自発教令
『愛の奉仕について』
Benedictus PP. XVI
Litterae Apostolicae Motu Proprio datae
Intima Ecclesiae natura de caritate ministranda
序文
「教会の本質はその三つの務めによって表されます。すなわち、神のことばを告げ知らせること(宣教〔ケーリュグマ〕とあかし〔マルテュリア〕)、秘跡を祝うこと(典礼〔レイトゥールギア〕)、そして愛の奉仕を行うこと(奉仕〔ディアコニア〕)です。これらの三つの務めは、それぞれが互いの前提となり、また互いに切り離すことができないものです」(教皇ベネディクト十六世回勅『神は愛(2005年12月25日)』25[Deus caritas est])。
愛の奉仕も教会の使命をなす次元であり、欠くことのできない教会の本質の表現です(同参照)。すべての信者は、キリストがわたしたちに残した新しいおきて(ヨハネ15・12参照)を果たすために個人として努力する権利と義務をもちます。そのために信者は、現代の人々に物質的な援助だけでなく、魂を力づけ、いやします(教皇ベネディクト十六世回勅『神は愛』28参照)。教会は、愛の奉仕(ディアコニア)を行うに際して、小さな地域共同体から部分教会、さらに普遍教会に至るまでの、共同体的な次元での活動も求められます。そのため、「共同体に対して秩序ある奉仕を行うことができるように、愛が組織を必要とすることもあります」(同20)。この組織は制度的な表現を通じても明確にされます。
わたしはこの愛の〈奉仕〉(ディアコニア)に関して、回勅『神は愛』の中で、こう指摘しました。「司教によって統治される教会の構造に従い、使徒の後継者である司教は〔……〕」、愛の奉仕を「部分教会において実行するうえで、第一の責任を担います」(同32)。わたしはまたこう述べました。「教会法は、司教の奉仕職について定めた条文で、司教の活動の固有の領域として、はっきりと愛のわざに言及してはいません」(同)。「『司教の司牧的奉仕職指針』は、愛のわざが、全教会と教区司教に課された責務であることを、具体的に詳しく述べています」(同)。とはいえ、教会における愛の奉仕の本質的な重要性と、その司教の役務との構成的な関係を教会法的なレベルで適切に表現するとともに、愛のわざがとくに司牧者の明確な支持をもって組織的なしかたで行われている場合、教会の中でそうした奉仕を行う法的な側面を明らかにするために、前述の規範上の空白を埋める必要が依然として残っていました。
そのため、このような観点から、わたしは本自発教令により、一般的なしかたで、教会が愛の奉仕を組織的に行う形態を秩序づけるために役立つ、有機的な規範的枠組みを提供することを意図します。愛の奉仕は、教会と司教の奉仕職の奉仕的な生活と密接に結びついているためです。
しかしながら、次のことに留意することも重要です。「もし人に対する愛を目に見える形で示していなければ、どれだけ活動を実践しても不十分なものとなります。そしてこの愛は、キリストとの出会いによってはぐくまれます」(同34)。そのため、愛の活動において、多くのカトリック団体は、単に資金を集めて分配するだけでなく、困窮する人々につねに特別な注意を払い、キリストの福音の論理に従って、分かち合い、尊敬、愛の教育を促進することを通じて貴重な教育的機能をキリスト教共同体の中で果たさなければなりません。実際、教会の奉仕活動は、あらゆるレベルにおいて、共通の福祉組織と変わらないものとなり、その一種にすぎないものとなる危険を避けなければなりません(同31参照)。
さまざまな場所で信者によって推進されている愛の分野における組織的な取り組みはきわめて多岐に渡り、適切な管理を必要とします。とくに小教区、教区、国、国際的レベルで〈カリタス〉の活動が発展してきました。〈カリタス〉は、その惜しみない一貫した信仰のあかしと、困窮した人々の要求に具体的にこたえることによって、世界中の信者と他の多くの人々の評価と信頼を正当に得ている、教会の位階制度が運営する組織です。教会の権威者によって公的に支持された、この広範な活動と並んで、さまざまな場所で、信者の自由な取り組みから生まれた他の多くの活動が存在します。これらの信者はさまざまな形で、困窮した人々に対する愛を具体的なしかたで示そうと努めています。起源と法的形式を異にするこれらの活動は、同じ必要にこたえようとする同じ感性と望みを表しています。
