教皇フランシスコ 自発教令の形式による使徒的書簡 「コンペテンチアス・クアスダム・デチェルネレ」 『教会法典』と『東方教会法典』のいくつかの条文の改訂

教皇フランシスコ 自発教令の形式による使徒的書簡 「コンペテンチアス・クアスダム・デチェルネレ」 『教会法典』と『東方教会法典』のいくつかの条文の改訂  2つの教会法典によって規定され、普遍教会の規律の一致を保つことを目 […]

教皇フランシスコ
自発教令の形式による使徒的書簡
「コンペテンチアス・クアスダム・デチェルネレ」
『教会法典』と『東方教会法典』のいくつかの条文の改訂



 2つの教会法典によって規定され、普遍教会の規律の一致を保つことを目的とする一定の諸権限を地方教会及び教会組織の行政権に配分することは、教会における交わりというダイナミズムによく適合し、また「近接性の善さ」(bonum proximitatis)を実現するためにも寄与する。健全な非中央集権化は、教会の位階的あり方を一切損なうことなく、交わりのダイナミズムを強化するものである。

 以上を踏まえ、教会の文化及び両法典それぞれの法的考え方を慎重に吟味した結果、いくつか特定の領域に関して従来有効であった諸規則を改訂し、それぞれの領域に固有の権限を分配することが適当であると考えた。こうすることによりまず、団体性の感覚及び司教の司牧的責任の感覚——ラテン教会又は東方諸教会の教区司教としてのそれであれ、司教協議会又はそれに類する東方諸教会の位階的組織において集団的に行使するそれであれ——を醸成することを目指している。これは上級上長たちの団体性と司牧的責任の感覚についても同様である。さらにまた合理性、有効性及び有用性の諸原理を推進することをも目指している。

 これらの規則の変更により、教会の普遍性が多元的であり、多くの人の参加によって実現されることが明らかになる。実にこの普遍性は、一致に関してはローマ教皇の奉仕職がその保証となって、様々な違いを画一化することなく受け入れることができるのである。同時に、当地の権威者らとその統治を必要とする人及び事例との間の近接性も相まって、彼らの統治による司牧活動はより迅速に効果を生むようになる。

 以上すべてを考慮し、私は以下の通り決定する。

第1条
 諸教区共立神学校の設立及びその固有の規則に関する『教会法典』第237条第2項において、「認可」に代えて「認証」の語を使用することとし、法文を以下の通り改訂する。

[(以下『教会法典』の新条文のみ記載)]
第237条   (2)諸教区共立神学校は、その設立及び規則について、あらかじめ使徒座の認証なくしては設立してはならない。かつ、司教協議会が管轄する全地域のための神学校については、司教協議会の認証も必要である。全地域のためでない神学校については、関係司教の認証が必要である。

第2条
 司教協議会により制定される司祭養成に関する要綱についての『教会法典』第242条第1項において、「認可」に代えて「認証」の語を使用することとし、法文を以下の通り改訂する。

第242条  (1)各国は、教会の最高権威者によって発せられた規定を考慮したうえで、その国の司祭養成に関する要綱を有しなければならない。その要綱は司教協議会によって制定され、聖座によって認証されなければならない。要綱は常に新しい状況に適応されていかなければならないが、その際、聖座の新たな認証を必要とする。要綱のなかに、神学校で施される養成のための主要な原則及び各地方若しくは各管区の司牧的要請に合った一般的な規範が定められなければならない。

第3条
 聖職者の入籍の制度に関する『教会法典』第265条の条文には、使徒座よりその権限を受けた聖職者の公的会をも聖職者を入籍させる組織として付け加えて、『東方教会法典』第357条第1項の規定とより一層調和させる。そこで『教会法典』の当該条文は以下の通り改訂する。

第265条  聖職者はすべて、部分教会若しくは属人区、あるいは権限を有する奉献生活の会、使徒的生活の会、又は使徒座より権限を受けた聖職者の公的会に入籍しなければならない。したがって、無所属のあるいは放浪の聖職者は絶対に認められない。

第4条
 おとめの身分及び彼女らの連合する権利に関する『教会法典』第604条に以下の項を付加する。

第604条  (3)自己の教区におけるおとめの身分の連合の承認と設立の権限は教区司教にある。同連合が全国にわたる場合にはその権限は司教協議会にある。

第5条
 重大な事由がある場合に終生誓願宣立者に対して与えられる禁域法免除のゆるしに関する『教会法典』第686条第1項及び『東方教会法典』第489条第2項では、免除の期限を5年に延期し、また5年を超えて期間を延長すること又は5年を超えるゆるしの付与の権限は聖座か教区司教に留保される。そこで法文を以下の通り改訂する。

第686条  (1)総長は、その顧問会の同意を得て、重大な事由がある場合には、終生誓願宣立者に対して、禁域法免除のゆるしを与えることができる。しかしその期間は5年を超えることはできない。また、聖職者については、居住すべき土地の地区裁治権者の同意を事前に得たうえでなければならない。ただし、このゆるしの期間の延長、又は5年を超える許可は聖座にのみ留保される。また、教区法による会については教区司教に留保される。

