内赦院 教令 教皇フランシスコにより、聖ヨセフを普遍教会の保護者とする宣言の百五十周年を記念して発表された「聖ヨセフ年」に際し、特別免償の恵みを与える。

教皇庁内赦院は、2014年11月23日、「奉献生活の年」(2014年11月30日~2016年2月2日)に際して与えられる特別免償についての教令を発布しました。この教令は、「奉献生活の年」の開催を機会に、定められた条件を満たした人に免償を与えることを定めたものです。以下は教令の全訳です。
 免償とは、罪科としてはすでに赦免された罪に対する有限の罰の神の前におけるゆるしです。キリスト信者はふさわしい心がまえを有し、一定の条件を果たすとき、教会の助けによってこれを獲得します。免償は、罪のために負わされる有限の罰からの解放が部分的であるか全体的であるかによって、部分免償および全免償とに分けられます(『新教会法典』992~993条、『カトリック教会のカテキズム』1471、『カトリック教会の教え』220~221頁参照)。

内赦院 教令

 教皇フランシスコにより、聖ヨセフを普遍教会の保護者とする宣言の百五十周年を記念して発表された「聖ヨセフ年」に際し、特別免償の恵みを与える。

 本日、『クエマドモドゥム・デウス』の公布150周年を迎えます。この教令は、福者ピオ九世が、人間の敵意に脅かされていた教会が置かれた、深刻で痛ましい状況に心を動かされ、聖ヨセフを普遍教会の保護者と宣言したことを受けたものです。
 イエスの守護者の力強い庇護への教会全体による信託の永続のため、教皇フランシスコは、宣言の記念日であり、無原罪のおとめにして夫ヨセフの花嫁、聖マリアの祭日である本日より、2021年12月8日までを、聖ヨセフの特別年として祝うことを定めました。この特別年によって、各信者はヨセフの模範に倣うことで、神のみ旨を十全に果たしつつ、信仰生活を日々深めることができます。
 そうしてすべての信者は、祈りと善行を通し、天におられるナザレの聖家族の長、聖ヨセフの助けを受け、今日、現代世界をさいなむ人間的、社会的なつらい試練に慰めと救いをもたらすために、献身する力を得るはずです。
 あがない主の保護者に対する崇敬は、教会の歴史の中で広がりました。教会はこのかたを、その花嫁である神の母に次ぐ最高の崇敬対象者に加えるだけではなく、さまざまなものの保護者としてきました。
 教会の教導職は、聖ヨセフという倉にある、古くて新しいすばらしさを、マタイ福音書にある「自分の倉から新しいものと古いものを取り出す」(マタイ13・52)一家の主人のように伝え続けています。
 教皇フランシスコの意向に沿って公布した本教令をもって、内赦院が聖ヨセフ年の間にいつくしみをもって与える免償の恵みは、望まれる目的を十全に果たすために大いに有益です。
 通常の条件(ゆるしの秘跡、聖体拝領、教皇の意向による祈り)のもと、あらゆる罪から離れようとする心をもって、内赦院が指示する機会と方法で聖ヨセフ年に参加する信者に、全免償が与えられます。

