教皇フランシスコの WYD(ワールドユースデー)リオデジャネイロ大会の前晩の祈りの講話

2013年7月27日(土)午後7時30分(日本時間7月28日午前7時30分)から、ブラジル、リオデジャネイロのコパカバーナ海岸で、教皇フランシスコの司式により、第28回WYD(ワールドユースデー)リオデジャネイロ大会の前 […]

2013年7月27日(土)午後7時30分(日本時間7月28日午前7時30分)から、ブラジル、リオデジャネイロのコパカバーナ海岸で、教皇フランシスコの司式により、第28回WYD(ワールドユースデー)リオデジャネイロ大会の前晩の祈りが行われました。前晩の祈りには約200万人の青年が参加しました。以下に訳出するのは、前晩の祈りの中で教皇が行った講話の全文です(原文スペイン語とポルトガル語)。

前晩の祈りおよび閉会ミサは、アントニオ・カルロス・ジョビン(旧名ガレオン)国際空港で開催される予定でしたが、悪天候のため、7月25日(木)、場所を変更することが発表されました。
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 親愛なる若者の皆様。

 ここにおられる皆様を目にしながら、わたしはアシジの聖フランシスコ(1181/1182- 1226年)の話を思い起こします。フランシスコは十字架の前で、こう語りかけるイエスの声を聞きました。「フランシスコよ、行って、わたしの家を修復しなさい」。若いフランシスコはすぐに寛大な心で、わたしの家を修復しなさいという主の呼びかけにこたえました。しかし、家とはどの家のことでしょうか。フランシスコは少しずつ、これは石でできた建物を修復することではなく、教会生活で自分の務めを果たすことだということを悟っていきました。それは、教会に奉仕し、教会を愛し、キリストのみ顔をますます輝かせなさいということだったのです。

 今日も主は、ご自分の教会のために、皆様若者を必要としています。親愛なる若者の皆様。主は皆様を必要としています。今日も主は皆様一人ひとりを招いておられます。教会の中でわたしに従い、宣教者となりなさいと。親愛なる若者の皆様。主は皆様を招いています。群衆ではなく、皆様一人ひとりを招いています。主が皆様の心に何を語りかけておられるか、耳を傾けてください。わたしたちはこの数日間の出来事から、何かを学べると思います。わたしたちは悪天候のためにグアラティバの「信仰の畑(Campus Fidei)」でこの前晩の祈りを行うことをあきらめなければなりませんでした。主はわたしたちに語りかけておられるのではないでしょうか。あなたがたこそが真の「信仰の畑」です。「信仰の畑」とは、場所のことではなく、あなたがたのことですと。そのことは本当です。わたしたち、皆様一人ひとりが、わたしも、すべての人が、「信仰の畑」なのです。宣教する弟子となるとは、わたしたちが神の信仰の畑であるのを知ることです。この「信仰の畑」というイメージから出発して、わたしは三つのイメージについて考えます。この三つのイメージは、弟子であり宣教者であるとはいかなることかをいっそうよく理解する助けとなるからです。第一のイメージは、種を蒔(ま)く場所としての畑です。第二のイメージは、訓練の場としての畑です。第三のイメージは、建築作業としての畑です。

1 第一のイメージは、種を蒔く場所としての畑です。わたしたちは皆、畑に種を蒔く人について語ったイエスのたとえ話を知っています。ある種は道端に落ち、ある種は石だらけのところ、あるいは茨の間に落ちて、育つことができませんでした。しかし、ほかの種はよい土地に落ち、豊かな実を結びました(マタイ13・1-9参照)。イエスご自身がこのたとえ話の意味を説明します。種はわたしたちの心に蒔かれた神のことばです(マタイ13・18-23参照)。イエスは毎日、種を蒔かれますが、今日、特別なしかたで種を蒔かれます。神のことばを受け入れるなら、わたしたちは信仰の畑となるのです。どうかキリストとそのことばを人生に受け入れてください。神のことばの種を受け入れ、芽生えさせ、成長させてください。神はすべてのことを配慮なさいます。しかし、神に皆様のうちで働き、種を成長させていただこうではありませんか。

