ローマ教皇庁ならびに 世にある教会に対するその職務についての 使徒憲章『プレディカテ・エバンジェリウム(福音をのべ伝えなさい)』

 

◆本訳は「憲章」の内容理解のために作成された、参考訳です。

教皇フランシスコ
ローマ教皇庁ならびに
世にある教会に対するその職務についての
使徒憲章

『プレディカテ・エバンジェリウム』

目次

第1章 序文

第2章 ローマ教皇庁の職務の原則と基準

第3章 一般規範(第1−43条)

第4章 国務省(第44−52条)

第5章 省


福音宣教省(第53−68条)
教理省(第69−78条)
支援援助省(第79−81条)
東方教会省(第82−87条)
典礼秘跡省(第88−97条)
列聖省(第98−102条)
司教省(第103−112条)
聖職者省(第113−120条)
奉献・使徒的生活会省(第121−127条)
いのち・信徒・家庭省(第128−141条)
キリスト教一致推進省(第142−146条)
諸宗教対話省(第147−152条)
文化教育省(第153−162条)
総合的人間開発省(第163−174条)
法制省(第175−182条)
広報省(第183−188条)

第6章 法務機関

法務機関(第189条)
内赦院(第190−193条)
使徒座署名院最高裁判所(最高裁判所)(第194−199条)
ローマ控訴院(控訴院)(第200−204条)

第7章 財務機関

財務評議会(第205−211条)
財務事務局(第212−218条)
使徒座管財局(第219−221条)
監査室(第222−224条)
機密保持委員会(第225−226条)
投資監査院(第227条)

第8章 部局

教皇公邸管理部(第228−230条)
教皇儀典室(第231−234条)
教皇空位期間管理(第235−237条)

第9章 弁護士(第238−240条)

第10章 聖座関連機関(第241−249条)

第11章 移行規範(第250条)

第1章 序文

1 「福音をのべ伝えなさい(Praedicate Evangelium)」(マルコ16・15、マタイ10・7−8参照)、これは主イエスが弟子たちに託した任務である。この命令は、「現代社会において、……教会が個々の人間に、そして人類全体に提供できる第一の奉仕」(1) をなす。神の子、主キリストの福音を告げ知らせ、それによってすべての民が信仰に耳を傾けるためである(ローマ1・1−5、ガラテヤ3・5参照)。教会がこの命令を果たすのは、何よりも、自らが無償で受けたあわれみを、ことばと行いであかしするときである。わたしたちの主であり師である方は、その弟子たちの足を洗い、わたしたちも同じことをすれば祝福されると語り、その模範を示した(ヨハネ13・15−17参照)。このようにして、「福音を宣教する共同体は、行いと態度によって他者の日常生活の中に入っていき、身近な者となり、必要とあらば自分をむなしくしてへりくだり、人間の生活を受け入れ、人々のうちに苦しむキリストのからだに触れる」(2)。そうすることによって神の民は、福音を告げ知らせるよう求め、病者や困窮者など、もっとも弱い兄弟姉妹をケアするようにと促す、主の命令を果たすのである。

教会の宣教者としての回心

2 教会の「宣教者としての回心」(3)は、キリストの愛の使命そのもののイメージに従って教会を刷新することを意図している。それゆえ、キリストの弟子たちは「世の光」(マタイ5・14)となるよう招かれており、こうして教会は、世の光であるキリストの救いの愛を反映するのである(ヨハネ8・12参照)。教会自身、信仰という超自然的なたまもの、すなわち「時間の中を歩むわたしたちに方向を示す」光を人々にもたらし、福音の奉仕に身を置くとき、より一層輝きを増す。それは、この光が「大きくなって現在を照らすためである。そして、ついにはそれが星となって、人類が特別に光を必要としているこの現代に、わたしたちの歩むべき道の行く手を照らしてくれるためである」(4)

3 今回のローマ教皇庁改革もまた、教会の宣教者としての本性という文脈の中に位置づけられる。それは、16世紀にシスト五世の使徒憲章『インメンサ・エテルニ・デイ』(1588年)をもって、また20世紀にはピオ十世の使徒憲章『サピエンティ・コンシリオ』(1908年)をもってそうであったように、改革への切望がもっとも切実に感じられた時期であった。第二バチカン公会議が開催されたのち、パウロ六世は、公会議教父たちが表明した願いに明示的に言及し(5)、使徒憲章『レジミニ・エクレシエ・ウニベルセ』(1967年)をもって、教皇庁改革を命じ、実行に移した。その後、ヨハネ・パウロ二世は、教会の全組織の中で交わりをつねに促進するため、使徒憲章『パストル・ボヌス』(1988年)を公布した。

 今回の新しい使徒憲章は、近年のこれら二つの改革を継続し、また、教皇と普遍教会に対して、多くの教皇庁メンバーが長年にわたって提供してきた寛大で有能な奉仕に感謝しつつ、今日の教皇庁の職務の実践を、とくに現在、教会が経験している福音化の歩みに、よりよく調和させるよう意図するものである。

交わりの神秘としての教会

4 ローマ教皇庁の改革には、教会の神秘のもう一つの側面を考慮に入れ、評価することが重要である。つまり、教会において、宣教は交わりと密接に結びついており、宣教の目的はまさに、「人となられた神の子が世界の歴史に入ったという新しい交わりを万人に知らせ、実践させる」(6)ことである、ということができる。

 このような交わりの生活は、教会にシノダリティという顔を与える。すなわち、相互に耳を傾け合う教会であり、「その中で一人ひとりにとって学ぶことがある。信徒、司教団、ローマの司教、それぞれがお互いに耳を傾け、また皆が『真理の霊』(ヨハネ14・17)である聖霊に耳を傾ける。それは、聖霊が『諸教会に告げる』(黙示録2・7)ことを認識するためである」(7)。したがって、こうした教会のシノダリティは、「神の民が主キリストに向かう歴史の旅路を『ともに歩む』こと」(8)だと理解される。それは教会の宣教に関わるものであり、宣教のための、それ自体が宣教的である交わりに関わるものである。

教会の刷新は、そしてその中における教皇庁の刷新も、こうした根本的な相互性を反映しないわけにはいかない。それは、主の地上の生活の間に使徒たちが主とともに生きた宣教の交わりの体験に(マルコ3・14参照)、また聖霊降臨の後、聖霊の働きのもとにエルサレムの最初の共同体が生きた宣教の交わりの体験に(使徒言行録2・42参照)、信者の共同体が可能な限り近づくことができるためである。

教皇の職務と司教団の職務

5 人々に仕えるために、霊によって与えられたこうしたたまものの中でも、使徒たちのたまものは際立っており、主は、使徒たちを選び、固定した「集団」として形づくり、その中から選ばれたペトロを頭に据えたのである(9)。主はその使徒たちに、世の終わりまで続く使命を託した。このために、使徒たちは自分たちの手で後継者を定め(10)、それは、ペトロと他の使徒たちが、主のみ旨に従い、ただ一つの使徒団を構成したように、また今日、教会においても、位階的に組織された社会が確立するという形を取っている(11)。ペトロの後継者であるローマ教皇と、使徒たちの後継者である司教らは、唯一の司教の組織体として結ばれており、司教たちは秘跡的奉献によって、また司教団の頭と、その成員、すなわち司教団自体との位階的な交わりによって、そこに属している(12)

6 第二バチカン公会議は次のように教えている。「団体的一致は、個々の司教と、諸部分教会ならびに普遍教会との相互関係の中にも現れる。ローマ教皇は、ペトロの後継者として、司教たちの一致と信者の群れの一致との恒久的かつ目に見える根源であり、基礎である。個々の司教は、各自の部分教会における一致の目に見える根源であり、基礎である。それらの部分教会は普遍教会の像に似せて形づくられ、それらのうちに、またそれらから、唯一単一のカトリック教会が存在する。したがって、個々の司教は自分の教会を代表し、すべての司教は教皇とともに平和と愛と一致のきずなによって結ばれて、全教会を代表する」(13)

7 神の摂理のおかげで、時の流れの中で、使徒とその後継者たちによってさまざまな教会がさまざまな場所に設立され、それらはさまざまな集団、とくに古代の総主教教会(patriarchal Churches)に統合されてきたことを強調することは重要である。ラテン教会における司教協議会の出現は、信者の交わり(communio fidelium)に基づく、教会の交わり(communio Ecclesiarum)に奉仕する、司教の交わり(communio Episcoporum)が自らを表現した、もっとも新しい形態の一つである。それゆえ、司教にゆだねられた特定の教会の司牧者としての司教特有の権能を損なうことなく、司教協議会は、その地域や大陸の集合体を含め、関連する東方諸教会の位階的組織とともに、現在、信仰の一致と交わりの保証者であるローマ教皇とともに、さまざまな地域における教会的交わりを表現し、それに奉仕するもっとも重要な方法の一つとなっている(14)


ローマ教皇庁の職務

8 ローマ教皇庁は教皇に奉仕するものであり、その教皇は、ペトロの後継者として、司教たちの一致と信者の群れの一致との恒久的かつ目に見える根源であり、基礎である(15)。この結びつきによって、ローマ教皇庁の活動は、司教団や個々の司教と、また、各国司教協議会およびその地域や大陸の集合体、さらに東方諸教会の位階的組織とも有機的に関連している。これらはすべて、司教たちの間に存在する、親密で実りある交わりの表現として、大きな司牧的利益をもたらす。ローマ教皇庁は教皇と司教の間に立つのではなく、それぞれの性質に適した形態にしたがって、両者への奉仕に徹するのである。

