教皇書簡「国際会議『シノドスのための小教区司祭』を受けての三つの提案」

「国際会議『シノドスのための小教区司祭』を受けての三つの提案」 親愛なる兄弟の司祭の皆さん、  国際会議「シノドスのための小教区司祭」と、参加された皆さんとの対話によって、わたしは世界中の小教区司祭のために祈る機会を得ま […]

「国際会議『シノドスのための小教区司祭』を受けての三つの提案」



親愛なる兄弟の司祭の皆さん、

 国際会議「シノドスのための小教区司祭」と、参加された皆さんとの対話によって、わたしは世界中の小教区司祭のために祈る機会を得ます。皆さん全員に、大きな愛情を込めて、以下のことばを送りたいと思います。

 当たり前のことで、ほとんど平凡に聞こえるかもしれませんが、だからといって、それが本心でなくなるわけではありません。つまり、教会は、皆さんの献身と司牧奉仕なしには、存続しえないのです。ですから、何よりも先に、皆さんが日々、あらゆる土地に福音の種をまき(マルコ4・1−25参照)、惜しみなく働いてくださっていることに感謝とお礼を申し上げたいと思います。
 
 この分かち合いの日々で経験したように、皆さんが奉仕職を担う小教区は実に多様で、わたしがブエノスアイレスで個人的に知っている大都市郊外にあるものから、巨大な州ほどの大きさに人口がまばらな地域にあるものまで存在します。また、ヨーロッパの多くの国々の町の中心部で、古代のバシリカ教会が減少し高齢化した共同体を抱えるという小教区から、大木の枝の下、小鳥のさえずりと小さな子どもたちの声が混ざり合ってミサが行われる小教区まであります。

 小教区司祭はこのことを十分わかっていて、それは、彼らが神の民の生活の内側から、その喜びと苦難、リソースとニーズをよく知っているのです。だからこそ、シノドス的教会には小教区司祭が必要なのです。小教区司祭がいなければ、わたしたちはどのようにともに歩むかを学ぶことはできず、「神が第3千年期の教会に期待する道」(教皇フランシスコ「世界代表司教会議設立50周年記念式典における演説」[2015年10月17日])である、シノダリティの道を歩み出せません。

 小教区共同体が、福音をのべ伝えるという一つの使命において、すべての受洗者が分かち合うことによって際立つものでなければ、わたしたちは決して宣教するシノドス的教会になることはできません。もし小教区がシノドス的でも宣教的でもなければ、「教会」ではありません。世界代表司教会議第16回通常総会第1会期の「まとめ」報告書は、この点に関し極めて明確です。小教区は、その構造や小教区生活の組織から始まって、自らは、「社会の中で、家庭の中で、職場生活の中で実践する宣教のために奉仕することを第一義とし、内部事情や組織的関心にのみ焦点を当てることはない」ものであると考えるよう求められています(8. l)。洗礼を受けた人々が宣教する弟子として出発し、自らのあかしを通して、主が行う不思議なわざを分かち合うために喜びに満ちて戻ってくる場所へと、小教区共同体が発展することがますます必要になっています(ルカ10・17参照)。

 司牧者としてわたしたちは、この歩みにおいて、自らが仕える共同体に同伴すると同時に、祈り、識別、使徒としての熱意をもって、自らの奉仕職が宣教するシノドス的教会のニーズにふさわしいものとなるよう献身していくことが求められているのです。こうした課題は、教皇、司教団、ローマ教皇庁に課せられたものであると同時に、小教区司祭である皆さんの前に課せられたものでもあります。わたしたちを召し出し、祝別した主は、今日、わたしたちが霊の声に耳を傾け、霊が指し示す方向に進むよう求めています。一つ、確かなことは、主は決してわたしたちを見捨てないということです。その歩みの中で、わたしたちが行う奉仕職を疲弊させるものから救い出す方法を、そして、神のことばを告げ知らせてパンを裂く共同体が集うという、そのもっとも確かな核心を再発見する方法を見出すでしょう。

 そこで、皆さんは小教区司祭として、宣教するシノドス的教会を築く人となるようにとの主の呼びかけを受け止め、この目標を達成するために熱意を注いでください。そのために、皆さんの司牧者としての生き方や活動を鼓舞するのに役立つ三つの提案をしたいと思います。