教会は組織として、困窮した個人または人々への関心を洗礼を受けた者が自由に表明する組織的な取り組みと無縁だということはできません。それゆえ、司牧者はこうした取り組みを教会の使命へのすべての人の参加の表れとしてつねに受け止めなければなりません。司牧者は、これらの取り組みがそれぞれの性格に従って洗礼を受けた者の自由の表明として享受する特徴と統治の自律を尊重しなければなりません。
これらに加えて、教会権威者は自らの意向に従って特定の事業を推進してきました。彼らはこうした事業を通じて、信者の寄付を、具体的な必要により効果的にこたえることを可能にする適切な法的・運営的形態に従って組織的に分配しています。
とはいえ、こうした活動が聖職位階によって推進されたり、司牧者の権威によって明確に指示される程度に応じて、その運営が教会の教えの要求と信者の意向に従って行われ、行政当局が定める法規範をも尊重することが保証されなければなりません。このような必要性から、教会法において、教会の規律の一般的な基準に基づくいくつかの本質的な規定を定めることが必要となりました。こうした規定は、こうした活動分野において、関係するさまざまな当事者が負う法的責任を明らかにするとともに、とくに、この点に関して教区司教が負う権威と調整の位置づけを明確にします。ただし、こうした規定は、聖職位階自身から生まれたものであれ、信者の直接の取り組みから生まれ、地域の司牧者の認可と奨励を受けているものであれ、この分野で活動を行うカトリック系の組織の多様性を包括するために十分に広範なものでなければなりませんでした。このことに関する規定を定めることが必要とされた一方で、各団体の法的自律を尊重しながら、正義の要請と司牧者が信者に対して担う責任を考慮しなければなりませんでした。
規定
したがって、教皇庁開発援助促進評議会(Cor Unum)議長の枢機卿の提案に従い、教皇庁法文評議会の意見を聴取したうえで、わたしは次のように定め、公布する。
第1条
(1)信者は、とくに貧しい人々や苦しむ人々のために、特定の愛の奉仕の活動を行う会や組織に参加する権利、またはこれを設立する権利を有する。こうした組織が教会の司牧者の愛の奉仕と結びついている場合、および/または、信者の寄付をこのために用いることを意図する場合には、その規約を教会権威者に提出して認可を求め、また、以下の規定を遵守しなければならない。
(2)同様に、信者は、教会法1303条および東方教会法1047条の規定に従い、具体的な愛のわざに資金を提供するための基金を設立する権利も有する。この種の基金が1項に示された特徴を満たす場合、個別的状況に当てはめながら(congrua congruis referendo)、本法の規定も守らなければならない。
(3)本自発教令で言及される団体的な愛の活動は、教会法を遵守することに加えて、自らの活動においてカトリックの原則に従うことが求められる。また、いかなる形であれこの原則の遵守を制限しうるような任務を受け入れてはならない。
(4)奉献生活の会および使徒的生活の会が愛を目的として設立する組織および基金は、本規定を遵守しなければならない。また、教会法312条2項および東方教会法575条2項の規定にも従わなければならない。
第2条
(1)前条で言及されたおのおのの愛の組織の規約には、教会法95条1項に基づく制度的役割と統治構造に加えて、活動の指導原理と目的、資金の管理方法、運営者の紹介、管轄権を有する教会権威者に提出すべき報告と情報も示されなければならない。
(2)愛の組織は、教会法300条が示すとおり、管轄権を有する権威者の書面による同意がある場合にのみ「カトリック」という名称を用いることができる。