9 現行の使徒憲章は、各国司教協議会、さらに、それに対応する東方諸教会の位階的組織の潜在能力を高めることに関心を向けている(16)。しかもそれは、それらを教皇と各司教の間の仲介機関とするのではなく、むしろそれらに完全に奉仕するものとして、である。現行の規定において、それらに与えられている権能は、司教の奉仕職の団体性的側面を表現し、間接的に、教会的な交わり(17)を強化することを目的としている。それは、それぞれの国、または所与の地域の信者のために、特定の司牧的役割を共同で行使することを具体的に示すことによってなされるのである(18)


すべてのキリスト者は宣教する弟子

10 教皇、各司教とその他の叙階された奉仕者は、教会における唯一の福音宣教者なわけではない。彼らは「世界に対する教会の救いの全使命を自分だけで引き受けるためにキリストから立てられたのではない……ことを知っている」(19)。すべてのキリスト者は洗礼によって、「イエス・キリストにおいて神の愛に出会ったかぎり」(20)、宣教する弟子である。このことは、教皇庁の改革において見過ごすことはできない。したがって、教皇庁は、統治と責任の役割においてもまた、男女信徒の参加を規定すべきである。彼らの存在と参加は不可欠であり、なぜなら、彼らは教会全体の善のために協力しているからである(21)。信徒たちの家庭生活、社会への関与、世で働く神のわざを識別する助けとなる信仰によって、彼らは多くのことを提供できる。とりわけ、家庭を発展させ、いのちと被造物の価値を尊重し、福音が世俗的現実のためのパン種となり、時のしるしを識別することを通して、提供するのである。


この改革の意義

11 ローマ教皇庁の改革は、もしそれが、「善いサマリア人のたとえ話」で表現されている「この公会議の霊性のパラダイム」(22)を自分のものにするという内面の改革の成果であるならば、真の、効果的なものとなるだろう。このたとえ話で、その人は近寄ってきて、道端で半殺しにあった見ず知らずの異邦人の隣人となったのである。この霊性は、わたしたちがまだ貧しく罪びとであったときに、わたしたちを先に愛した神の愛に、そのもっとも深い源泉を有している。この霊性によって、わたしたちの義務は、キリストにならって兄弟姉妹、とくにもっとも助けを必要としている人に仕えることであり、キリストのみ顔はすべての人間、とりわけ何らかの苦しみにある男女の顔の中に見出されるということが思い起こされるのである(マタイ25・40参照)。

12 したがって、「改革はそれ自体が目的なのではなく、より説得力をもってキリストをあかしするため、より効果的に福音化を促進するため、より実りあるエキュメニカルな精神を促進するため、より建設的な対話をすべての人と奨励するための手段であることを明確にすべきである。コンクラーベに先立って行われた全体会議で、大多数の枢機卿によって積極的に支持されたこの改革は、ローマ教皇庁が普遍教会と各部分教会への奉仕のため、ペトロの後継者がその司牧の奉仕職を行使するのを助ける中での、教皇庁自体のアイデンティティをさらに明確にするものでなければならない。これによって、信仰の一致と神の民の交わりが強められ、世界における教会の使命は促進される。確かに、こうした目標を達成することは容易ではない。すなわち、時間と決意、そして何よりも全員の協力が必要である。そのためには、まず第一に、教会の真の導き手である聖霊に自らをゆだね、祈りの中で真の識別のたまものを願い求めなければならない」(23)


第2章 ローマ教皇庁の職務の原理と基準

 主であり牧者(ヨハネ21・15以降参照)であるキリストから教皇が受けた、司牧的使命を効果的に実行し、ペトロの奉仕職と全司教の奉仕職との関係を維持し育成するために、教皇は、「普遍教会の上に最高、完全、直接の権能を行使するにあたり、ローマ教皇庁の各省を用いる。したがって、これら各省は教皇の名と権威により、諸教会の善と聖なる牧者たちへの奉仕のためにその任務を果たす」(24)。このようにして教皇庁は、「ペトロの後継者とともに生きた神の家を統治する」(25)教皇と司教たちに奉仕するのである。教皇庁は、使徒たちの後継者としての責任を十分に尊重しながら、各部分教会において司教たちにこの奉仕を実行する。

1 教皇の使命に対する職務 ローマ教皇庁は一義的に、ペトロの後継者に奉仕する道具であり、「司教たちの一致と信者の群れの一致との恒久的かつ目に見える根源であり、基礎である」(26)
教皇の使命を手助けし、さらに、司教たち、各部分教会、各国司教協議会とその地域や大陸の集合体、東方諸教会の位階的組織、教会内のその他の組織や共同体を支援する。

2 交わりにおける共同責任 今回の改革は、「健全な『脱中央集権』」(27)の精神に基づき、「教師として」、また司牧者としての「司教独自の任務」(28)を遂行する中で、司教たちが精通し(29) 、なおかつ、教義、法規、交わりという教会の一致に影響を与えない諸課題を解決する権威を、司教の権能にゆだねることを提案し、教会という具体的な「交わりの神秘(mysterium communionis)」の実りであり表現である共同責任の精神をつねに抱きながら行動するよう提案する(30)

3 司教たちの使命に対する職務 こうした司教たちとの協力関係の中で、教皇庁が司教たちに提供する職務は、第一に、福音と教会に対する司教たちの奉仕職を認め、支援することである。それは、時宜にかなった助言を司教たちに与え、彼らが推進する司牧上の回心を奨励し、彼らの福音化の取り組み、司牧上の貧しい人の優先的選択、未成年者と社会的弱者の保護、人類家族、一致と平和のために資するあらゆる取り組みに連帯する支援を示すことによって行われる。要するに、教皇庁は、諸民族がキリストにあって豊かないのちを得ることができるようにするための彼らの努力を支援しているのである。教皇庁はまた、友愛の精神をもって、ペトロの後継者の司教たちとの、親密で実りある交わりを見守り、支え、育てるという働きを実行していくことによっても、司教たちの使命と「コムニオ(教会)」に対する職務を提供するのである。

4 部分教会とその司教協議会、および東方諸教会の位階的組織への支援 全世界のカトリック教会は、多数の諸民族、言語、文化を懐に抱いており、そのようにして、福音化に関して成功した体験の膨大な蓄積を活用することができる。教会は世界中に存在することを踏まえ、ローマ教皇庁は、「コムニオ(教会)」全体の益のために奉仕する中で、個々の部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織によってもたらされる福音化のための最善の取り組みや創造的提案、さらに具体的な問題や課題に対する彼らの対応策といった、こうした知識や成果の蓄積を駆使し、活用する立場に置かれている。このような教会の経験を、その世界規模の中で収集することによって、教皇庁は、各部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織を支援するものとしてそれらを共有できる。このような交流や対話のために、使徒座公式訪問(アド・リミナ)と、それに関する司教たちの報告書は重要な資料となる。

5 ローマ教皇庁の代理的性格 教皇庁の各組織は、ローマ教皇から与えられた権能によって、その固有の使命を実行し、教皇の名において、その首位権に基づく職務(munus)の行使において代理権をもって活動する。このため、信者の成員は誰であっても、当該の省または部局の統治権限や、特定の能力および機能に応じて、その省または部局を統括することができる。

6 霊性 ローマ教皇庁は、教会のすべての成員とキリスト・イエスとの関係をはぐくみ、神の計画、聖霊が教会に授けるたまもの、そして洗礼を受けたすべて人の聖性への招きに奉仕する中で寛大に、熱意をもって働くことによってはじめて、教会と主との交わりに貢献する。したがって、教皇庁の各組織において、神秘としての教会への奉仕が、共同での祈り、霊的刷新、定期的な感謝の祭儀の共同開催によって示される、神との契約の体験と結びついた状態であることが必要である。同様に、イエス・キリストとの出会いに基づき、教皇庁の成員は、神の民全体に奉仕する、宣教する弟子であることを喜びをもって自覚しながら、その働きを遂行していく。

7 人間的誠実さと専門的能力 キリストのみ顔は、そのカリスマをもって教会の使命のためにそのカリスマをささげる、弟子たちのさまざまな顔の中に映し出される。その結果、教皇庁で働く人々は、司教、司祭、助祭、奉献生活会および使徒的生活会の会員、さらに男女信徒の中から、霊的生活に優れ、確かな司牧経験を有し、簡素な生活をし、貧しい人を愛し、交わりと奉仕の精神をもち、託された事象に能力を有し、時のしるしを識別できる人が選ばれる。こうした理由から、職員の選抜と訓練、業務の組織化、各人の人格的・職能的成長には、注意と配慮が払われなければならない。

8 各省間の協力 交わりと参加は、教皇庁とその各機関の内部活動の特徴でなければならない。ローマ教皇庁は、普遍教会の司牧者を中心とした生活の交わりと運営上の一致にますます奉仕しなければならない。したがって、各省の上長たちは教皇と定期的に、個人的に、あるいはグループで面談する。こうした定期的面談によって、各省の活動計画とその実施について話し合う上で、透明性と協調した活動が促進される。

9 各省間および省内会議 省間会議は、教皇庁内の交わりと協力を表し、複数の省にかかわる課題が議論される。このような会議の招集責任は、教皇の秘書局機能を果たす国務省にある。交わりと協力はまた、個々の省のメンバーによる適切な定期会議(総会、評議会、会議)によっても示される。このような精神はまた、個別的であれ、また使徒座公式訪問(アド・リミナ)の際のような集団であれ、司教たちと各省との面談にも反映されなければならない。

