教皇フランシスコ 自発教令形式による使徒的書簡 『あなたがたは世の光である』 (Vos estis lux mundi)

 

教皇フランシスコ
自発教令形式による使徒的書簡
『あなたがたは世の光である』
Vos estis lux mundi
(改訂版)2023年3月25日

「あなたがたは世の光である。山の上にある町は隠れることができない。」(マタ5:14)
 私たちの主イエス・キリストは、すべての信者が、徳や高潔さ、聖性の光り輝く模範となるよう呼びかけています。実際、私たちは皆、その生活において、特に隣人との関わりにおいて、キリストへの信仰を具体的に証するよう求められているのです。

 性的虐待の犯罪は、私たちの主に背く行為であり、その犠牲者に身体的、心理的、霊的損害を与えるとともに、信者の共同体を傷つけるものです。いかなる形態のものであれ、このような出来事が二度と起こらないようにするためには、継続的かつ心からの深い改心が必要とされます。それは全ての人を教会へ参与させる具体的かつ効果的な実践によって証明されるのです。そうすることで、一人一人の聖性と道徳的な努力とが一つとなって、福音のメッセージの信頼性と教会の使命の有効性をより高めることになるのです。しかしこれは、わたしたちの心に注がれる聖霊の恵みによってのみ実現されます。なぜなら私たちは、「わたしから離れては、あなたがたは何もできない」と言うイエスのことばを常に胸に刻んでいなければならないからです(ヨハ15:5)。これまで、すでに数多くのことがなされてきましたが、希望ある未来へ向かって歩むために、私たちは過去の苦い経験から学び続けなければなりません。

 こうした責任を負うのは、特に神の民を導く司牧者として神から使命を与えられた使徒たちの後継者たちです。彼らには、常に神聖な師の足跡の間近にあってこれを辿る努力を怠らないことが求められています。事実、彼らはその職務ゆえに、「キリストの代理者および使者として、自分に託されたそれぞれの部分教会を、助言、勧告、模範によって、また権威と聖なる権能によって統治する。しかし彼らは、大きな者は小さな者となり、統治する者は仕える者となるべきことを念頭に置き、真理と聖性の中に自分の群れを育てるためにのみ、この権能を行使する」(第二バチカン公会議『教会憲章』27項)のです。

 使徒たちの後継者たちに関わる喫緊の課題は、教会において様々な仕方で職務を引き受けている人、福音的勧告を宣誓した人、あるいはキリストを信じる民に仕えるよう招かれた人、これらすべての人々に関わる問題です。そのため、信者の信頼を裏切るこうした犯罪を予防し阻止するために、世界的規模の体制が採用されることが望まれます。

 この目的に対して私は、2019年5月7日に3年間の暫定的な(ad experimentum)規則を定めた自発教令形式の使徒的書簡を発布しました。そして今、事前に定めたその期間が満了しました。私は、諸々の司教協議会およびローマ教皇庁の各省庁の意見を考慮して、この数年間の経験を評価したうえで、当該規定のより良い施行を実現するため、刑法ならびに訴訟法に関する教会法およびカトリック東方教会法の規定を損ねることなく、以下の通り決定します。

第1章

総則

第1条 適用範囲

(1) 本規定は、聖職者、奉献生活の会または使徒的生活の会の会員、および使徒座によって承認もしくは創設された国際的な信者の団体の総長に関して、次の事柄について報告があった際に適用するものとします。

a) 
*神の十戒の第六戒に反する犯罪のうち、暴力または脅迫、権威の濫用により性的行為を行うように、もしくは受けるように他者に強要した場合。

**神の十戒の第六戒に反する犯罪を、未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、あるいは成年弱者に対して行った場合。

***児童および日常的に十分な判断を行うことが出来ない者のわいせつ画像の購入、所持、公開、頒布につき、形式および手段の如何に関わらずこれを行った場合。

****未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、成年弱者に対して、わいせつな形で自らをさらすこと、あるいは現実的もしくは仮想的なわいせつ物公然陳列に参加するよう誘ったり導いたりした場合。

b)本項a)が規定する犯罪について上記第1項に定める人々に対して市民法上もしくは教会法上、行政的あるいは刑事的に行われる調査に関して、第6条に定める人々が、作為的もしくは不作為的に干渉したりこれを回避したりした場合。

