教皇フランシスコのパレスチナ自治政府との会談におけるあいさつ

聖地巡礼中の教皇フランシスコは、その2日目にあたる2014年5月25日、ベツレヘムでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談しました。以下はその会談における教皇のあいさつの全訳です。 この会談の後、教皇はミサをささげました […]

聖地巡礼中の教皇フランシスコは、その2日目にあたる2014年5月25日、ベツレヘムでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談しました。以下はその会談における教皇のあいさつの全訳です。

この会談の後、教皇はミサをささげました。ミサの後に行われた「アレルヤの祈り」では、アッバス議長とイスラエルのペレス大統領を6月にバチカンに招いて、平和のために共に祈ることを提案しました。
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マフムード・アッバス議長様
親愛なる友人の皆様
親愛なる兄弟姉妹の皆様

 わたしは、マフムード・アッバス議長の温かい歓迎に感謝するとともに、パレスチナ自治政府の皆様とパレスチナ全国民に心からごあいさつ申し上げます。今日、皆さんと共に「平和の君」であるイエスの降誕の地に留まる機会を得られたことを主に感謝します。

 この数十年、中東は長引く紛争により悲劇的な状況になっています。この紛争によって受けた多くの傷をいやすことは、あまりにも困難です。暴力が行われていない所でも、不安定な状況や相互理解の欠如により、不穏、権利の侵害、孤立、避難民の流出、対立、物資不足、そしてあらゆる苦難が生じています。

 この紛争のためにもっとも苦しんでいる人々に思いを寄せつつ、わたしは心の底から次の決意を述べたいと思います。この事態を終わらせる時が来ています。状況は、ますます受け入れ難いものになっています。すべての人が幸せになるためには、確固とした平和に向けた地盤を整えるための力強い取り組みと働きかけが必要です。その平和は、正義、各自の権利の容認、相互の安全に基づいています。今こそ、すべての人が善のために勇気をもって寛大になり、創造性を発揮する時です。今こそ、平和を築く勇気を持つ時です。平和は、両国民が国際的に認められた国境の中で、平和と安全のうちに生き、生活する権利を認めることの上に成り立ちます。

 したがって、わたしは心の底から次のことをお願いします。真の合意を結ぶという明確な意向に反する行いや活動をしないでください。不断の決意と不屈の精神をもって平和をめざしてください。平和は、この地域の人々と世界全体に計り知れない恩恵をもたらします。ですから、それぞれの国が何かを失うことになっても、決意をもって平和を求めなければなりません。

 わたしは、パレスチナとイスラエルの国民と指導者が、この平和への希望に満ちた道を勇気と確信をもって歩むことができるよう祈ります。勇気と確信は、どんな道を歩むときにも必要です。安全が保障され、互いに信頼し合う平和な社会は、他の問題に取り組み、解決する際の確かな基準となります。それはまた、バランスのとれた発展ももたらし、他の危機的な状況にある地域に模範を示すことができるのです。

 ここで、わたしはキリスト者がすべての人々と喜びと苦しみを分かち合いつつ、社会の共通善に大きく貢献していることに触れたいと思います。キリスト者は他の市民を自分の兄弟姉妹と考え、彼らと共に、すべての権利を有する市民としてこの役割を果たし続けたいと願っています。

 マフムード・アッバス議長、あなたは平和の人、平和の働き手として知られています。先日のバチカンでの会談と、わたしのパレスチナ訪問は、教皇庁とパレスチナの間に良好な関係が存在するあかしです。わたしは、この関係がすべての人のためにさらに進展すると信じています。パレスチナにおけるカトリック教会の様々な問題、とりわけ宗教の自由に関して、当事者間の協定案を準備してくださったことに感謝いたします。基本的人権の尊重は、まさに平和と兄弟愛と調和の必要条件であると同時に、異なる文化や宗教間の調和と理解は可能かつ必要であることを世界に示すものです。それはまた、わたしたちが共有すべき大切なものは豊富にあるので、平穏と秩序と平和の内にそれらを分かち合う方法を見つけるのは可能であることをあかししています。その時、わたしたちは相手の相違を認め、すべての人が神の子であり、兄弟姉妹であることを喜んで受け入れるのです。

 アッバス議長、そして、ここベツレヘムに集った親愛なる兄弟姉妹の皆さん。全能の神が皆さんを祝福し、守ってくださいますように。そして、平和への道を勇気をもって歩み続けるのに必要な英知と力を与えてくださいますように。そうすれば、剣は鋤に打ち直され、この地も幸福と調和の内に再び栄えるでしょう。

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