10 カトリック(普遍)性の表出 教会のカトリック(普遍)性は、枢機卿、司教、その他の職員の選出の中で表出されなければならない。ローマ教皇庁に奉仕するよう招かれた人々はすべて、司教たち、および奉献生活会・使徒的生活会の上長たちの側で、ローマ教皇との交わりと連帯のしるしとなる。彼らはローマ教皇庁に異なる文化圏からの有能な職員を提供できるように備える。

11 省の削減 省の数を減らすことはずっと課題となっており、目的が非常に類似している、あるいは補完関係にある省を統合し、重複する能力をもつことを回避し、業務の効率性を改善することで、それらの機能を合理化する。

12 パウロ六世が望んだ、改革の最大の目的は、教皇庁と教会全体の中で、神の愛の火種が、「公会議で定められた原則、教え、決意を」燃え立たせることである。「その結果、慈愛によって燃え盛り、教会と世界に、公会議の究極の目的である、精神、行動、態度、道徳、信念、希望と喜びの刷新を真にもたらす」(31)のである。


第3章 一般規範

ローマ教皇庁の概念

第1条  ローマ教皇庁は、ローマ教皇がその最高権威の司牧職と世における普遍的使命を遂行するため、恒常的に支援する機関である。教皇庁は、ペトロの後継者である教皇と、使徒たちの後継者である司教に、それぞれの特定の性質に応じた仕方で奉仕する。福音的精神をもって自らの役割を遂行し、善と、普遍教会の交わり、一致、建設の奉仕ために働き、また教会がその使命を果たすよう招かれている世のさまざまな状況に対して注意を払っている。

教皇庁業務の司牧的性格

第2条 神の民のすべての成員は、それぞれの状況に応じて教会の宣教に参加するので、ローマ教皇庁で働く人々は、その専門技能と能力、司牧経験に見合った形で協力する。

第3条 ローマ教皇庁およびその他の聖座関連機関で働く人々は、普遍教会に対するそれぞれの責任において、ローマ教皇と司教たちの使命を支援する司牧的働きを遂行する。この働きは、最高水準の協力意識、共同責任、他者の能力に対する敬意をもって動機づけられ、遂行されなければならない。

第4条 教皇庁業務の司牧的性格は、普遍教会と部分教会の間に存在する、相互の内面性との関係に根ざす、特有の霊性によって養われ、豊かにされる。

第5条 ローマ教皇庁の司牧的業務特有の性質により、すべての人は、教会と社会において模範的な生き方を送るようにという呼びかけを認識する必要がある。これにより、すべての人は宣教する弟子となって、献身の模範を示し、敬虔・来訪者の歓迎・奉仕の精神を表すという、困難な任務を引き受けることとなる。

第6条 ローマ教皇庁で提供される業務と並行して、聖職者は、可能なときには、職場での業務に支障のない限りにおいて、魂のケアにも従事すべきである。奉献生活会と使徒的生活会の会員や、信徒は、それぞれの能力と機会に応じて、自分自身の共同体や他の教会現実による司牧の活動に協力すべきである。

ローマ教皇庁の運営原理

第7条 (1)ローマ教皇庁の各部署が適切に機能するためには、献身と徳に加えて、そこで働く人々が必要な資質を有していることが不可欠である。このためには、専門性、すなわち、与えられた案件を適切に処理する専門知識と能力が必要である。このことは、経験や勉強、自己研鑽を通じて、ときとともに身につき、発展していくものではあるが、その個人は最初から、十分な準備ができている必要がある。

(2)ローマ教皇庁の諸部署は、その性質と能力に応じてその職員に、継続養成を提供しなければならない。

第8条 (1)ローマ教皇庁の各部署の活動は、時とともに生じる状況や、普遍教会と各部分教会の必要に応じて、つねに合理性と機能性の基準に触発されなければならない。

(2)機能性とは、最善でもっとも効率的な働きを提供することを目的としており、そのためには、ローマ教皇庁で働くすべての人は、必要とされる業務を実行するよう、つねに準備ができている必要がある。

第9条 (1)各省、機関、部局は、その特定の業務を遂行するにあたり、それが受けもつ使命のために、相互協力の精神のもと、各自その能力にしたがい、諸活動の相互依存、相互関連は続けながら、他の省、機関、部局との協調を通じて、その業務を実施することが求められる。

(2)こうした協力はまた、各人の勤勉さが規律ある効率的な運営の構築を促進するような形で、各省、機関、部局内においても、その業務を遂行する個人によって促進される。こうしたやり方は、文化的、言語的違い、国による違いを超えるものである。

(3)第1項ならびに第2項の規定はとくに、「国務省」に適用されるものであり、それは、「国務省」が教皇の事務局だからである。

第10条 各省、機関、部局は、その特定の業務を遂行するにあたり、通常会儀や全体会議といった会議など、本『使徒憲章』に規定された特定の手段を、定期的かつ適切に使用する。

第11条 ローマ教皇庁の人事の運用やその他関連事項に関するすべてのことは、「使徒座労務室(Labour Office of the Apostolic See)」の管轄となる。その任務は、教会の社会教説の原理にしたがい、職員の権利を保護、促進することである。


ローマ教皇庁の組織

第12条 (1)ローマ教皇庁は、国務省、各省、その他機関で構成され、そのすべては互いに、法的に同等である。

(2)「教皇庁諸機関」とは、第1項で言及されているローマ教皇庁の種々の構成機関を指すと理解される。

(3)ローマ教皇庁の「部局」は、「教皇公邸管理部(Prefecture of the Papal Household)」「教皇儀典室(Office for the Liturgical Celebrations of the Supreme Pontiff)」「教皇空位期間管理(Camerlengo of the Holy Roman Church)」である。

第13条 (1)教皇庁諸機関は、「長官(Prefect)」またはその同等者、適切な人数の「メンバー(member)」、「長官」を補佐する1人または複数の「次官(Secretary)」、それに加えて、従属する、1人または複数の「次官補(Undersecretary)」を擁する。これら全員は、さまざまな職員や顧問に支えられている。

(2)その特定の性質、また特別法にしたがって、ある教皇庁機関は、第1項で規定されたもの以外の組織を有することができる。

第14条 (1)教皇庁諸機関は、その上長であり、その機関の名において行動する長官またはその同等者によって統治される。

(2)次官は、1人または複数の次官補の協力を得て、その省の業務を遂行し、職員を指揮し、長官を補佐する。

(3)職員は、可能な限り世界のさまざまな地域から集められ、それによって教皇庁は、教会の普遍性を反映する。職員は、聖職者、奉献生活会および使徒的生活会の会員、信徒の中から選抜される。その経験によって傑出し、適切な学位、徳、賢明さによって裏付けられた専門性が証明される人物である。彼らは、客観的で透明性のある基準により選抜され、十分な年数の司牧経験を有していなければならない。

(4)候補者の適性は、適切な方法で検証されなければならない。

(5)職員としての聖職者を選抜する場合、可能な限り、教区/東方教会教区司祭と奉献生活会および使徒的生活会司祭との間で、適切なバランスをとるよう配慮すべきである。

第15条 教皇庁諸機関のメンバーは、ローマ内外に居住する枢機卿の中から任命され、さらに、関連する特定の事案について専門性を有する司教、とくに教区/東方教会教区の司教が加えられる。その省の性格にしたがって、司祭、助祭、奉献生活会・使徒的生活会会員、信徒もまた、任命されたメンバーとなりうる。

第16条 教皇庁諸機関ならびに部局の顧問(consultors)は、専門性、実証済みの能力、賢明さで際立つ信者の中から任命される。彼らを特定し、選抜する際、可能な限り、普遍性の基準を尊重しなければならない。

第17条 (1)長官または相当する人、「メンバー」、次官、次官補および各部局の上長または相当する人、専門家といった上級職員、さらに顧問は、ローマ教皇によって5年任期で任命される。

(2)長官と次官は、『ローマ教皇庁一般規則(General Regulations of the Roman Curia)』に定められた年齢に達した時点で、ローマ教皇に辞表を提出しなければならず、教皇はあらゆる要件を熟慮したのち、この件に関する決定を行う。

(3)80歳に達した「メンバー」は、その任を解かれる。ただし、教皇庁のある機関に役職を有する人もまた、もはやその役職ではなくなるとき、「メンバー」としての任を解かれる。

(4)原則として、5年経過したのち、教皇庁諸機関や部局で働いた聖職者職員や奉献生活会および使徒的生活会会員は、自らの教区/東方教会教区、または所属する会に復帰し、その司牧活動を継続することとなる。ローマ教皇庁の上長らが適切であると判断した場合、その任期をもう5年、延長することができる。

第18条(1)使徒座空位の際、すべての教皇庁諸機関のすべての上長およびメンバーはその職を解かれる。この規定の例外は、「内赦院長(Major Penitentiary)」であり、その権能の範囲内で通常の業務を遂行し続け、本来であればローマ教皇に照会すべき事案をすべて、枢機卿団に照会する。もう一つの例外は、「支援援助者(Almoner of His Holiness)」であり、教皇在位期間中と同じ基準にしたがって援助活動を遂行し続け、新しいローマ教皇が選出されるまで枢機卿団に継続して仕える。

(2)使徒座空位の際、次官たちは、教皇庁諸機関の通常運営に当たり、通常業務のみを実施する。その選出後、3カ月以内に、彼らはローマ教皇によってその職が認証されなければならない。

(3)教皇儀典長(Master of Pontifical Liturgical Celebrations)は、使徒座空位と教皇選挙に関する法律によって規定される職務を引き受ける。