(2) 本規定を適用するにあたって下記の用語を以下の通り定義します。

a) 「未成年者」:18歳未満の全ての人。日常的に十分な判断を行うことが出来ない者も未成年者と同等とみなす。

b) 「成年弱者」:疾患を有する人、身体的もしくは精神的に不利な条件におかれている人、あるいは事実上、一時的であっても、理解力、意志能力、侵害に対する抵抗力が制限されていることから個人として自由を欠く状態にある全ての人。

c) 「児童ポルノ素材」:使用される手段を問わず、実際のまたは仮想上の明白な性的行為に関係している未成年者の様子を表現する全てのもの、および性的欲求を満たす目的もしくは営利目的を有する未成年者の性器を表現する全てのもの。

第2条 報告の受理およびデータの保護

(1) それぞれの司教協議会、総大司教教会(Patriarchal Churches)や主幹大司教教会(Major Archiepiscopal Churches)の司教会議(Synods of the Bishops)、自治権を有する主都大司教教会(Metropolitan Churches sui iuris)の裁治権者評議会(Councils of Hierarchs of the)により必要に応じて採用されてきた指針を考慮したうえで、ラテン教会の教区(Dioceses)およびカトリック東方諸教会の教区(Eparchies)は、それぞれ個別に、あるいは共同で、報告を受理するための一般に利用しやすい組織や事務所を設けなければならない。その教会組織や事務所へこれらの報告が提出されるようにしなければなりません。

(2) 本条に関する情報は、教会法第471条第2項およびカトリック東方教会法第244条第2項第2号の規定に従って、安全性、完全性、秘密性が保証されるよう取り扱われ、保護されなければなりません。

(3) 第3条第3項に規定の場合を除いて、報告を受けた裁治権者は、直ちにこれを事件が起きたとされる場所の地区裁治権者、ならびに報告の対象者の裁治権者に伝達します。これら両裁治権者間に別段の合意がある場合を除き、事件が起きたとされる場所の地区裁治権者が、具体的な事案について定められた法律の規定に従って手続きを開始する義務を負います。

(4) 本章の効力に関して、Dioceses(ラテン教会の教区)はEparchies(カトリック東方諸教会の教区)に等しいものとし、Ordinary(ラテン教会の裁治権者)は、Hierarch(カトリック東方諸教会の裁治権者)に等しいものとします。

第3条 報告

(1) 聖職者が内的法廷の職務を遂行する中で情報を知るに至った場合を除いて、聖職者あるいは奉献生活の会または使徒的生活の会の会員が、第1条が規定する事案のうちのいずれかが犯されたと判断される情報を得るか、その根拠ある理由を見出した場合は、事案が起こった場所の地区裁治権者または、教会法第134条およびカトリック東方教会法第984条が規定する他の裁治権者に速やかに報告する義務を負うものとします。ただし本条第3項に規定する場合に関してはこの限りではありません。

(2) いかなる人も、特に教会における任務、職務を担う信徒は、第1条に規定する行為について報告することができます。その際は、前条に記載の方法、もしくは他の適切な方法において行うものとします。

(3) 報告の内容が第6条に示す人物に関わる場合、その報告は第8条および第9条
に基づいて特定の権威者宛てに行われるものとします。報告は、直接または教皇使節を介して、常時管轄省庁宛てに行うことができます。直接報告のあった
場合、これを受けた省庁はその旨を教皇使節に連絡します。

(4) 報告は、できる限り詳細な内容を含むものとし、事案が起きた時刻や場所、関係する人物、事案について報告を受けた人物、さらに事案を慎重に評価するために有用とみなされるその他の全ての状況についても報告しなければなりません。

(5) 情報は職権によって(ex officio)得ることも可能とされます。

第4条 報告者の保護

(1) 第3条の規定に従って報告を行うことは、職務上の秘密を犯したことにはなりません。

(2) 教会法第1390条およびカトリック東方教会法第1452条、第1454条に規定する事項を除いて、報告を行ったことを理由にその者に対する偏見を抱いたり、報復や差別を行ったりすることは禁じられます。これらは第1条第1項b)が規定する事柄に含まれる行為となり得ます。

