、『カトリック教会のカテキズム』1471、『カトリック教会の教え』220~221頁参照)。

「信仰年」中に行われる特別な霊的わざに対して免償が与えられる。

 教皇ヨハネ二十三世は第二バチカン公会議に「ゆだねられたキリスト教教理をよりよく守り、さらによく説明して、それをキリスト者とすべての善意の人々にいっそう近づきやすいものとすることを主要な任務として指定しました」(教皇ヨハネ・パウロ二世使徒憲章『ゆだねられた信仰の遺産(1992年10月11日)』:Fidei Depositum, AAS 86 [1994], 113)。教皇ベネディクト十六世は、この第二バチカン公会議開幕50周年に際して「信仰年」を開始することを定めました。「信仰年」は、『第二バチカン公会議公文書』と『カトリック教会のカテキズム』の本文を読み、敬虔に黙想することを通じて、まことの信仰を宣言し、正しく解釈することを目的としています。『カトリック教会のカテキズム』は公会議開幕30周年に「すべてのキリスト信者に公会議の知識と実践を促進させる」(同:ibid., 114)ために福者ヨハネ・パウロ二世が発布したものです。

 すでに1967年、使徒ペトロとパウロの殉教1900年周年を記念するために、神のしもべパウロ六世は同じような「信仰年」を開催しました。この「信仰年」の目的は「幾世紀にもわたりすべての信者の遺産を形づくってきた根本的な内容を確認し、理解し、さらに探求することの必要性を示すことでした。それは、過去とはまったく異なる歴史状況の中で一貫したあかしを行うためです」(教皇ベネディクト十六世自発教令『信仰の門――「信仰年」開催の告示』4:Porta fidei)。

 人類が深刻な変化を経験している時代にあって、教皇ベネディクト十六世は第二の「信仰年」を開催することにより、自らが普遍的な牧者として牧する神の民と、全世界の兄弟である司教が「主が与えてくださったこの霊的恵みの時に、信仰という貴いたまものをペトロの後継者とともに思い起こす」(同8)よう招きました。

 すべてのキリスト信者は「世界中の司教座聖堂と教会堂で、また家庭の中で、家族とともに、復活した主への信仰を告白する時をもちます。それは、変わることのない信仰をもっとよく知り、将来の世代に伝える必要を、すべての人が強く感じるためです。修道会と小教区共同体、また昔からのものと最近のものを含めたすべての運動団体は、『信仰年』の間に『信仰告白』を公に行う方法を見いださねばなりません」(同)。

 さらにすべてのキリスト信者は、個人としても共同体としても、日常生活の特別な機会に、人々に信仰を公にあかしするよう招かれます。「宗教の内的行為を外部に表現し、宗教の分野で他の人と交わり、団体的に宗教を奉じることは、人間の社会性そのものに基づく要求である」(『信教の自由に関する宣言(1965年12月7日)』:Dignitatis humanae, AAS 58 [1966], 932)。

 地上で可能なかぎり、生活の聖性を深め、徹底的に魂を清めるために、免償の偉大なたまものはきわめて有益です。教会は、キリストの与えた権能により、特定のふさわしい条件のもとに、規定されたことがらを実行するすべての人に免償を与えます。教皇パウロ六世が述べるとおりです。「教会は免償によって、主キリストのあがないの奉仕者の権能を用いて、諸聖人の交わりにおけるキリストの充満に信者をあずからせ、救いに達するきわめて優れた手段を授ける」(使徒的書簡『アポストロルム・リミナ(1974年5月23日)』:Apostolorum Limina, AAS 66 [1974], 289)。こうして「この宝庫に神の聖母と最初から最後の聖人まですべての選ばれた者の功績が加えられている」(教皇クレメンス六世大勅書『ウニゲニトゥス・デイ・フィリウス(1343年1月27日)』:Unigenitus Dei Filius)ことが示されます。

 教皇庁内赦院(その使命は、告白と免償を授与すること、また信者が免償を得たいという望みを正しく抱き深めるよう信者の心を促すことです)は、教皇庁新福音化推進評議会と協力しつつ、教皇庁教理省の覚え書き『「信仰年」のための司牧的指示』を注意深く検討した上で、「信仰年」の間に免償を与えるために、教皇の同意のもとに以下の規定を発布します。それは、キリスト信者がカトリック教会の教えを知り愛するよう促され、霊的な実りを得ることができるためです。