第19条 教皇庁諸機関および部局はそれぞれ独自の文書館を有し、そこに受領文書および送付文書の写しが、適切な基準にしたがい、手続きに則り、安全に整理された形で保管される。


教皇庁諸機関の権能と手順

第20条 教皇庁諸機関の権能は、通常、案件の内容に照らして決定される。しかし、他の理由によって権能が決定されることもありうる。

第21条 教皇庁諸機関は、それ固有の権能の領域にしたがって、以下の業務を行う。

  1. その本来の性質、あるいは法律により、使徒座に留保されている事項を取り扱うこと、
  2. ローマ教皇から委託された事項を取り扱うこと、
  3. 個々の教区/東方典礼教区司教、または司教協議会の諸団体(司教協議会または東方諸教会の位階的組織)の権能を超える課題を検討すること、
  4. 現代における重要課題を研究すること。それにより、教会の司牧活動は、各部分教会、各国司教協議会、地域や大陸の集合体、さらに東方諸教会の位階的組織が有する権能をつねに尊重し、十分に考慮しながら、より効率的に推進され、適切に調整されうる、
  5. 普遍教会の善のための率先した取り組みと提案を推進し、育成し、奨励すること、
  6. 信者たちが、その権利を行使して、使徒座に直接紹介する事項を評価し、必要に応じて決定すること。

第22条 ローマ教皇が別段の定めをしない限り、各省間および各省と国務省との間で、権能の衝突が起きた場合、使徒座署名院最高裁判所(Supreme Tribunal of the Apostolic Signatura)に付託されることとなる。

第23条 教皇庁諸機関は、普遍法とローマ教皇庁の特別法、ならびにその独自規則にしたがい、自らの権能の範囲内で諸事項を取り扱い、その際、教会の正義と善、とりわけ魂の救済に配慮し、つねに教会法上の公平性をもって、法を適用する。

第24条 教皇庁諸機関の上長、あるいはその代理である次官は、教皇によって定められた形式で教皇に面会し、定期的かつ頻繁に進行中の事項、活動、計画について報告する。

第25条 それぞれの省について別段の規定がない限り、当該の省の上長は、同省長官、次官、次官補、および長官の判断によって職員の全部または一部で構成される会議を以下の目的で、招集する責任がある。

  1. 具体的事項について検討し、即時の決定、あるいは「定例会議(ordinary session)」か「全体会議(plenary session)」または省間会議への付託、あるいはローマ教皇への上申によって、その解決策を特定するため、
  2. とくに研究が必要な事項について、顧問やその他専門家に照会するため、
  3. 当該の省の権能にしたがい、権限や法令の申請を審査するため。

第26条 (1)各省のメンバーは、定例会議と全体会議で集まる。

(2)通常の、また定期的な事項に関する定例会議については、ローマ在住の省のメンバーが招集されれば十分である。

(3)当該の省の全メンバーは全体会議に招集される。全体会議は、その省の『オルド・セルバンドゥス(Ordo servandus=守るべき規範)』が、より長期の期間を規定していない限り2年ごとに、つねにローマ教皇に通知されたのちに開催される。当該省の性格上、より重要な事項や課題が、全体会議にかけられる。全体会議はまた、必要に応じて招集され、一般原則に関する事項や、当該省の上長が同様の仕方で取り扱う必要があると考える事項についても取り扱う。

(4)会議の議事、とりわけ全メンバーの出席を要する全体会議の議事を計画する際には、同じ会場に物理的にいる必要があるかどうかは別にして、効果的な共同作業を可能にする十分な機密性と安全性を備えたビデオ会議やその他の通信手段の利用により、移動する必要性を限定するよう努めるべきである。

(5)次官は、投票権をもって、すべての会議に参加する。

第27条 (1)顧問とそれに同等の人は、託された事項を検討し、通常は書面でその意見を提出すべきである。

(2)必要であると判断され、また当該省の特定の性格にしたがって、顧問は、その特定の権能によって全員または一部が、特定の事項を団体性に基づく仕方で検討し、その意見を提出することが求められる可能性がある。

(3)個別の事案に関して、顧問に含まれないものの、取り扱う特定の事項について特別な能力と経験を有する人にも助言を求めるため招かれることがある。

第28条 (1)複数の省が関与する事項は、関連する省が合同で検討する。

(2)その事項が最初に照会された省の上長は、多様な見解を検討し、決定を下すため、自らの職権により、または関係する他の省の要請により、会合を招集する。

(3)当該事項が必要とする場合、その課題は、関係する各省による合同の全体会議に照会されなけれ ばならない。

(4)会議の議長は、会議を招集した省の上長、また次官のみが出席している場合は、その次官が務める。

(5)相互による頻繁な協議を必要とする事項を取り扱うために、必要と認められる場合、その事項を最初に取り扱い始めた、またはその事項を最初に照会された省の上長は、ローマ教皇の事前承認を受け、省横断の特別委員会を設置する。

第29条 (1)一般的な文書を作成する教皇庁機関は、それをローマ教皇に提出する前に、関係する他の教皇庁機関にその文書を送付し、改善のために考えられる意見、修正、提案を受け取る。その結果、異なる視点や評価を通じて、その文書の一貫した形での実施が達成できる。

(2)他の諸国と関連する事項およびその他の国際法上の主体に関連する事項に関する文書や声明は、国務省による事前の無障害証明(nihil obstat)を必要とする。

第30条 ローマ教皇によって特定の形で(in forma specifica)認可された、個別的かつ特定の場合を除き、教皇庁機関は、法的効力を有する法律または一般教令を発することはできず、また、現行の普遍法の規定から逸脱することもできない。

第31条 (1)ローマ教皇が事前に教皇庁機関の上長から通知されない限り、重大で特別なことは何も処理してはいけないというのが、拘束力のある規範である。

(2)重要事項に関する決定や決議は、ローマ教皇の承認を得なければならない。ただし、教皇庁諸機関に特別な権限が与えられている決定と、「ローマ控訴院(Tribunal of the Roman Rota)」および「使徒座署名院最高裁判所」が自らの権限の範囲内で下した判決は例外である。

(3)教皇庁諸機関に与えられた特別な権限について、長官またはそれと同等の人は、ローマ教皇とともに、ローマ教皇庁内におけるその効率性、活動力、実施状況や、普遍教会に対する適合性を定期的に検証し、評価することが義務付けられる。

第32条 (1)位階的訴願は、法律にしたがって、懸案となる事項に権限を有する教皇庁機関によって、受理、審査、決定がなされる。権能の決定に関して疑義がある場合には、「使徒座署名院最高裁判所」が問題を解決する。

(2)法的に処理すべき事項は、管轄する裁判所に送付される。

第33条 教皇庁諸機関は、それぞれの特定の権能に応じて、「シノドス(世界代表司教会議)」自体の特別法に定められていることに注意を払いながら、「シノドス事務局」の活動に協力する。「シノドス」は、教皇が定めた、あるいはこれから定める方法にしたがって、教会全体の益のため、重要な事項について、ローマ教皇と共同して働く。


教皇庁諸機関の上長会議

第34条 (1)教皇庁の業務の一貫性と透明性を高めるために、ローマ教皇の指示により、教皇庁各機関の上長は定期的に招集され、各機関の業務計画とその実施状況について協議する。それは、共有する業務を調整し、情報交換し、重要事項を検討し、意見や提案を出し、ローマ教皇に提出する決定を下すためである。

(2)その会議は、ローマ教皇の合意の上、国務省長官が招集し、調整する。

第35条 ローマ教皇が適切と判断した場合、教皇庁諸機関の上長会議ですでに討議されている、全体に関わる性格を有するより重要な事項についても、適切な法律にしたがって、「枢機卿会議(Consistory)」に集まった枢機卿によって取り扱うこともできる。


部分教会のために働くローマ教皇庁

第36条 (1)より重要な事項については、教皇庁諸機関は、各部分教会、各国司教協議会、それらの地域および大陸の集合体、さらに東方諸教会の位階的組織と協力しなければならない。

(2)それが必要となる事項の場合、全体に関わる性格の重要文書、または特別な仕方でいくつかの部分教会に関係する文書は、関係する各国司教協議会、それらの地域および大陸の集合体、さらに東方諸教会の位階的組織の意見を考慮して作成されるべきである。

(3)教皇庁諸機関は、各部分教会から提出された請願書を速やかに受理し、それらを注意深く、迅速に検討し、可能な限り速やかに適切な回答を提供しなければならない。

第37条 各部分教会に関する事項については、教皇庁諸機関は、当地においてその機能を果たしている教皇の使節と協議すべきであり、また、そこでなされた決定について、教皇の使節、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織に通知しなければならない。


使徒座公式訪問(アド・リミナ)

第38条 伝統にしたがい、また教会法の規定にしたがって、各部分教会の司教たちは、あらかじめ決められた時期に「使徒座公式訪問(アド・リミナ)」を行う。

第39条 この訪問は、各部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織の司教たちと、ローマの司教との関係において頂点をなすことから、教会生活の一致と交わりのために、とりわけ重要な意義をもっている。実際、教皇は、司教職にある兄弟たちを迎え入れるにあたり、彼らとともに、教会の善と司教の司牧的役割に関する事項について話し合い、信仰と愛のうちに彼らを認め、支える。こうすることで、位階的な交わりのきずなが強められ、教会のカトリック(普遍)性と司教団の一致が明確にされるのである。

第40条 (1)この訪問に参加するよう招かれた各部分教会の司教たちは、注意深く、熱心に準備をして、指定された期日までに、彼らに託されている教区/東方教会教区の状況について、その財政および財産状況の報告を含む、詳細な報告を使徒座に提出しなければならない。

