第16回世界代表司教会議(シノドス)総会・第二会期 参加報告 2024年11月7日 菊地功 会議名: 第16回世界代表司教会議総会・第二会期 日時: 2024年9月30日から10月27日 場所: パウロ六世謁見ホール ( […]
参加報告
2024年11月7日
菊地功
会議名: | 第16回世界代表司教会議総会・第二会期 | |
日時: | 2024年9月30日から10月27日 | |
場所: | パウロ六世謁見ホール (9月30日から最終日まで) | |
宿舎(菊地): 宿舎(西村・弘田): |
Domus Romana Istituto Maria Santissima Bambina |
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日本からの参加者: | 菊地功(司教団選出代表)、 西村桃子(教皇任命議長代理)、 弘田鎮枝(教皇任命専門家) |
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テーマ: | 「ともに歩む教会のため―交わり、参加、そして宣教」 | |
参加者: | 投票権を持つ「メンバー」: 368名 枢機卿・司教272名。また53名が女性。 |
概要:
会議に先立って、9月30日と10月1日の二日間、パウロ六世ホールで黙想会に参加した。
霊的指導は、朝の祈りとミサの前にSr. Maria Grazia Angelini O.S.B.が、そして午前中に二回の講話がFr. Timothy Radcliffe, O.P.によって行われ、午後にはグループに分かれて「霊における会話」が実践された。
10月2日の朝は教皇司式の開会ミサが、聖ペトロ広場で行われた。
朝の開会ミサに引き続いて行われた最初のセッションで教皇は挨拶をされ、その中で、シノドスの歩みはすべての人が洗礼によって与えられたカリスマを生かしながら、共同責任のうちに共に聖霊の導きを識別をすることだと強調されながらも、「それは「今度はわれわれの番だ」と叫びながら、各々が他の立場に取って代わろうとすることを意味するものではない」と指摘され、「皆が異なる役務やカリスマを活かしながら、シンフォニックな一体性をもって、神のいつくしみのために共に奉仕することが求められている」と強調された。
第一会期で取り上げられた様々な具体的な課題(女性の叙階など)については、さらに検討しなくてはならない課題だと教皇ご自身が判断され、2024年の2月に10の検討部会が設置され、2025年6月までに結論を出すことが求められている。
なおシノドス参加者の強い求めに応じて、冒頭でそれぞれの部会の報告が行われ、さらに会期中に、部会との対話集会も行われた。
シノドスの会議においては、討議要綱にしたがって、シノドス的な教会が宣教する教会であるためにはどのような取り組みが必要なのかを識別することに集中した。
究極的には教会の体質改革、すなわち教会がシノドス的な教会であり続けることを目的として、そのための土台・基礎を築き上げる必要があることが、参加者の共通理解である。
第二会期では、討議要項の各項目、すなわち「基礎的理解」、「関係」、「道筋」、「場」のそれぞれについて、以下のような方法でグループに分かれて識別を進め、それに基づいて最終文書をまとめるためのグループワークがおこなわれた。
このグループワークは、36の言語別のテーブルで行われ、事前に訓練された司会者(ファシリテーター)が進行にあたった。前回と異なり、霊における会話において今回は、取り扱っている討議要項のセクションに関し重要であり賛成する点を分かち合い、次に議論を深める必要がある点を分かち合うという二度のラウンドを第一ラウンドとし、それに基づいて第二ラウンドを行って、書記担当者が要点レポートをまとめた。
その上で、各テーブルの報告者が一堂に会し、言語別にいくつかのグループに分かれ、それぞれのテーブルからの要点レポートの分かち合いを行った。その結果をさらにその報告者グループの代表が集まり、事務局長や神学顧問などと話し合って、全体のポイントをいくつかのテーマに絞り込みまとめの一覧を作成。
その一覧を、翌日の全体会で投票にかけ、優先順位をつけた上で、そのテーマについての全体会での自由討議が行われた