1.聖霊が神の民の中にまかれたさまざまなたまものに対して、これまで以上に奉仕するために、皆さんの固有の奉仕職のカリスマを発揮することをまずお願いします。「多様な形で信徒に与えられている、目立ったカリスマも控えめなカリスマも、信仰の感覚によって見出す」(第二バチカン公会議『司祭の役務と生活に関する教令』9項)ことが緊急に必要です。それは、人間のあらゆる状況や文脈を福音化するために不可欠なものです。そうすることで、多くの隠された宝が浮かび上がり、福音化という困難な働きの中で孤独を感じることが少なくなると確信しています。皆さんは、他者を支配するのではなく、むしろ、男女を問わず、他者の中から偉大で貴重な可能性を引き出す、真の父となる喜びを経験するでしょう。

2.心をこめて、次のことを提案します。つまり、皆さんが共同識別の技術を学び、この目的ために、「霊における会話」という方法を用いることです。それは、シノドスの旅や今回のシノドス総会の議事そのものにおいて非常に有用であることが証明されたものです。小教区評議会のような交わりのための組織だけでなく、他の多くの分野においても、そこから多くの良い実りが得られると確信しています。「まとめ」報告書が明らかにしているように、識別はシノドス的教会の司牧活動における重要要素です。「教会生活を照らすために、識別の実践は、司牧領域で、文脈に適した方法で、有益な形で実施することができます。そうすることで、共同体に存在するカリスマをより明確に認識し、任務や奉仕職を賢明にゆだねることができるようになります。単なる活動計画を超えて、わたしたちは霊に照らされた司牧の道を計画することができるようになるのです」(2. l)。

3.最後に、皆さんが行うすべてのことが、皆さん司祭同士の中で、また皆さんの司教とともに、分かち合いと友愛の精神に基づいてなされるようお願いしたいと思います。これは、昨年2月、ここローマで開催され、この分野に携わる、18カ国ほどからの代表者、800人以上の司教、司祭、信徒、奉献生活の男女が参加した、「司祭生涯養成のための国際会議」(テーマ:「あなたに与えられている神のたまものを、再び燃えたたせる」[二テモテ1・6])で力強く浮かび上がってきたことです。わたしたちがまず子であり兄弟でなければ、本物の父にはなれません。そして、何よりもまず、わたしたち自身同士がそうした現実を生きなければ、わたしたちに託された共同体における交わりと参加をはぐくむことはできません。司牧者としての責任につねに追われる中で、こうした専心は負担が大きく、時間の無駄とさえ思えるかもしれないことは十分承知しています。しかし、その反対も真実です。そうすることによって初めて、わたしたちは信頼され、他の人たちがすでに集めたものがわたしたちの活動によって散逸してしまうことがなくなるのです。

 小教区司祭を必要としているのは、宣教するシノドス的教会だけではなく、現在継続中の、2021−2024シノドス「ともに歩む教会のため―交わり、参加、そして宣教」の歩みも、そうです。来る10月に開催される、世界代表司教会議第16回通常総会第2会期を、わたしたちは楽しみにしています。その準備のために、皆さんの声を聞く必要があります。

 このために、国際会議「シノドスのための小教区司祭」に参加した皆さんには、皆さん同士の間でも、また帰国後、小教区司祭の仲間の中でも、シノダリティの宣教者となっていただきたいと思います。小教区司祭の奉仕職の刷新について、シノドス的で宣教的な考え方をもって皆さんが考察し、『討議要綱』の準備のために、シノドス事務局が皆さんのユニークな意見を集められるようにしてくださることをお願いします。今回の国際会議の目的は、小教区司祭の声に耳を傾けることでしたが、それは今日で終わるわけにはいきません。わたしたちは皆さんの声を聞き続けます。

 親愛なる兄弟の皆さん、わたし自身も参加した今回の歩みにおいて、わたしは皆さんの側にいます。心から皆さんを祝福し、皆さんの親しみと祈りの支えを感じたいと思います。聖母マリア、道の聖母に自らをゆだねましょう。マリアはわたしたちに道を示し、道、真理、いのちであるイエスへと導いてくださいます。


ローマ
サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラノ大聖堂にて
2024年5月2日
フランシスコ

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