(2)この報告書は、簡潔かつ明瞭であり、当該部分教会の実状を正確かつ具体的に記述したものでなければならない。それはまた、教皇庁諸機関から得られた支援についての評価も盛り込み、教皇庁との協力で達成される業務に関する期待を明確に述べていなければならない。

(3)議論を円滑にするため、各部分教会の司教たちは、詳細な報告書に、主要なテーマに関するまとめを添付すべきである。

第41条 この訪問は、主要な三つの場面、つまり使徒たちの主導者たちへの墓参、ローマ教皇との謁見、ローマ教皇庁の各省および各法務機関との協議に分かれている。

第42条 (1)長官たちまたはそれに相当する人と、各省、各法務機関の次官は、各部分教会、各国司教協議会、および東方諸教会の位階的組織の司教たちとの会合のために、彼らから受け取った報告書を注意深く検討し、熱心に準備すべきである。

(2)第1項で言及された司教たちとの面会において、長官たちまたはそれに相当する人と、各省、各法務機関の次官は、開かれた誠実な対話を通じて、共通の規律を遵守しながら、教会全体の善と発展に貢献するために、司教たちに助言、励まし、提案、適切な指示を与え、さらに司教たちから提案と指示を受け取り、ますます効果的な働きを提供すべきである。


規則

第43条 (1)手順の問題に関しては、現行の教会法典の規定を損なうことなく、第2章に概説されている原理と基準、および本『使徒憲章』に規定されている規範が、『ローマ教皇庁一般規則』、すなわち、ローマ教皇によって正式に承認された一連の共通規範の中で遵守すべきものである。それは、教皇庁および、明示的に規定されている場合には、聖座関連機関における業務遂行の秩序と方法を定めるものである。

(2)教皇庁の各機関と部局は、それぞれ独自の『オルド・セルバンドゥス』、つまりローマ教皇によって承認された特別な規範を有し、それにしたがって業務が遂行される。


第4章 国務省

第44条 「国務省(Secretariat of State)」は教皇の事務局として、ローマ教皇の至高の使命の遂行を緊密に補佐する。
第45条 (1)国務省は「国務省長官(Secretary of State)」が指揮する。

(2)国務省は、三つの部局によって構成される。「総務局(Section for General Affairs)」は、「局長(Substitute)」の指揮の下、「補佐官(Assessor)」の補佐を受ける。「外務局(Section for Relations with States and International Organizations)」は、「局長(Secretary)」の指揮の下、「次官補(Undersecretary)」に加え、「多国間分野担当次官補(Undersecretary for the multilateral sector)」の補佐を受ける。「外交官人事局(Section for Diplomatic Personnel of the Holy See)」は、教皇使節(Pontifical Representations)を担当する「局長(Secretary)」の指揮の下、次官補の補佐を受ける。


総務局

第46条 総務局は、ローマ教皇の日常業務を含む、迅速に処理すべき事項について、とくに責任を有する。具体的には、教皇庁諸機関や使徒座の他の機関が通常の権限外で扱う必要のある事柄を検討すること、また、各省、機関、部局がその自律性を損なうことなく、それらの間の調整を促進すること、である。総務局は、聖座に対する各国代表部にかかわるすべての事項について取り扱う。

第47条 総務局はまた、以下の責任も有する。

  1. ローマ教皇から委託された使徒憲章、教令書簡、使徒的書簡、書簡、その他文書を作成、送付すること、
  2. 聖座の法令および公文書を、公式官報『使徒座官報(アクタ・アポストリチェ・セディス)』に掲載するよう準備すること、
  3. ローマ教皇の行為と聖座の活動に関する公式発表に関し、「広報省(Dicastery for Communication)」に指示を与えること、
  4. 鉛封印と「漁師の指輪(Fisherman’s ring)」を管理すること。

第48条 以下も同様に、総務局の業務である。

  1. 教皇庁諸機関の各上長の定例会議を準備し、そこで決議されたことを履行すること、
  2. 教皇庁諸機関および部局、さらに聖座関連機関またはそれと関係する機関の長官またはそれに相当する人、メンバー、次官、次官補、顧問を含む、さらに外交官職員を含む、ローマ教皇によってなされる、または承認される任命に関して、適切な書類を準備すること、
  3. 教皇による栄誉授与に関する書類を準備すること、
  4. 世界中の教会生活に関する統計を収集、整理、公表すること。



外務局

第49条 外務局に具体的な業務は、各国の行政当局との対応に関する事項に対処することである。

以下の責任を有する。

  1. 聖座と各国およびその他の国際法上の主体との外交的・政治的関係を促進し、教会と市民社会の善を向上させるために共通の利害をもつ事項に対処し、さらに、政教条約およびその他の国際協定を通じて、関連する司教団諸団体によって検討された見解を考慮に入れること、
  2. 国際的な政府間組織や多国間の政府間会議において聖座を代表し、必要に応じて、ローマ教皇庁の関連する省および諸機関との連携を図ること、
  3. ローマ教皇庁のある省または機関が、国際問題または行政当局との関係に関する声明または文書を公表しようとする場合はつねに、その認可を与えること。

第50条 (1)特定の状況において、外務局は、ローマ教皇の委任により、ローマ教皇庁の当該省との協議の上、部分教会の設立、変更、および部分教会の統合に関するすべての事項を取り扱う。

(2)その他の場合、とりわ政教条約が効力を有する場合、外務局は、民間政府とともに対処する必要のある事項を取り扱う責任がある。

第51条 (1)外務局は、具体的な問題を取り扱う際、その独自の評議会の支援を受ける。

(2)特定の事項、または異なる大陸および特定の地理的地域に関する全体的な問題を取り扱うために、必要であればいつでも、外務局に常設委員会を設置することができる。


外交官人事局

第52条 (1)外交官人事局は、聖座の外交官として勤務する人々、とりわけその生活、労働条件および生涯養成に関する事項を取り扱う。その職務を遂行するために、局長は教皇使節たち(Papal Representations)を訪問し、その業務に関する会議を招集し、議長を務める。

(2)外交官人事局は、教皇庁の外交官候補者の選考と養成において、「教皇庁立外交官学院(Pontifical Ecclesiastical Academy)」の学長と協力し、退職した外交官との連絡を維持する。

(3)外交人事局は、総務部、外務局と密接に協力し、これら二つの局はまた、各自の特定の権能にしたがい、教皇使節に関わる諸事項を取り扱う。


第5章 省

福音宣教省

第53条 (1)「福音宣教省(Dicastery for Evangelization)」は福音化の任務のために働き、その結果として、諸民族の光であるキリストが、ことばと行いによって知られ、あかしされ、その神秘体である教会が建てられる。本省は、世界における福音化の基本的な諸問題と、新たな部分教会の設立、援助、支援について権限を有する。ただし、「東方教会省(Dicastery for the Eastern Churches)」の権限には影響を与えない。

(2)福音宣教省は、2部門から構成される。すなわち、その管轄権のある地域についての、「世界宣教部門(Section for Fundamental Questions regarding Evangelization in the World)」と「初期宣教部門(Section for the First Evangelization and New Particular Churches)」である。

第54条 福音宣教省はローマ教皇が直接統括する。二つの部門はそれぞれ、教皇の名の下、教皇の権限によって、「副長官(Pro-Prefect)」が指揮を執る。副長官は、第14条第2項にしたがって補佐を受ける。


◯世界宣教部門

第55条 (1)本部門の任務は、各部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織、奉献・使徒的生活会と協力して、福音化に関する基本的諸課題と効果的な福音の告知の発展について研究し、それを実行するための適切な仕方、手段、言語を識別することである。本部門は、福音化の領域におけるもっとも重要な体験を集め、それを教会全体が利用できるようにする。

(2)本部門は、福音化と宣教の歴史、とりわけ福音の告知を特徴づけ、条件づける、政治・社会・文化的文脈との関係について検討するよう推奨する。

第56条 (1)本部門は、研究と体験の交流を通して、イエス・キリストの「よい知らせ」を、さまざまな文化や民族集団にインカルチュレーションし、彼らを福音化する歩みの中で、とりわけ民間信心に注意を払いながら、各部分教会を支援する。

(2)民間信心を促進し、支援するため、本部門は国際的聖地にとくに注意を払っている。本部門は、国際的聖地を設立し、それぞれの規則を承認する権限を有する。教会法上の要件にしたがい、教区/東方教会教区の各司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織と協力して、継続的な福音化の、活力ある拠点であるこれらの聖地において、有機的な司牧活動を推進するのである。

第57条 政治的、社会的、文化的な課題に照らし、本部門は、以下を実施する。

  1. 時のしるしを識別し、福音の告知を受ける側の社会経済的、環境的状況を調査することで、福音化を促進すること、
  2. さまざまな文化との出会いにおいて、また人間の尊厳と信教の自由の促進に関わるすべての事項において、福音がもたらす刷新について研究し、促進すること。各部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織との緊密な協力のもと、福音と諸文化との出会いに関する教会の教えの普及と実践を促進、奨励すること。福音化は根本的に、貧しい人の選択を含意するものであるため、本部門は「貧しい人のための世界祈願日」を主催すること、
  3. 教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織が福音をのべ伝えるための取り組みを援助、支援すること。