(3)信者が愛の目的で設立した組織は、教会法324条2項および317条に従い、規約の規定に基づいて任命される聖職者の補佐を有することができる。
(4)同時に、教会権威者は、教会法223条2項および東方教会法26条2項に従い、信者の権利の行使を規制する務めを念頭に置き、示された目的に対する効果と有効性を損なうような愛の奉仕の活動の増加を避けなければならない。
第3条
(1)前条を施行するうえで、それぞれのレベルにおける管轄権を有する権威者は、教会法312条および東方教会法575条が指示する者を指す。
(2)組織がさまざまな教区内で活動していても国のレベルで認可されていない場合、管轄権を有する権威者は、当該組織の本部所在地の教区司教を指す。いかなる場合にも、組織は活動する他の教区の司教に報告を行い、教区内にあるさまざまな慈善団体の活動に関する指示を尊重する義務を負う。
第4条
(1)教区司教(教会法134条3項および東方教会法987条参照)は、司牧者、指導者、この奉仕の第一の責任者として、ゆだねられた部分教会における愛の奉仕のために司牧的配慮を行う。
(2)教区司教は、自らの部分教会における隣人への奉仕の活動やわざを奨励また支持し、教会法215条および222条、東方教会法25条および18条が示すとおり、キリスト教的生活の表現また教会の使命への参加としての愛の活動への熱意を信者のうちに喚起する。
(3)それぞれの教区司教は、これらの組織の活動と運営においてつねに教会の普遍法および局地法の規定が遵守され、これらの特定の目的のために寄付や遺贈を行った信者の意向が尊重されるように監督する務めを負う(教会法1300条および東方教会法1044条参照)。
第5条
教区司教は、教会が愛の奉仕を行う権利を保証し、自らの監督下に置かれた信者および組織がこの分野における正当な市民法を遵守するように配慮する。
第6条
教会法394条1項および東方教会法203条1項が規定するとおり、教区司教は、聖職位階自身が設立したものであれ、信者の発意によるものであれ、それぞれの規約に基づく自律を損なうことなく、自らが管轄する地域内のさまざまな愛の奉仕活動を調整する務めを負う。とくに教区司教はこれらの活動が福音的精神を生き生きと保つように配慮する。
第7条
(1)第1条1項が言及する団体は、この活動のカトリック的性格を共有するか、少なくとも尊重する者の中から自らの運営者を選任しなければならない。
(2)愛の奉仕における福音的なあかしを保証するために、教区司教は、教会の愛の使徒職のために活動する人々が、適切な専門的能力に加えて、キリスト教的生活の模範を示し、愛の実践を伴う信仰を示す心の養成をあかしするように配慮する。そのために、教区司教は、さまざまな組織の指導者が認めた特定の〈カリキュラム〉と適切な霊的生活のための助けを含む、神学的また司牧的養成も提供しなければならない。
第8条
活動の数や種類のための必要に応じて、教区司教は、ゆだねられた教会の中に、自らの名において愛の奉仕を指導し調整するための事務局を設置することができる。
第9条
(1)司教は、管轄地域の各小教区に、小教区の〈カリタス〉事業ないし同様の事業を設立することが勧められる。こうした事業は、分かち合いと真の愛のわざの精神を教育するための地域社会全体における教育活動も推進できるためである。適切な場合には、同じ地域のさまざまな小教区が合同でこうした事業を設立することができる。
(2)司教および小教区主任司祭は、小教区内で、小教区の全体的な調整の下に、他の愛の活動が〈カリタス〉と共存して発展できることを保証する務めを負う。その際、第2条4項の規定を考慮しなければならない。
(3)教区司教および各小教区主任司祭は、信者がこの分野において誤謬や誤解に陥ることを避ける義務を負う。それゆえ、教区司教および各小教区主任司祭は、愛の目的を主張しながら教会の教えに反する選択または方法を提示する活動が小教区ないし教区組織を通じて公表されることを阻止しなければならない。