第6条
 重大な事由に基づき会を去ることを願い出る有期誓願宣立者に関する『教会法典』第688条第2項並びに『東方教会法典』第496条第1項、第2項及び第546条第2項は、そのゆるしを与える権限を顧問会の同意を得た総長に付与する。このことは『教会法典』においては聖座法による会についても教区法による会についても、また自治隠世修道院についても当てはまることであり、『東方教会法典』では自治隠世修道院についても免属修道会についても他の修道会についても当てはまる。
そこで、『東方教会法典』第496条第2項は削除され、他の条の法文は以下の通り改訂される。

第688条   (2)有期誓願の期間中に、重大な事由に基づいて会を去ることを願い出る者には、総長がその顧問会の同意のもとにそのゆるしを与えることができる。第615条所定の自治隠世修道院においては、そのゆるしが有効であるために、その者の属する修道院所在地の司教によって認証されなければならない。

第7条
 『教会法典』第699条第2項及び第700条並びに『東方教会法典』第499条、第501条第2項及び第552条第1項の規定は、次のように変更される。すなわち、有期又は終生誓願を立てた会員を重大な事由ゆえに会から除名する決定は、顧問会の同意を得た総長により発出される当該の決定が当事者に通知された時点から発効する。ただし当事者たる修道者の訴願の権利は擁護されなければならない。従って、法文は以下の通り改訂される。

第699条  (2)第615条所定の自治隠世修道院においては、誓願を立てた者の除名の決定を行うのは、顧問会の同意を得た上級上長の権限に属する。

第700条  誓願者に対して発出された除名の決定は、当事者に通知された時点をもって発効する。しかしこの決定が効力をもつためには、決定通知を受領してから10日以内であれば、除名される修道者は権限ある権威者に訴願できる権利のあることが明示されていなければならない。この訴願は執行停止の効力を有する。

【2023年4月2日付教皇フランシスコ自発教令「Expedit ut iura」により再改訂】
第700条  誓願者に対して発出された除名の決定は、当事者に通知された時点をもって発効する。しかしこの決定が効力をもつためには、決定通知を受領してから30日以内に、除名される者が、第1734条第1項に規定されている請求なしに、権限ある権威者に訴願できる権利が明示されていなければならない。この訴願は執行停止の効力を有する。

第8条
 司教協議会が自己の領域のために発行する信仰教育書に関する『教会法典』第755条第2項において、「許可」に代えて「認証」の語を使用することとし、法文を以下の通り改訂する。

第775条  (2)有益と思える場合、あらかじめ使徒座の認証を得て、自己の領域のため信仰教育書が発行されるよう配慮することは司教協議会の責務である。

第9条
 ミサ義務の削減に関する『教会法典』第1308条及び『東方教会法典』第1052条は、その権限に変更を加え、法文を以下の通り改訂する。

第1308条  (1)正当かつ必要な事由によってのみなされるべきミサ義務の削減は、教区司教又は、聖職者の会である「奉献生活の会」及び「使徒的生活の会」の総長の権限に留保される。
(2)教区司教は、ミサの目的のためにのみ存する遺産によるミサについて、収入の減少により、かつその事由が存続する間、教区における適法な、かつ現行のミサ奉納金を基準として、これを削減する権限を有する。ただし、この削減は、ミサ奉納金の増加をはかるべき義務を有し、かつその増加をはかり得る者が存しない場合にのみ限られる。

(3)教区司教は、教会の基金が担っているミサ義務又はミサ遺産について、収入がその基金固有の目的遂行に不足をきたすにいたった場合には、ミサ義務又はミサ遺産を削減する権限を有する。

(4)聖職者の会である「奉献生活の会」及び「使徒的生活の会」の総長は、第2項及び第3項所定の権限を有する。

第10条
 信心上の目的及び信心上の財団に係る義務の削減に関する『教会法典』第1310条及び『東方教会法典』第1054条は、その権限に変更を加え、法文を以下の通り改訂する。

第1310条 (1)裁治権者は、信心上の目的のための信者の意思の削減、緩和、変更を、正当かつ必要な事由によってのみ行うことができる。その際、裁治権者は利害関係者及び自己の経済問題評議会の意見を徴したうえで、贈与者の意思を可能な限り良い方法で順守することが求められる。

(2)その他の場合については、使徒座に訴願しなければならない。

 この自発教令の形式による使徒的書簡によって決定された事柄すべてが、いかなる反対の規定にもかかわらず、かつそれがたとえ特別な言及に値するものであっても、有効であり効果を持つものとなるよう命じる。同時に、この自発教令が「オッセルバトーレ・ロマーノ」紙を通して公布され、2022年2月15日から施行されること、その後公式な官報である『使徒座官報』に記載されるよう命じる。

ローマ、聖ペトロの傍らにて、教皇在位第9年、2022年2月11日、ルルドの聖母の記念日に

教皇フランシスコ

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