第58条 (1)本部門は、カテケージスについて責任を有し、各部分教会がイエス・キリストの福音を告げ知らせる働きを実行していくのに際し、それら部分教会に奉仕する。それは、日常のキリスト教的生活の中で洗礼を受けた人々に対して、ある程度の信仰心を示しつつも、その基礎を十分に知らない人々に対して、受けとった教えについてより深く学ぶ必要があると感じている人々に対して、さらに、信仰を捨てた、あるいはもはや信仰を宣言しない人々に対して、行われるものである。

(2)本部門は、宗教的指導が適切に与えられ、カテケージスの養成が教会の教導職によって定められた規範にしたがって実行されるよう見守る。同様に、カテキズムやその他のカテケージス指導に関する資料についても、教理省の了解を得て、要請された使徒座の認証を与える責任を有する。

第59条 (1)神の民のすべての成員は、受けた洗礼によって、福音を宣教する弟子であるから、本部門は、この意識と責任の高まりを支援し、その結果、各個人が祈り、あかし、働きを通して、日々の生活の中で宣教する働きに効果的に協力できるよう努める。

(2)福音化は、さまざまな形や表現で、とりわけ神のいつくしみを告げ知らせることによって実現する。「いつくしみの宣教者」の具体的活動は、特別な形でこの目的に貢献している。本部門は彼らの養成を促進・支援し、その司牧活動のための基準を提供する。

第60条 (1)福音化の文脈において、本部門は、現実の世界情勢において、あらゆる社会・政治環境における信教の自由を確認し、促進する。この点で、本部門は「国務省」の協力も得ている。

(2)福音化の方法として、「諸宗教対話省(Dicastery for Interreligious Dialogue)」および「文化教育省(Dicastery for Culture and Education)」と協力し、それぞれ独自の能力に応じて、他の諸宗教信者や無宗教を公言する人々との出会いと対話の機会を奨励し、支援する。


◯初期宣教部門

第61条 本部門は、福音をのべ伝え、初期宣教地域において信仰生活を深めるよう支援し、「教会領域(ecclesiastical circumscriptions)」の設置または変更、その規定に関するすべてに責任を有し、その他の業務を実施する。それは、「司教省」がその管轄の地域で実施するのと同様のものである。

第62条 本部門は、公正な自治の原理に則り、初期宣教の働きとその成長において、新しい部分教会を支援する。その際、各部分教会、各国司教協議会、奉献・使徒的生活会、諸団体、各教会運動体、新しい共同体、教会の福祉諸団体と協力しながら行う。

第63条 本部門は、司教団、各国司教協議会、奉献・使徒的生活会と協力し、聖職者、奉献・使徒的生活会会員、信徒の宣教者の召命の育て、同時に、福音宣教省管轄の地域の教区司祭とカテキスタを養成する。その際、聖職者の学問的訓練や高等教育・養成・文化機関といった、特定の分野における他の各省の管轄権を損なうことはない。

第64条 (1)本部門は、新しい部分教会内、およびそれらとより古く設立された教会との間の体験の交流を促進する。

(2)本部門は、新しい部分教会の融合を支え、他の教会が、連帯と友愛のこもった支援を彼らに提供するよう奨励する。

(3)本部門は、その管轄内の地域の司教およびそれと同等の人々のために、初期および生涯養成コースを提供し、組織する。

第65条 宣教協力を加速するために、本部門は、以下を行う。

  1. 新しい部分教会が経済的に自立するため、彼らとともにその必要条件を見出すよう働くことで、彼らを支援するよう努めること、
  2. 新しい部分教会を支援するために必要な基金を設立し、その資金集めと他の部分教会との協力のために有能な人材を準備するよう支援すること、
  3. 新しい部分教会とその集合体において、資源の有効活用と投資の品質向上のため、管理・監督機関の設置を推進すること、
  4. 人事管理において新しい部分教会を支援すること。

第66条 本部門は、5年ごとの報告書と、その管轄を託されている各部分教会の「使徒座公式訪問(アド・リミナ)」に関するすべての事象に対応する。

第67条 (1)「初期宣教部門」は、「教皇庁信仰弘布事業(Society for the Propagation of the Faith)」「教皇庁使徒聖ペトロ事業(Society of Saint Peter the Apostle)」「教皇庁児童宣教事業(Holy Childhood Association)」「教皇庁宣教者連合(Pontifical Missionary Union of Priests and Religious)」が属する「教皇庁宣教事業(Pontifical Mission Societies)」を管轄しており、それは、洗礼を受けたすべての人の宣教の責任と、新しい部分教会を支援する責任を促進するための道具となる。

(2)宣教事業に充てられる補助金の管理とその公平な分配は、「教皇庁宣教事業」の会長を務める、本部門の「次官補佐(Adjunct Secretary)」が担当する。

第68条 宣教のために確保された資産は、「財務事務局(Secretariat for the Economy)」への適正な説明義務を侵害することなく、本部門の「次官補佐」を長とする、本部門独自の特別事務局を通じて管理される。


教理省

第69条 「教理省(Dicastery for the Doctrine of the Faith)」の任務は、信仰と道徳に関するカトリック教義の完全性を促進し、保護することにより、ローマ教皇と司教団が、全世界に福音をのべ伝えるのを支援することである。信仰の遺産を活用し、新しい問いに直面しながら、その理解をさらに深めようと模索することで、これを行う。

第70条 本省は、「教理部門(Doctrinal Section)」と「規律部門(Disciplinary Section)」の2部門で構成され、各部門は、それが管轄する特定分野に応じて、長官を補佐する次官が調整役を務める。

第71条 「教理部門」は、正しい教理、ならびに現代の諸課題に照らして、さまざまな文化における信仰と道徳の理解ならびに神学の発展に関する研究と考察を奨励・支援する。それは、信仰の光に照らして、科学の進歩や文化的発展に伴って現れる問いや議論に対し、答えを提供するためである。

第72条 (1)信仰と道徳を守り、あらゆる手段によって流布された誤りからその完全性を保つための措置について、教理部門は、信仰の真の教師、博士としての自らの使命を果たす中で、すなわち、その信仰の完全性を維持・促進する義務を果たす中で、教区/東方教会教区の司教たち(個人で、または司教協議会、「部分教会会議(particular Councils)」、東方諸教会の位階的組織に集まって)と緊密に連携しながら、その任務を遂行する。

(2)こうした協力関係は、とくに神学領域の教育認可の場合に適用され、「文化教育省(Dicastery for Culture and Education)」独自の権限を十分に考慮しつつ、本部門が検討した意見を提供する。

第73条 信仰の真理と道徳の完全性を守るために、教理部門は、以下を行う。

  1. 正しい信仰と道徳に反する、または有害と思われる著作物や意見を精査し、その著者との対話を模索し、本部門独自の規範にしたがい、適切な改善策を提示すること、
  2. キリスト者の間に流布している、誤りや危険な教えが、適切な反証なしに放置されることがないよう努めること。

第74条 教理部門は、その結婚の部局を通じて、「信仰の特権(privilegium fidei:訳注『新教会法典』第1150条)」に関するすべての事象を、法と事実の両面から検討する。

第75条 ローマ教皇庁の他の各省、諸機関、諸部局が発行する、信仰と道徳に関する教えに関する文書は、あらかじめ教理部門の慎重な判断に付される。教理部門は、議論と相互理解の歩みを通して、適切な決定がなされるよう支援する。

第76条 (1)「規律部門」は、その規律部局を通して、本省に留保され、そこに設置された「使徒座署名院最高裁判所」によって裁かれる不法行為を取り扱う。最高裁判所は、「内赦院(Apostolic Penitentiary)」の管轄権を損なうことなく、慣習法(common law)と固有法(proper law)両方にしたがって、教会法による制裁を宣告または執行する。

(2)第1項で言及された不法行為に関して、本部門は、ローマ教皇の委任により、枢機卿、総大司教、使徒座の使節、司教、およびその他の自然人を、教会法の規定にしたがって裁く。

(3)本部門は、教理省が、その管轄地域に関連する教会法上の規範の適切な理解と適用を促進するために、「裁治権者(Ordinaries)」や法曹専門家に提供する養成計画を推進する。

第77条 本省内に「教皇庁聖書委員会(Pontifical Biblical Commission)」と「国際神学委員会(International Theological Commission)」が設置され、そのいずれも本省長官が指揮を執る。それぞれは、承認された各自の規範にしたがって運営される。

第78条 (1)本省内に「教皇庁未成年者保護委員会(Pontifical Commission for the Protection of Minors)」が設置され、ローマ教皇に指針と助言を提供し、未成年者と社会的弱者を保護するため最適な措置を提案する役割を担う。

(2)本教皇庁委員会は、教区/東方教会教区の司教、各国司教協議会、東方諸諸教会の位階的組織、さらに奉献・使徒的生活会の総長たちやその協議会が、性虐待から未成年者と社会的弱者を保護するための適切な戦略と手順を提案し、聖職者と奉献・使徒的生活会会員からのこうした行為に適切に対応するための指針作成を支援する。それは、教会法の規範にしたがい、市民法による要件を十分に考慮して行われる。

(3)本委員会の委員は、ローマ教皇により、任期5年で任命され、聖職者、奉献・使徒的生活会会員、各国の男女信徒の中から、その専門知識、確かな能力、司牧経験で卓越した人物が選ばれる。

(4)本委員会は、「議長代理(President Delegate)」と「書記(Secretary)」によって運営され、両者ともローマ教皇によって任命され、任期は5年である。

(5)本委員会には専属の職員がおり、独自に承認された規範にしたがって業務を遂行する。


支援援助省

第79条 「教皇慈善活動室(Office of the Papal Almoner)」としても知られていた、「支援援助省(Dicastery for the Service of Charity)」は、いつくしみの特別な表現であり、貧困者、弱者、排除された人の選択を基礎とし、ローマ教皇の名において、世界のあらゆる場所で、援助・支援活動を提供する。ローマ教皇は、特別に必要のある場合、またその他の緊急事態に、提供する援助形態を自ら決定する。