(3) 報告者、被害を受けたと主張する人、およびその証人に対しては、報告の内容について黙秘の義務を課すことは一切できません。但し、第5条第2項に規定の内容は遵守されなければなりません。

第5条 人々に対する配慮

(1) 教会の権威者は、被害を受けたと主張する人々が、その家族とともに、尊厳と敬意をもって扱われるように努め、これらの人々に対してとりわけ次の事柄を提供するものとします。

a) 彼らを受け入れ、話を聞き、寄り添うこと。これらは特定の奉仕職を介しても行
うことができます。

b) 霊的な支援

c) 具体的な事例に応じた医学的、治療的、および心理学的支援

(2) 事件に関与することとなった人々の名声やプライバシー、さらにその個人情報の秘密が正当に保護されるよう監察が行われなければなりません。報告の対象者に対しては、第13条第7項の推定が適用されます。但し、第20条に規定の内容が遵守されなければなりません。

第2章

司教およびこれと同等の人々が関係する事案についての規定

第6条 適用される主体の範囲

本章に記載の手続き規定は、第1条に定める事案のうち、以下の人々によって犯された犯罪および行為に適用されます。

a) 枢機卿、総大司教、司教、教皇使節

b) ラテン教会またはカトリック東方諸教会の部分教会、あるいは属人教区を含む類似の団体の司牧的役務を委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が在職期間中に起こした事件

c) 属人区の司牧的役務を委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が在職期間中に起こした事件

d) 聖職者の公的会の指導者である聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者で、司祭を入籍させる権限のある者が在職期間中に起こした事件

e) 教皇庁の権限のもとに置かれている奉献生活の会または使徒的生活の会の総長、および自治権を有する観想修道院の院長、または過去にこうした役割を担っていた者が在職期間中に起こした事件

f) 使徒座により承認もしくは創設された国際的な信者の団体の総長である信徒、または過去にこうした役割を担っていた信徒が在職期間中に起こした事件

第7条 教皇庁の管轄省庁

(1) 本章の規定に基づき、「管轄省庁」(competent Dicastery)と言う場合、現行法規によって教理省に委ねられている犯罪に関しては教理省を指し、その他の全ての事案ならびにローマ教皇庁の固有法に基づく各管轄権に関しては以下の通りとなります。

・東方教会省
・司教省
・福音宣教省
・聖職者省
・奉献・使徒的生活会省
・いのち・信徒・家庭省

(2) より良い連携を確実に行うために、管轄省庁は、報告および調査の結果について教皇庁国務省ならびに直に関係する他の省庁に連絡するものとします。

(3) 本章に示す連絡のうち、管区大司教と聖座との間の連絡は、教皇使節を介して行われるものとします。

第8条 ラテン教会の司教、および第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

(1) 報告を受けた権威者は、管轄省庁ならびに報告の対象者が住所を有する地域の管区大司教にこれを伝達します。

(2) 報告が管区大司教に関わるものである場合、または管区大司教座が空位である場合、報告は聖座ならびに管区所属の司教のうち最も長く司教職位にある者に対して行い、この場合、その促進のために管区大司教に関連する以下の規定が適用されます。同様に、聖座が直接管轄する教区の司牧的指導者に関する報告も聖座に提出することとします。

(3) 報告が教皇使節に関わるものである場合、その報告は国務省に対して直接行う
ものとします。

第9条 カトリック東方諸教会の司教、およびに第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

(1) 総大司教教会、主幹大司教教会、あるいは自治権を有する主都大司教教会の司教またはこれに同等の人物に関わる報告の場合、その報告はそれぞれ総大司教、主幹大司教、あるいは自治権を有する教会の主都大司教に対して行うものとします。

(2) 報告が、総大司教会または主幹大司教教会の管区大司教に関わるものであり、当該管区大司教がこれらの教会の領域内で自らの職務を遂行している場合、報告はそれぞれの総大司教、または主幹大司教に対して行うものとします。