第10条
(1)司教は、管轄下にある愛の組織の教会財産について監督する務めを負う。
(2)教区司教は、教会法1265条および1266条、東方教会法1014条および1015条に従って行われた募金の収益が、募金の目的のために用いられることを保証する務めを負う(教会法1267条、東方教会法1016条参照)。
(3)とくに教区司教は、管轄下にある愛の組織が、教会の教えに反する目的を追求する団体ないし機関から資金提供を受けることを避けなければならない。同様に、教区司教は、信者につまずきを与えないために、愛の組織が、その目的ないし手段において教会の教えに合致しない活動のために寄付を受け取ることを避けなければならない。
(4)とくに司教は、管轄下にある活動の運営がキリスト教的節度をあかしするように配慮する。そのため、教区司教は、給与および運営経費が、正義の要求と必要な専門的能力に応じながら、自らの教区事務局の同様の経費と適切なしかたでつり合いがとれたものとなるように監督する。
(5)第3条1項で言及された教会権威者が監督義務を行使できるようにするため、第1条1項に述べられた団体は、管轄権を有する裁治権者が指示する方法により、同裁治権者に対し年次財務報告書を提出しなければならない。
第11条
教区司教は、必要な場合、特定の愛の組織の活動が教会の教えの要求に従っていないことを自教区の信者に公表し、「カトリック」という名称の使用を禁じ、個人の責任が生じる場合には必要な措置を講じなければならない。
第12条
(1)教区司教は、教会法1274条3項および東方教会法1021条3項の規定に倣い、司牧下にある愛の奉仕の組織の国内および国際的な活動、とくにもっとも貧しい教会地域との協力を推進しなければならない。
(2)愛のわざに対する司牧的配慮を、時と場所の状況に応じて、法の規定に従いながら、隣接する複数の司教が複数の教会のために共同で行うことができる。国際的な領域にかかわる場合には、事前に聖座の管轄権を有する省に相談しなければならない。さらに、国内レベルの愛の活動については、司教が司教協議会の関連部署に相談するのが適切である。
第13条
地域の教会権威者は、教会法の規定と個々の組織の固有の性格を尊重しながら、管轄権を有する領域内でのカトリック組織の活動を認可する完全な権利をつねに有する。司牧者は、自教区内で行われる活動が教会の規律に従っているかどうか監督し、規律に従っていない場合には、活動を禁じるか、場合により必要な措置を講じる義務を負う。
第14条
司教は、適切な場合には、愛の奉仕の活動が、それぞれの固有の特性を損なうことなしに、他の教会ないし教会的共同体と協力することを推進すべきである。
第15条
(1)教皇庁開発援助促進評議会(Cor Unum)は、本規定の適用を推進し、あらゆるレベルに適用されるように監督する任務を有する。ただし、教皇ヨハネ・パウロ二世使徒憲章『パストル・ボヌス(1988年6月28日)』(Pastor Bonus)133条に規定された、信徒団体に関する教皇庁信徒評議会の管轄権、教皇庁国務省外務局の管轄権、またローマ教皇庁の他の省や機関の一般的な管轄権は留保される。とくに教皇庁開発援助促進評議会(Cor Unum)は、国際的なレベルにおけるカトリック機関の愛の奉仕が、つねに各部分教会との交わりのうちに行われるように配慮する。
(2)教皇庁開発援助促進評議会(Cor Unum)は、国際的レベルにおける愛の奉仕の組織の教会法的設立も管轄する。したがって同評議会は規律上の任務と法に従った推進の任務を負う。
自発教令(Motu Proprio)の形で本使徒的書簡によって定められたすべてのことは、特別な言及に値する場合であれ、完全に遵守すべきものとして命じる。対立する規定類がある場合には本規定が優先する。本書簡は『オッセルヴァトーレ・ロマーノ』において公表され、2012年12月10日に発効することを定める。
ローマ、聖ペトロのかたわらで、教皇在位第8年、2012年11月11日