第80条 本省は、「教皇の慈善活動担当官(Almoner of His Holiness)」である長官の指導のもと、他の管轄の各省と連携しながら、その活動を通して、困窮、排除、貧困や甚大な災害状況にある人々に対し、普遍教会の牧者としてのローマ教皇が配慮し寄り添っていることを示すものである。

第81条 (1)本省は、ローマ教皇がもっとも困窮している人々に対して行う慈善活動のために、自発的な寄付を受け取り、求め、要請する権限を有する。

(2)教皇の慈善活動担当官はまた、正式に認証された「ペルガメーナ(訳注:祝福の証書)」によって使徒的祝福を与える権限を有する。


東方教会省

第82条 (1)「東方教会省(Dicastery for the Eastern Churches)」は、「自治権を有する(sui iuris)」東方カトリック教会に関する事項を、人・物事を含め、取り扱う。

(2)これら東方諸教会、とりわけ古代よりの総大司教教会の中には、古い伝統をもつものもあるため、本省は、必要に応じて関連する他の省と協議したのち、「東方教会法典(Code of Canons of the Eastern Churches)」の適用を離れて、内部統治に関する問題で、これら諸教会のより高位の権威者にゆだねることができるものについては、ケースバイケースで検討する。

第83条 (1)「自治権を有する」東方諸教会の総大司教、首位大司教、および「キリスト教一致推進省(Dicastery for Promoting Christian Unity)」長官は、法の規定により本省のメンバーである。

(2)可能な限り、その顧問と職員は、「自治権を有する」東方典礼諸教会の信者からも、ラテン典礼の信者からも選ばれるべきである。

第84条 (1)本省は、使徒座にゆだねるべき東方諸教会に関するすべての事項、すなわち、これら諸教会の構造と組織、教え・聖化・統治の機能の実践、および個人の地位・権利・義務に関する事項を管轄する。また、5年ごとの報告と「使徒座公式訪問(アド・リミナ)」に関する手続きも行う。

(2)第1項に関し、「教理省」「列聖省(Dicastery for the Causes of Saints)」「法制省(Dicastery for Legislative Texts)」および「内赦院(Apostolic Penitentiary)」「使徒座署名院最高裁判所」「ローマ控訴院(Tribunal of the Roman Rota)」の、独自の排他的権限は、変わらず保持される。

(3)ラテン教会の信者にも関係する事項に関して、本省は、その事項の重要性から必要とされる場合、事前に、ラテン教会の信者に対して同じ事項を管轄する省と協議する。

第85条 本省は、ラテン教会の地域内に住む東方諸教会の信者共同体に細心の注意を払い、その地域の部分教会の設立を管轄する省と協議の上、「視察者(visitators、訳注:『新教会法典』第628条)」や、人数と状況に応じて、可能な限り、適当な聖職位階を派遣することによって、その人々の霊的必要を満たす。

第86条 古来より東方典礼がより盛んである地域では、使徒職と宣教活動は、たとえそれがラテン教会に属している宣教者によって行われているとしても、すべて本省の管轄となる。

第87条 本省は、カトリックではない東方諸教会との関係については「キリスト教一致推進省」と、また、それぞれに関連する事項については「諸宗教対話省(Dicastery for Interreligious Dialogue)」「文化教育省(Dicastery for Culture and Education)」との協力のうちに、その業務を遂行する。


典礼秘跡省

第88条 「典礼秘跡省(Dicastery for Divine Worship and the Discipline of the Sacraments)」は、第二バチカン公会議によって実現された刷新にしたがって、聖なる典礼を推進する。その権限領域には、聖なる典礼の統制と推進に関して、また教会の各法令と典礼の規則があらゆる場所で忠実に守られるよう監督することに関して、法律によって使徒座に関連付けられるすべての事項が含まれる。

第89条 (1)典礼書の規範版の編集、改訂、更新を行うことは、本省の任務である。

(2)本省は、各国司教協議会により合法的に認可(approve)された典礼書の現代語への翻訳を認証(confirm)し、その地方文化への適切な適応(adaptations)に承認(recognitio)を与える。また本省は、各部分教会、奉献・使徒的生活会の特殊暦や、ミサの「季節」、「教会の祈り」について、それがそれぞれ管轄の権威によって認可(approval)されたのち、承認(recognitio)を与える。

(3)本省は、教区司教と各国司教協議会が、とりわけ感謝の祭儀や他の秘跡、典礼行為に関して、信者がより能動的に参加できるよう、典礼使徒職を効果的かつ適切な手段で推進するのを支援する。各国司教協議会とともに、可能な典礼のインカルチュレーションの形態を考察するよう促し、それらが文化の中に定着するのに同伴する。

第90条 (1)本省は、教理省の権能を害することなく、秘跡の規律と、その有効かつ合法的な実施に関する法的問題、および準秘跡の規律を監督する。

(2)本省は、教区司教の権限を超えるゆるし(indults)や免除(dispensations)の請求を精査し、許可する。

第91条 本省は、国際聖体大会の定期的な開催を推進・組織し、各国の聖体大会開催に協力する。

第92条 本省は、以下の要領で、典礼生活に関する事項の責任を担う。

  1. さまざまなレベルで典礼の養成を促進し、また複数地域にまたがる集いを通じて、
  2. 典礼使徒職、音楽、聖歌、聖画を促進するために設立された委員会や機関を支援することによって、
  3. これらの目的のための国際的な協会を設立し、あるいはその規則を認可することによって。

第93条 本省は、第二バチカン公会議による改革以前の典礼書の使用(確定された規範にしたがって許可されている)に関して、聖なる典礼の規定や規律に責任を負う。

第94条 本省は、聖遺物の崇拝、保護の聖人の認証、小バジリカの称号付与を遵守する責任を担う。

第95条 本省は、民間信心の種々の形態がますます教会の規範に適合し、聖なる典礼と調和するように、教区司教が働くのを支援する。それは、その原理を確認し、各部分教会においてそれらが実り豊かに実施できるための指針を提供することによって行われる。

第96条 本省は、司教たちが、自らに託された部分教会の典礼生活全体の調整役、促進者、管理者として、その本来の職務を遂行するのを支援する。それは、起こりうる濫用を防止し排除して、適正な典礼の養成を促進するための指導と提案を提供することによって行われる。

第97条 より効率的にその任務を遂行するために、本省は、そのメンバーおよび顧問に加えて、各国司教協議会の典礼委員会、および典礼書の主要諸言語への翻訳のための国際委員会との協力および定期的な人事交流を模索する。また、さまざまな教会の高等研究機関による、典礼領域における貢献にも、関心をもって注目する。


列聖省

第98条 「列聖省(Dicastery for the Causes of Saints)」は、定められた手続きにしたがい、列福と列聖に関するすべての事項を取り扱う。

第99条 (1)本省は、特別な規範を定め、事案の調査を担当する教区/東方教会教区の司教に対し、助言と指導をもって支援する。

(2)本省は、すでに調査済みの事実関係を検証し、その手順が適切に実施されたことを確認し、その事由の妥当性について判断を下し、それらをローマ教皇に提出する。

第100条 本省は、事由の費用に充てるために設立された基金の管理に関する規範の適用を監督する。

第101条 本省は、聖遺物の真正性を検証して宣言し、またその保存を保証するための教会法上の手順を決定する。

第102条 本省はまた、その卓越した教えについて教理省の意見を受けた上で、その聖人に教会博士の称号を授与するかどうかを決定する権限を有する。


司教省

第103条 「司教省(Dicastery for Bishops)」は、福音宣教省の管轄権を損なうことなく、各部分教会の設立と運営、およびラテン教会における司教職の遂行に関するすべての事項に責任を負う。

第104条 本省は、必要な情報を収集し、司教および各国司教協議会と協力しながら、各部分教会とその集合体の設立、分割、統合、廃止、その他の変更に関するあらゆる事項を取り扱う。また、教理省および関連する司教協議会との協議の上で、軍裁治区(military Ordinariates)を設立すること、および、特定の司教協議会の管轄区域内で、カトリック教会との完全な交わりに入っている英国国教会信者のための属人裁治区(personal Ordinariates)を設立することの責任を担う。

第105条 (1)本省は、教区司教と名義司教の任命、使徒座管理区長、および一般的に各部分教会の規定に関するすべての事項を取り扱う。それは本省が、各部分教会、各国司教協議会、教皇使節(Papal Representations)によって示された提案を検討し、当該司教協議会の上級役員と管区大司教(Metropolitan)と協議した上で行われる。また適切な方法によって、当該教区の神の民もこの歩みに参加する。

(2)本省は、各国司教協議会およびその地域・大陸の集合体と協議の上、候補者選考の基準を決定する。これらの基準には、文化的必要の違いを考慮に入れ、また定期的に見直されるべきである。

(3)本省はまた、教会法の規定にしたがい、司教の辞職も取り扱う。

第106条 各部分教会やその集合体の設立や変更、またこれらの教会の規定のために、民間政府と話し合う必要がある場合はつねに、本省は、国務省外務局ならびに当該司教協議会と協議した上ではじめて、話し合いを進める。