(3) 以上の事例において報告を受けた権威者は、東方教会省に対しても報告するものとします。

(4) 報告された人物が、総大司教教会、主幹大司教教会あるいは自治権を有する主都大司教教会の領域外の司教または管区大司教である場合、報告は東方教会省に対して行うものとし、必要と判断する場合、管轄の総大司教、主幹大司教、もしくは自治権を有する管区大司教にその旨を連絡することとします。

(5) 報告が総大司教、主幹大司教、自治権を有する教会の管区大司教、あるいは自治権を有するその他の東方教会の司教に関わるものである場合、これを東方教会省に対して行うものとします。

(6) 以下の管区大司教に関する規定は、本条に則り報告を受けた教会の権威者に適用されます。

第10条 奉献生活の会または使徒的生活の会の総長に対して適用可能な手続き

教皇庁の権限のもとに置かれている奉献生活の会または使徒的生活の会、ローマおよびローマ近郊の諸教区にある自治権を有する観想修道院については、これらの総長あるいは元総長に関する報告の場合、これを管轄省庁に対して行うものとします。

第11条 管区大司教がとるべき初期対応

(1) 報告を受けた管区大司教は、直ちに管轄省庁に対して調査開始のため職務委任
を申請します。

(2) 管轄省庁は直ちに、すなわち教皇使節からの第一報を受けてから、または管区大司教から職務委任の申請を受けてから30日以内に、具体的な事案においてどのように手続きを進めるかについて適切な指示を与え措置を講じます。

(3) 管区大司教は、報告が明らかに根拠を持たないと判断した場合は、教皇使節を通じてその旨を管轄省庁に報告します。また、管轄省庁の別段の定めがある場合を除いて事案の取下げを命じます。

第12条 管区大司教とは異なる人物への調査の委任

(1) 管轄省庁が、教皇使節の意見を聞いたうえで、管区大司教とは異なる人物に調査を委任するのが適切と判断した場合、これらの人物に対してその旨が連絡されます。管区大司教は、全ての情報ならびに重要な資料を管轄省庁から委任された人物に提供します。

(2) 前項の場合、以下の管区大司教に関わる規定は、調査の実施を委任された人物に対して適用されます。

第13条 調査の実施

(1) 管区大司教は、管轄省庁から職務委任を受けた後、実施方法に関して、与えられた指示を順守し、自らまたは適切な一名あるいは複数名の人物を介して以下のことを行います。

a) 事件に関する重要な情報を収集すること

b) 教会事務局の記録庫に保管されている調査上必要な情報や文書資料を入手すること

c) 必要に応じて、他のラテン教会の裁治権者もしくはカトリック東方諸教会の裁治権者の協力を得ること

d) 必要に応じて、また以下第7項の規定を遵守したうえで、調査上有益な情報の提供が可能だと判断される人物や組織に情報提供を求めること。なお、これには民間の人物や組織も含まれます。

(2) 未成年者または成年弱者から事情を聞く必要があると判断された場合、管区大司教は、こうした人々の状況および国の法律を考慮した上で適切な方法を採用するものとします。

(3) 調査に関する情報または文書資料の隠滅の可能性があると判断し得る根拠がある場合、管区大司教はこれらの保護のために必要な措置を講じることとします。

(4) 他の人物を介して調査が行われる場合であっても、管区大司教は引き続き調査の指揮および実施の責任者であり、かつ第11条第2項が規定する指示を正確に遂行するうえでの責任者となります。

(5) 教会法第483条第2項およびカトリック東方教会法第253条第2項の規定に従って、任意に選任した公証官が管区大司教を補助します。

(6) 管区大司教には、公平性をもって行動しかつ利害の対立が無いことが求められます。管区大司教は、自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合、自らこの役割を辞し管轄省庁に状況を報告する義務を有します。同様に、上に述べた利害の対立関係にあると考えられる人物は全て、管轄省庁へ報告しなければなりません。

(7) 調査の対象者には推定無罪および正当な名誉の保護が認められます。

(8) 管区大司教は、管轄省庁からの要請に応じて、取り調べを受ける人物に対して、調査を実施する旨を通知し、事実関係を聴取し、抗弁書を提出するように求めます。その際、取り調べを受ける人物は代理人による補佐を受けることができます。