 2012年10月11日から2013年11月24日まで開催される「信仰年」の間、心から悔い改め、ゆるしの秘跡を受け、聖体を拝領し、教皇の意向に従って祈るすべての信者に、犯した罪に対する有限の罰に関して神のあわれみによる全免償が与えられる。この全免償は亡くなった信者の霊魂の安息にも適用される。全免償は以下の条件を満たすたびに得られる。

  • 「信仰年」の間に行われる説教を少なくとも3回聞く、ないし、あらゆる教会堂ないしふさわしい場所で行われる『第二バチカン公会議公文書』ないし『カトリック教会のカテキズム』に関する講話を少なくとも3回聞く。
  • 教皇大聖堂、キリスト教のカタコンベ、司教座聖堂、「信仰年」のために地域の裁治権者によって指定された聖なる場所(たとえば大聖堂、聖母・使徒・守護聖人にささげられた巡礼所)を巡礼の形式で訪れ、そこで何らかの聖なる儀式に参加するか、ある程度の時間、敬虔に黙想し、終わりに主の祈りと正式な形式での信仰宣言と聖母マリア、使徒、守護聖人への祈りを唱える。
  • 「信仰年」のために地域の裁治権者によって指定された日(たとえばキリストと聖母マリアの祭日、使徒や守護聖人の祝日、ペトロの使徒座の祝日)に、あらゆる聖なる場所で、ミサか聖務日課に敬虔にあずかり、正式な形式での信仰宣言を唱える。
  • 「信仰年」の間、自由に選んだ日に、洗礼堂または他の洗礼の秘跡を受けた場所を敬虔に訪れ、正式な形で洗礼の約束を更新する。

 教区司教および法的に教区司教と同等の者は、「信仰年」中のふさわしい日の主要な祭儀の際に(たとえば、「信仰年」を閉年する2013年11月24日の王であるキリストの祭日)、教皇の祝福と全免償を、この祝福を敬虔に受けるすべての信者に与えることができる。

 重大な理由で祭儀に参加できないが(たとえば、終生、禁域で暮らす修道女、隠遁者、収監されているキリスト信者、高齢者、病者、また病院や保健施設で継続的に保健活動に従事する者)、心から悔い改めるキリスト信者も、同じ条件のもとに全免償を与えられる。ただし、教皇ないし教区司教のことばがテレビやラジオを通じて放送されるときに、その場にいる信者と思いと心を一つにし、自宅ないしそこにとどまらなければならない場所(たとえば修道院、病院、保健施設、刑務所の聖堂)で、自分の生活の苦しみと不自由をささげながら、主の祈りと正式な形式での信仰宣言および「信仰年」のための祈りを唱えなければならない。

 ゆるしの秘跡や教会の許可によるゆるしを司牧上、受けやすくするために、地域の裁治権者は、司教座聖堂または「信仰年」のために指定された教会堂で告白を聞くことのできる祭式者ないし司祭に、内的法廷に限定された権能を与えるよう求められる。これについて、東方教会の信者については『東方教会法』第728条第2項、同第727条によって特別に留保された場合がこれに相当する。ただし、いうまでもなく第728条第1項に定められた場合を除く。西方教会の信者については『教会法』第508条第1項に定められた権能がこれである。

 聴罪司祭は、留保または懲戒罰にかかわる重大な罪について告白者に勧告を与えた後、ふさわしい償いを定める。それぞれの罪の特性に則した確固たる悔い改めに至らしめ、つまずきと損害を償わせるためである。

 内赦院は、教え、統治し、聖化するという3つの任務を帯びた司教に対し、信者の聖化のためにここに定めた原則と規定について明確に説明するよう求める。その際、とくに場所、文化、伝統を考慮すべきである。それぞれの民族に適したカテケージスは、教会を通して与えられるこのたまものを人々の心に明快に生き生きと示し、それを得たいという望みをしっかりと深く心に植え付けることができるであろう。

 この規定は「信仰年」についてのみ効力を発する。対立する規定類がある場合、本規定が優先する。

ローマ、教皇庁内赦院事務局にて、
2012年9月14日(十字架称賛の祝日)、

(カトリック中央協議会事務局訳)

内赦院院長
マヌエル・モンテイロ・デ・カストロ枢機卿
内赦執行官 
クルシストフ・ヨセフ・ニキエル

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