 イエスはわたしたちにいわれます。道端や石だらけのところや茨の間に落ちた種は、実を結びません。わたしたちは正直に自問できると思います。わたしたちはどのような土地でしょうか。どのような土地になりたいでしょうか。自分が道端のようなものであることもあるかもしれません。わたしたちは主のことばを聞きながら、生活の中で何も変えません。自分が耳にするさまざまな表面的な声で耳が聞こえなくなっているからです。皆様にお願いします。そのような声にただちにこたえないでください。だれもが心の中でこたえます。わたしは耳の聞こえない若者だろうか。石だらけの土地のような者だろうか。わたしたちはイエスを熱狂的に受け入れますが、困難を前にしてひるみ、時流に逆らう勇気がありません。わたしたちは皆、心の中でこたえます。わたしには勇気があるでしょうか。それともわたしは臆病でしょうか。わたしたちは茨だらけの土地のような者かもしれません。後ろ向きな感情が、主のことばをふさいでしまいます(マタイ13・18-22参照)。わたしたちは心の中でどっちつかずの状態にあるのではないでしょうか。わたしは神に従っているのでしょうか。それとも悪魔に従っているのでしょうか。わたしはイエスの種を受け入れながら、心の中で育つ茨や雑草に水を注いでいないでしょうか。しかし今日、種はよい土地に落ちることができると信じています。わたしたちはどのように種がよい土地に落ちたかについて、あかしを耳にしました。「いいえ、神父様。わたしはよい土地ではありません。わたしは荒れ果て、石や茨だらけです」。表面的にはそうかもしれませんが、よい土地を少し見つけて、種を落とすなら、種は芽を出すでしょう。皆様がよい土地となりたいこと、「パートタイム」の、見かけだけのキリスト信者ではなく、真のキリスト信者になりたいことを知っています。皆様が、自由の幻想にまどわされ、一時的な流行や気まぐれに従うことを望んでいないことを知っています。皆様が高い理想、意味のある決定的な決断を目指していることを知っています。それは本当でしょうか。それとも間違っているでしょうか。わたしのいっていることは正しいでしょうか。もしもそれが本当なら、それを実行してください。沈黙のうちに自分の心を見つめ、イエスにいってください。わたしたちは種を受け入れたいと望みますと。イエスにいってください。イエスよ。わたしの中にある石と茨と雑草をご覧ください。しかし、種を受け入れるためにわたしがあなたに差し出す、わずかな土地もご覧ください。沈黙のうちに、イエスの種を受け入れようではありませんか。この時のことを忘れないでください。すべての人は自分が受け入れた種を知っています。この種を育ててください。神がそれを育ててくださいます。

2 畑は、種を蒔く場所であるだけでなく、訓練の場でもあります。イエスはわたしたちに願います。生涯を通してわたしに従いなさい。わたしの弟子になりなさい。「わたしのチームで働きなさい」と。皆様の多くはスポーツを愛しておられます。ここブラジルでは、他の国々と同じように、サッカーは国民全体が愛するスポーツです。ところで、チームに入るようにといわれた選手はどのようにするでしょうか。彼らは練習しなければなりません。それもたくさん練習しなければなりません。主の弟子としてのわたしたちの生活についても同じことがいえます。聖パウロはキリスト者についてこう述べます。「競技をする人は皆、すべてに節制します。彼らは朽ちる冠を得るためにそうするのですが、わたしたちは、朽ちない冠を得るために節制するのです」(一コリント9・25)。イエスはワールドカップよりも偉大なものをわたしたちに与えてくださいます。イエスがわたしたちに与えてくださるのは、実り豊かで幸福な人生の可能性です。さらにイエスは、ご自分とともに生きる未来、終わりのない未来、すなわち永遠のいのちを与えてくださいます。これこそがイエスがわたしたちに与えてくださるものです。しかしイエスはわたしたちに入会金を払うことを求めます。入会金とは、イエスに「かたどられる」よう訓練することです。それは、恐れることなく人生のあらゆる状況に立ち向かい、信仰をあかしするためです。イエスと対話し、祈ることを通じて。「神父様。わたしたちは皆、祈らなければならないのですか」。そうです。沈黙のうちにこたえてください。わたしは祈っているでしょうか。イエスと語り合っているでしょうか。それとも沈黙を恐れているでしょうか。心のうちで聖霊に語りかけていただいているでしょうか。イエスにこう祈っているでしょうか。あなたはわたしが何をすることをお望みですか。わたしがどのような人生を送ることをお望みですか。これが訓練です。イエスに祈ってください。イエスと語り合ってください。人生の中で過ちを犯したり、倒れたり、間違ったことをしたとしても、恐れてはなりません。イエスよ。わたしのしたことをご覧ください。わたしは何をすべきでしょうか。折がよくても悪くても、よいことをしたときも、悪いことをしたときも、たえずイエスと語り合ってください。イエスを恐れてはなりません。これが祈りです。皆様は、この祈りを通じて、イエスと対話すること、宣教する弟子となるための訓練を受けるのです。秘跡を通じて、イエスの現存がわたしたちの中でますます深まります。兄弟を愛し、聞くこと、理解すること、ゆるすこと、他の人を、だれをも除外せず、仲間はずれにせず、すべての人を受け入れ、助けることを学んでください。祈り、秘跡、他の人を助けること、他の人に奉仕すること――イエスに従うための訓練はこれです。

