世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会 参加報告

世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会 参加報告 2023年12月14日 菊地 功 会議名: 世界代表司教会議 第16回通常総会 日時: 2023年9月29日から10月29日 場所: サクロファノ黙想の家(9月29 […]

世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会
参加報告
2023年12月14日
菊地 功

会議名: 世界代表司教会議 第16回通常総会
日時: 2023年9月29日から10月29日
場所: サクロファノ黙想の家(9月29日から10月3日)
パウロ六世謁見ホール(10月4日から最終日まで)
宿舎(菊地): 教皇庁アカデミア(外交官養成所)
日本からの参加者: 菊地功(司教団選出代表)、
西村桃子(教皇任命議長代理)、
弘田鎮枝(教皇任命専門家)
テーマ: 「ともに歩む教会のため―交わり、参加、そして宣教」
参加者: 投票権を持つ「メンバー」: 363名
各国の司教協議会から選出された代表のほか、120名は教皇様の指名。教皇様の指名の中には、枢機卿や司教のほか70名の司祭・修道者・信徒が含まれ、そのうちの54名が女性。


概要:

 会議に先立って、参加者はエキュメニカルな祈りの集いに参加した後バスで移動し、ローマ郊外のサクロファノで黙想会に参加した。
 霊的指導は、朝の祈りとミサの前にSr. Maria Grazia Angelini O.S.B.が、そして午前中に二回の講話がFr. Timothy Radcliffe, O.P.によって行われ、午後にはグループに分かれて「霊的な会話」が実践された。
 なお講話のテキストは以下のリンクで公開されている。

 https://www.synod.va/en/highlights/retreat-for-the-participants-of-the-synodal-assembly.html

10月4日の教皇司式の開会ミサで始まったシノドス本会議では、参加者全員が35のテーブルに分かれ、各テーブルには11名ずつが配置された。各テーブルには12のタブレットが置かれ、テーブルの真ん中には四方向に向かってモニターが配置され、そのモニターの中心には発言者を映し出すための小さなビデオカメラが設置されていた。
 今回のシノドスで一番重要な位置を占めるのが、「霊的な会話」という分かち合いであり、その分かち合いを単なるおしゃべりではなく「霊的な会話」にするためには、それなりのトレーニングを受けた司会者(ファシリテーター)が不可欠。テーブルに参加者11名にプラスしてもう一台のタブレットがあるのは、このファシリテーターのため。
 35のテーブルそれぞれに配置されたファシリテーターは、事前の研修を受けていたとはいえ、一番骨の折れる仕事は、事前に定められた3分という制限時間を越え、時に長々と話し続ける聖職者、特に枢機卿や司教の発言を遮って、与えられたテーマからそれないように、そして制限時間を守るように導くことであった。ファシリテーターは男女の信徒や司祭・修道者。
 この丸テーブルで、枢機卿、司教、司祭、修道者、信徒が、同じテーマについて同じ持ち時間で、自分の思いを分かち合う光景は、今回のシノドスの「ともに歩む」教会を体現する一番の象徴的な光景であった。
 会期中は、討議要綱の四つの課題(A, B1, B2, B3)についての「霊的な会話」が進んだ段階で全体会議が行われ、それぞれのグループから3分間の発表と、自由な発言が許された。このグループ別の発表と自由な発言の時間を統括する、議長代理として教皇様から日本の西村桃子さんが任命され、この議長代理には今回初めて枢機卿以外も任命され、その中には西村さんを含め二名の女性がおり、参加者は教会の歴史に刻まれる、女性の活躍の「初めて」の出来事を目撃した。
 ほとんどの全体会に出席された教皇フランシスコは、「自分の好き嫌いではなくて、主役は聖霊」という言葉を繰り返された。実際、従来のシノドスであれば、事前にある程度結論を見越して最終の答申書の原案を作成し準備しておくことが可能であった。それは基本的には、事前に各司教協議会から提出された回答に基づいて作成された討議要綱に沿って会議が進められ、最後はアジェンダに従って多数決で決するから。
 しかし今回は全く異なっていた。丸テーブルでの「霊的な会話」に何度も参加して気がついたのは、繰り返すうちに、想像もしなかった結論がそのテーブルから発表されていったこと。事前には全く想像もつかない内容が、小グループのコンセンサスとして発表されていくために、最終文書のドラフトは、最後週がはじまるまで完成しなかった。
 その霊的な会話は、ほとんどすべての参加者が、実際にその場に参加し、実際に耳を傾けた、忍耐のうちに過ごした時間であり、さらには、その霊的な会話は、教会の一部の声ではなく、まだ十分ではないものの、すべての人を平等に招き入れた小共同体でなされた。
 シノドス的教会とは、どこに進むのかあらかじめ計画を定めることが難しい教会である。
 シノドス的教会とは、忍耐を必要として、じっくりと時間をかける手間を惜しまない教会である。
 シノドス的教会とは、それを構成するすべての人が平等に発言し識別に参加する、一つのキリストの体としての教会である。
 その意味で、今回のシノドスは何かを決める会議ではなく、聖霊による導きを共同識別するすべを身につけるシノドスであった。何かが決まったり決まらなかったりすることに一喜一憂せず、このプロセスを具体的に生きることの重要性を理解したい。
 シノドス第一会期は、最終週に「神の民への手紙」を採択し、今回のシノドスに参加した一同の思いを教会全体へ伝えた。その後、様々な意見が噴出したため、最終文書のドラフトは何度も書き直され、最終案は10月28日土曜日の午後に初めて提示され、そのまま段落ごとの採決に入り、三分の二以上の賛成のもとで採択された。来年10月の第二会期の作業文書となる。

 

今後について:

 今回の第一会期のはじめに、来年2024年10月の第二会期の参加者は、第一会期と同じ参加者であることが告知された。
 また会期中最終週には、参加していたすべての司教協議会会長がシノドス事務局に招集され、来年に向けた道筋について意見交換を行ったが、何ら具体的な決定はなかった。
 その後、現時点では、シノドス事務局から来年に向けた準備についての指示は全くない。

提案:

 第一会期の実りを分かち合い、第二会期に向けて準備する中でシノドスの精神を広めるために、来年度末(2025年3月)までのシノドス特別(ad hoc)委員会の設置を提案する。

  • メンバーは、アジア大陸シノドスに参加した日本の代表、西村桃子さん、辻明美さん、高山徹神父、東京教区シノドス担当者の小西神父、そして菊地功。
  • 目的は、シノドス第一会期の実りである最終文書の内容についての啓発を行い、シノドスの精神を広める中で、第二回期に向けての全国的な意識の高揚を図る。
  • 基本的に会議はオンラインで行い、セミナーなどもオンラインで行う予定。
  • シノドス第一会期最終文書の翻訳を急ぎ、小冊子として出版する

以 上

 

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