その後、あらためて各ワーキンググループに戻り、霊における会話の第三ラウンドを行ってレポートを作成し、事務局に送付。そのまとめを最終文書にまとめあげた。なおアジアからは、インドのフィリッポネリ枢機卿が教皇任命で、またマレーシアのクラレンス師が選挙で、最終文書起草委員会のメンバーに加わった。
その他、期間中には、神学顧問によって、いくつかのテーマに分かれた神学フォーラムが二度開催され、さらにはエキュメニカルな晩の祈りなども行われた。
アジアからの参加者は、広報も含め様々な立場の総勢で50名ほどいたが、10月18日金曜日の夕刻に、イエズス会本部のアルペホールで夕食会を開催し、二人の新しい枢機卿の誕生を祝い、親交を深めた。
最終週にあたる10月21日には、朝のミサの後、最終文書のドラフトが配布され、この日の午後と翌日にかけて、それに対する修正動議の検討と提案が、各ワーキンググループで行われた。
それらに基づいて手直しが行われた最終文書案は、10月26日土曜日の朝に提示され、その日の午後4時半から、文書採択のための段落ごとの投票が行われた。
最終的に文書は採択され、教皇の判断が求められた。以下、教皇の最後のコメントを、バチカンニュースから引用する。
「教皇はシノドスの作業の完了にあたり、すべての関係者に挨拶をおくられた。
その中で教皇は、このたびのシノドスで採択された最終文書は、今の時代に「共に歩む教会」になるためにはどうしたらよいかをよりよく理解するため、神の民の声に努めて耳を傾けてきた、少なくとも3年にわたる年月の実りである、と話された。
教皇はこの文書がもたらす様々な賜物を示しつつ、特にその一つは自身の教皇職にとっての賜物である、と強調。
「兄弟姉妹たちを力づけてやりなさい…わたしの羊を飼いなさい」と絶えず話しかけるイエスに応えるために、教皇も傾聴の実践を必要とし、またそれを欲している、と語られた。
この戦争の時代にあって、わたしたちは多様性の共存を実際に形にすることを学びながら、平和を証ししなければならない、と述べた教皇は、こうした意味も踏まえ、このシノドス後の「使徒的勧告」を発表する意図はないことを明らかにされた。
最終文書の中には、様々な大陸、多様な状況における教会の宣教の指針となり得る、非常に具体的な示唆がすでにあると教皇は指摘。
それゆえに、この文書をすぐに皆に公開し、神の聖なる民に手渡すことを通して、これまで行ってきたシノドスの歩みの価値を心に留めたいと思う、と話された。
同文書に挙げられている教会生活のいくつかの側面や、10の「研究グループ」に提案を行うように託しているテーマをめぐり、教皇は、教会全体に関わる選択に到達するためにはまだ時間が必要であり、今後も司教らの意見に耳を傾けたい、との考えを示された。
一方で教皇は、これは決定を無期限に先延ばしにするという意味ではなく、教皇自身にも、傾聴し、招集し、識別・決断・判断するというシノドス的スタイルの実践が求められると同時に、こうした過程には、時間と沈黙と祈りが必要とされるからである、と述べられた。
この最終文書は神の民全体への賜物である、と強調する教皇は、当然すべての人がこの文書を読むわけではないが、地方教会において文書にある内容を人々の手の届くものにするのは特に皆さんの役割であると話された。
同時に教皇は、経験に基づく証しを伴わない文書は価値を失ってしまう、とも述べ、文書が実質を失わないように注意を喚起された。
暴力、貧困、無関心などの特徴を持つ世界のあらゆる地域から訪れたわたしたちは、失望させることのない希望をもって、それぞれの心に授けられた神の愛のもとに一致し、平和をただ夢見るだけでなく、そのために全力を尽くさなければならない、と教皇は呼びかけ、平和は傾聴と、対話、和解によって実現するもの、と励まされた。
これらすべては、調和を作り出し、調和そのものであられる聖霊の賜物、とシノドス全体を振り返った教皇は、会議場を出た後もこの調和を保ち、復活されたキリストの息吹に助けられ、いただいた賜物を分かち合うことができるようにと祈られた」
今後について:
シノドス最終文書の翻訳を待って、次のステップを開始するために、現在設置されているシノドス特別チームの活動を、さらに2025年6月末まで延長し、6月の司教総会には何らかの具体的な提案を行いたい。
なお最終文書にもあるように、各司教協議会には、シノドス性を具体化し、その進捗を評価するための部署の設置が求められているので、これについても検討したい。
以上