3 第三は、建築作業としての畑です。わたしたちは目の前でこのことを目の当たりにしています。若者の皆様は、教会を築くという作業に献身しています。わたしたちの心が神のことばを受け入れるよい土地なら、キリスト信者として生きようと「汗を流す」なら、わたしたちは偉大なことを経験できます。わたしたちは独りきりではありません。わたしたちは、同じ道を歩む兄弟姉妹から成る家族の一員です。わたしたちは教会の一員です。若者たちは独りきりではありません。ともに道を歩みながら、教会を築いています。聖フランシスコがしたことをともに行います。すなわち、教会を築き、修復するのです。皆様に尋ねます。教会を築きたいですか。喜んでそうしたいですか。明日はこの「はい」という返事を忘れているでしょうか。この返事を聞いて、うれしく思います。わたしたちは教会の一員です。わたしたちは実際に教会を築いています。わたしたちは歴史の主役です。どうか歴史の末尾につかないでください。歴史の主役となってください。前に向かって歩んでください。世界をよりよいものにしてください。兄弟姉妹の世界、正義と愛と平和と兄弟愛と連帯に基づく世界にしてください。いつも前に向かって歩んでください。聖ペトロはいいます。あなたがたは霊的な家を造り上げる生きた石です(一ペトロ2・5参照)。この舞台を見ると、生きた石で造り上げられた教会の形をしているのが分かります。イエスの教会において、わたしたちは生きた石です。イエスはわたしたちに教会を築くように求めます。わたしたちは皆、生きた石です。建物の一部です。雨が降ったとき、一つの部分が欠けていれば、雨漏りがして、水が家の中に入ってしまいます。一つひとつの生きた部分が教会の一致と安定を支えるのです。わずかな数のグループから成る小さな教会堂を築いてはなりません。イエスはわたしたちに、ご自分の教会を大きくするよう願います。それは、全人類を収めることができる、すべての人のための家となるためです。イエスはわたしに、皆様に、わたしたち一人ひとりにいわれます。「行って、すべての民を弟子にしなさい」。今夜、イエスにこたえようではありませんか。はい、主よ。わたしも生きた石になりたいと思います。ともにイエスの教会を築きたいと思います。行って、キリストの教会を築きたいと思います。どうか一緒にこう述べたことを忘れないでください。

 皆様の若い心は、よりよい世界を築くことを望みます。わたしは、世界の多くの場所で、若者たちが通りに出て、公正で兄弟愛に満ちた文明への望みを表明するニュースを耳にしています。通りを歩く若者たちは、変化の主役となることを望んでいます。どうか変化の主役となることを他の人に任せないでください。皆様こそが未来を手にしています。皆様を通して世界に未来が到来するのです。どうかこの変化の主役となってください。無関心を克服し、世界のさまざまな地域に生じている社会と政治の不安に対してキリスト教的な答えを示してください。世界の建設者となってください。世界をよりよいものとするために働いてください。親愛なる若者の皆様。人生の傍観者となるのではなく、積極的にかかわってください。イエスは傍観者とならずに、自ら積極的にかかわりました。人生の傍観者とならずに、イエスと同じように積極的にかかわってください。一つの問いが残っています。わたしたちはどこから始めればよいでしょうか。だれから始めたらよいでしょうか。かつてある人がマザー・テレサ(1910-1997年)に尋ねたことがあります。教会の中で何を変えなければならないでしょうか。教会のどの壁から始めるべきでしょうか。彼らは尋ねました。マザー、どこから始めるべきでしょうか。彼女はこたえました。あなたとわたしからです。彼女は目的を示したのです。始めるべきところを知っていたのです。今日わたしは、マザー・テレサのことばを自分のものとして皆様に申し上げます。どこから始めましょうか。あなたとわたしからです。一人ひとり、沈黙のうちに自問してください。わたしから始めなければならないなら、どこから始めたらよいでしょうか。一人ひとり、自分の心を開いてください。そうすればイエスは、どこから始めればよいか、語りかけてくださいます。

 親愛なる友人の皆様。自分が信仰の畑であることを忘れないでください。皆様はキリストの競技者です。皆様は、より美しい教会、よりよい世界を築くよう招かれています。聖なるおとめに目を上げようではありませんか。マリアの助けによって、わたしたちがイエスに従うことができますように。マリアがご自分が神に「はい」と述べた模範を示してくださいますように。「わたしは主のはしためです。おことばどおり、この身に成りますように」(ルカ1・38)。マリアとともに、ご一緒に神にいおうではありませんか。おことばどおり、この身に成りますように。アーメン。 

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