(9) 管区大司教は、管轄省庁の指示に従って、定期的に調査の状況を報告するものとします。

第14条 専門家の参加

(1) 調査における管区大司教への協力方法に関して、司教協議会、またはカトリック東方教会の司教会議、裁治権者協議会の特別の行動指針がある場合はそれに従って、各管区の司教たちが個別に、または共同で専門家のリストを作成することは大変有用です。その中から、管区大司教は事案の必要性に応じて、調査協力に適切な人物を選択することができます。その際、とりわけ教会法第228条およびカトリック東方教会法第408条に規定する信徒により可能な協力を考慮して行います。

(2) いずれにしても管区大司教は、同様に専門性を有するその他の人々を自由に選択することが可能です。

(3) 調査にあたって管区大司教を補佐する人物は誰であれ、公平性をもって行動し、かつ利害の対立が無いことが求められます。もし自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合は、自らこの役割を辞し管区大司教に状況を報告する義務を有しています。

(4) 管区大司教を補佐する人物は、第13条第7項の規定を遵守し、適切かつ忠実に任務を遂行する旨の宣誓を行わなければなりません。

第15条 調査期間

(1) 調査は短期間、すなわち、いかなる場合も第11条第2項に示す期日内に完了しなければなりません。

(2) 管区大司教は、調査状況について報告書を送達した後であっても、正当な理由がある場合、管轄省庁に対して調査期間の延長を求めることができます。

第16条 保護対策

事実関係または状況から必要とされる場合、管区大司教は管轄省庁に対して、調査対象者に対する適切な保護のための措置や対策を採用するように提案します。各省庁は教皇使節に聞き取りを行ったうえでこれらの措置を講じます。

第17条 基金の設立

(1) 教会管区会議、司教協議会、およびカトリック東方諸教会の司教会議、裁治権者評議会は、これらの調査に関する費用をまかなうための基金を設立することができます。これは、教会法第116条、第1303条第1項第1号、およびカトリック東方教会法第1047条の規定に従って設立され、教会法の規定に従って管理運営されるものとします。

(2) 調査の任務を委託された管区大司教の要請に基づいて、基金の管理者は管区大司教が調査に必要な基金を使用できるよう取り計らうものとします。ただし管区大司教は、基金の管理者に対して調査終了時に決算報告書を提出する義務を有します。

第18条 調査記録および意見書(votum)の送付

(1) 調査が完了したら、管区大司教は管轄省庁に調査記録の原本を送付します。その際、調査結果に関する自らの意見書(votum)、および第11条第2項が規定する指示書の中に質問事項がある場合はそれに対する回答も併せて送付します。調査記録の写しは、管轄する教皇庁の代表機関の記録庫に保管します。

(2) 管轄省庁から引き続き指示がある場合を除いて、管区大司教の権限は調査完了の時点で消滅します。

(3) 管轄省庁の指示に従い、管区大司教は要請に応じて、被害を受けたことを主張している人物、また必要な場合には本件の報告を行った人物、もしくはこれらの人物の法的代理人に対して調査結果を報告するものとします。

第19条 その後の措置

管轄省庁は、追加調査を命じる決定を行った場合を除いて、具体的な事案ごとに定められた法律の規定に従ってさらに手続きを進めるものとします。

第20条 国家法の順守

 本規定は、各地において国家法によって定められた権利および義務を損なうことなく適用されるものとします。とりわけ市民法上の管轄当局に報告する義務がある場合、これを遵守しなければなりません。
 
 この自発教令形式の使徒的書簡は、『オッセルヴァトーレ・ロマーノ』紙上での発表をもって公布され、2023年4月30日より効力を生じること、さらに『使徒座官報』(AAS)においても公表されることとします。本書簡の発効に伴い、2019年5月7日公布の以前の自発教令形式の使徒的書簡は失効します。

ローマ、聖ペトロの傍らにて
2023年3月25日、主の受胎告知の祝日、教皇在位第11年

フランシスコ

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