 a 真の信仰者である聖ヨセフは、御父との親子の関係を再発見し、祈りに対する忠実さを新たにし、神のみ旨に耳を傾けて深い識別をもってこたえるようわたしたちを招きます。全免償は、主の祈りを30分以上黙想する人、または、聖ヨセフについての観想を含む一日以上の黙想会に参加する人に与えられます。
 b 福音書は、聖ヨセフに「正しい人」という称号を与えています(マタイ1・19参照)。聖ヨセフ、すなわち「心と魂の奥底にある内奥の秘密」1の守護者、神の神秘の受託者、かくして内的法廷の理想の保護者は、わたしたちが義務を果たしていくうえで、沈黙、賢明、誠実の価値を再発見するよう促しています。ヨセフにより模範的に実践された正義の徳とは、神の律法であるいつくしみの律法に完全に従うことです。「真の正義を全うするのは、ほかでもなく神のいつくしみだからです」2。したがって、聖ヨセフの模範に倣って、肉体的、霊的ないつくしみのわざを行う人も、全免償の恵みを得ることができます。
 c ヨセフの召命の主要な面は、ナザレの聖家族の守護者、聖母マリアの夫、イエスの養父となることでした。聖家族にあった親しい交わり、愛、祈りの雰囲気を再び作り出す励ましをキリスト者の全家庭が受けるよう、家庭で、また婚約者どうしがロザリオの祈りを行うならば、全免償が与えられます。
 d 1955年5月1日、神のしもべピオ十二世は、「すべての人が労働の尊厳を認識すること、そして権利と義務の公平な配分に基づく社会生活と法律を促進することを意図して」3、労働者聖ヨセフの祝日を制定しました。したがって、日々、自分の働きを聖ヨセフの保護にゆだねる人、また、失業者が仕事を得、すべての人の仕事がより尊厳あるものとなるよう祈り、ナザレの労働者の執り成しを求める信者は、全免償を得ることができます。
 e 聖家族のエジプト避難は、「人が危険のうちにあるとき、苦しんでいるとき、逃れているとき、拒絶され見捨てられているとき、神がそこにいてくださることを示します」4。全免償は、内外から迫害を受けている教会のため、そしてあらゆる形態での迫害に苦しむすべてのキリスト者の救いのために、聖ヨセフの連願を(ラテン教会の伝統で)、あるいは聖ヨセフへのアカティストスの全部または一部を(ビザンティン教会の伝統で)、あるいは他の典礼伝承に固有の聖ヨセフへの祈りをささげる信者に与えられます。

 アヴィラの聖テレジアは、聖ヨセフを人生のあらゆる場面での保護者だと認めました。「他の聖人がたは、ある特別の必要に際して、わたしたちを助ける権能を神より受けておいでになるように思えます。しかしこの光栄ある聖者は、わたしどものあらゆる必要に際して助けてくださいます。わたしはそれを経験によって知っております」5。最近では聖ヨハネ・パウロ二世が、聖ヨセフの姿にある、「新しいキリスト教の千年期に関する、わたしたちの時代の教会のための現代的新しさ」6を強調されました。
 聖ヨセフの教会における庇護の普遍性を今一度明言するために、内赦院は、前述の機会に加え、正式に認可された聖ヨセフへの祈りをささげる、あるいは信心業を行う信者に、全免償を与えます。たとえば「聖ヨセフへの祈り(Ad te, beate Ioseph)」を、とくに3月19日と5月1日のヨセフの記念日、イエスとマリアとヨセフの聖家族の祝日、聖ヨセフの主日(ビザンティン教会の伝統の)、毎月19日と毎水曜日、ラテン教会の伝統でこの聖人を記念する日にささげる場合です。
 現在の公衆衛生上の緊急事態においては、全免償の恵みはとくに、高齢者、病者、瀕死の人、規定により在宅を余儀なくされているすべての人に与えられます。また、どんな罪からも離れようとする心をもち、できるだけ早く通常の3条件を満たすことを望み、自宅か、事情により留め置かれている場所で、病者の慰め手、安らかな死の守護者、聖ヨセフへの信心の祈りを唱え、神に自らの人生の苦痛や困難を信頼してささげる人に与えられます。
 鍵の権能によっていただく神の恵みにあずかることが司牧的に促進されるよう、当内赦院は、しかるべき権限を有するすべての司祭が、積極的に惜しみなく、ゆるしの秘跡を授け、また、頻繁に病人へ聖体を授けるよう、せつに願っています。

 本教令は、聖ヨセフ年の期間中、対立する規定類が公布されないかぎり有効です。

   ローマ、教皇庁内赦院にて
   2020年12月8日

内赦院長
マウロ・ピアチェンツァ枢機卿

内赦執行官
クシストフ・ニキエル

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