第107条 (1)本省は、司教たちが、それぞれに託された司牧の役務を正しく実りあるものとするために、あらゆる事項について積極的に協力する。

(2)司教の統治機能の適切な行使のために特別な介入を必要とし、管区大司教または司教協議会がその問題を解決できない場合、本省は、必要であれば、他の管轄の各省と協力して、兄弟的または使徒的視察を決定し、同様に進めて、その結果を評価し、適切と思われる措置をローマ教皇に提案する。

第108条 本省は、担当する部分教会の使徒座公式訪問(アド・リミナ)に関するすべてのことを取り扱う。このために、第40条にしたがって、司教たちから提出された報告書を精査する。ローマに司教たちが滞在中、彼らを支援し、ローマ教皇謁見、四大バジリカ巡礼、その他の会談を手配する。訪問が終了すると本省は、各部分教会と司教協議会に、そのまとめ、示唆、提案を文書で伝える。

第109条 (1)本省は、福音宣教省の管轄権を損なうことなく、確かな知恵、分別、経験を有する司教たちや、普遍教会各地からの専門家の助けを借りて、新しい司教の養成を担当する。

(2)本省は、定期的に司教たちに生涯養成と継続教育の機会を提供する。

第110条 本省は、各国司教協議会およびその地域・大陸の集合体との緊密な協力のもと、奉仕の精神をもってその業務を遂行する。部分教会会議の開催、司教協議会の設立とその規則の承認に関しても、同様に行うよう努める。本省は、上記の諸組織の決議と布告を受理する。関連する他の各省と協議の上、それらを検討し、その布告に必要な承認を与える。さらに、教会管区・地域に関する、教会法上の規範によって定められたあらゆることを実行する。

第111条 (1)本省内に設置された、「ラテン・アメリカ委員会(Pontifical Commission for Latin America)」は、これらの部分教会の生活と発展に関する諸問題を研究し、その権限によって、それら部分教会を取り扱う各省を援助し、助言と経済資源をもって、これらの部分教会を援助する責任を担う。

(2)本委員会はまた、ラテンアメリカ地域で活動する国際的教会機関と各国の教会機関との関係、また教皇庁の諸機関との関係を促進する役割も担う。

第112条 (1)本委員会の委員長(President)は司教省長官が務め、1人または複数の次官(Secretaries)が補佐する。彼らは顧問として、ローマ教皇庁およびラテンアメリカの各教会から選ばれた司教たちをもつ。次官と顧問はローマ教皇によって5年任期で任命される。

(2)本委員会の委員は、教皇庁の諸機関、ラテンアメリカ司教協議会連盟(CELAM)、ラテンアメリカ地域からの司教、および前条で言及された諸機関の中から選出される。彼らは、ローマ教皇によって5年任期で任命される。

(3)本委員会は、独自の職員をもつ。


聖職者省

第113条 (1)「聖職者省(Dicastery for the Clergy)」は、教区の聖職者である司祭と助祭に関し、その人物および司牧奉仕職に関するすべての事項、ならびに後者の実りある遂行に必要な一切の事項を扱う。これらの事項において、司教たちに適切な支援を提供する。

(2)本省は、聖職者の候補者の養成に関して、使徒座の意向を表明し、実行する。

第114条 (1)本省は、教区司教を支援し、各教会において叙階された奉仕職への召命を促進し、法律にしたがって設立・運営されている神学校において、学生たちが適切な教育を受け、堅実な、人間的、霊的、知的、司牧的養成を受けられるようにする。

(2)法律により聖座の管轄権に属する事項について、本省は、神学校の共同体生活と運営が司祭養成の要件に適合していること、また、神学院長と養成担当者が、自らの模範と正しい教義によって、将来叙階される奉仕者の人格形成に貢献するようあらゆる努力を払うことを保証する。

(3)本省は、『司祭養成基本綱要(Ratio fundamentalis institutionis sacerdotalis)』や『終身助祭 養成基本要綱(Ratio fundamentalis institutionis diaconorum permanentium)』といった適切な規範や、生涯養成に関するその他の文書を発行することによって、未来の聖職者の養成に関するあらゆる事項の推進に責任を担う。

(4)本省は、各国司教協議会が発行する『全国司祭制度要綱(Ratio Institutionis Sacerdotalis Nationalis)』を認証し、「諸教区共立神学校(inter-diocesan seminaries)」の設立とその規則を認証する権限を有する。

(5)司祭養成の質を保証し、向上させるために、本省は、教区立神学校が十分な数の候補者、適切な資質を備えた養成担当者、指導者、霊的同伴者、およびそれらを支援するために必要なその他の組織を備えた、十分な養成を提供できない地域において、諸教区共立神学校の設立を促進する。

第115条 (1)本省は、教区司教や各国司教協議会に対し、聖職者たちの生活、規律、権利と義務に関するそれぞれの統治活動において援助を提供し、聖職者たちの生涯養成に協力する。さらに、教区司教または各国司教協議会が法律にしたがって、聖職者の生計維持と社会保障を提供することを保証する。

(2)本省は、行政的な手続きを通して、奉献・使徒的生活会の会員を含めた聖職者によって提起された紛争および位階的訴願を審査する権限を有する。これは、奉仕職の行使が関係する場合についてであり、第28条第1項の規定を損なうことはできない。

(3)本省は、管轄権を有する各省の協力を得て、世界各地の司祭不足から生じる諸問題を研究している。それは一方で、神の民から聖体にあずかる機会を奪い、他方、教会の秘跡構造を損なう。したがって、司教たちと各国司教協議会に対し、聖職者をより適切に配分することを推奨する。

第116条 (1)本省は、教会法の規範にしたがい、聖職者としてのあり方に関連する事項を、奉献・使徒的生活会の会員を含めたすべての聖職者および終身助祭について、状況が要求するときはいつでも、管轄権を有する各省と協力のうちに、取り扱う責任を担う。

(2)本省は、ラテン教会と東方諸教会からの、教区の聖職者と奉献・使徒的生活会の会員を含め、助祭職と司祭職に叙階されたことによって引き受ける義務の免除の事案について、その権限を有する。

第117条 本省は、「属人区(Personal Prelatures)」に関して、聖座に付随するすべての事項について権限を有する。

第118条 本省は、聖座の管轄権を有する、以下の事項を取り扱う。

  1. 教区経済問題評議会、司祭評議会、顧問会、祭式者会、教区司牧評議会、小教区、各教会を統治する一般的な規律、
  2. 聖職者の会、および「聖職者の公的会(public clerical associations)」。後者に対しては、本省は、管轄権を有する各省と協議し、ローマ教皇の認可を得た上で、入籍させる権限を付与することができる、
  3. 教会記録保管庫、
  4. 信心上の贈与一般および信心上の財団(pious will in general and pious foundations)の消滅。

第119条 本省は、教会財産の規定、とりわけその適正な管理に関して、聖座に付随するあらゆる業務を遂行し、「福音宣教省」「東方教会省」「奉献・使徒的生活会省(Dicastery for Institutes of Consecrated Life and Societies of Apostolic Life)」の管轄権を損なうことなく、必要な許可および認可を与える。

第120条 本省内に、「教皇庁司祭召命事業(Pontifical Work for Priestly Vocations)」と「聖職者養成のための常設省間委員会(Permanent Interdicasteral Commission for the formation for Holy Orders)」が設置され、職権により、本省長官が長を務める。


奉献・使徒的生活会省

第121条 本省の権限は、福音的勧告の実践と、それが認可された奉献生活の諸形態の中で、いかに生き抜かれているかを促進、奨励、監督することであり、またラテン教会全域における使徒的生活の会の生活と活動に関するすべての事項のについてである。

第122条 (1)奉献生活の会と使徒的生活の会を認可し、それらを設立し、また司教の側で、教区の権利として、奉献生活の会または使徒的生活の会を有効に設立する許可を与える権限は、本省に付随する。

(2)奉献生活の会と使徒的生活の会の合併、統合、廃止もまた、本省に託されている。

(3)本省は、すでに法律で認められている奉献生活の形態に対し、新たな形態を認可し、監督する権限を有する。

(4)奉献生活の会と使徒的生活の会の合併、連合、連盟の設立、または差し止めをすることは、本省の任務である。

第123条 本省は、各奉献生活の会、使徒的生活の会が、創立者の精神と健全な伝統に由来する、それ独自のカリスマにしたがって、福音に沿って確実にキリストにしたがっていけるように働く。それによってそれらの会が、自らの目的を忠実に追求し、教会の建設と世界におけるその使命に効果的に貢献できるようにする。

第124条 (1)教会法の規範にしたがい、本省は、奉献生活の会および使徒的生活の会の生活と活動、とりわけ以下の事項に関して、使徒座の管轄権に属する諸事項を取り扱う。

  1. 会憲およびその変更の認可、
  2. 通常の統治と会員の規律、
  3. 特定の規範や規定を含め、会員の入会と養成、
  4. 財産とその管理、
  5. 使徒職、
  6. 統治上の特別措置。

(2)法律の規範により、以下もまた、本省の管轄権に属する。

  1. 会員を、承認された他の奉献生活形態へ移すこと、
  2. 総長によって認められた期間を超える、不在と禁域法免除の延長、
  3. 奉献生活の会または聖座法による使徒的生活の会を退会する終生誓願した会員のゆるし、
  4. 課せられた禁域法免除、
  5. 会員の除名決定に反対して上訴する試験。

第125条 「国際上級上長協議会(international Conferences of Major Superiors)」を設立し、その規則を認可し、その活動が本来の目的に沿って行われるよう確認することは、本省の権限である。

第126条 (1)隠遁生活と「処女(おとめ)の身分(Ordo Virginum)」は奉献生活の一形態である限り、本省の管轄下にある。

(2)国際レベルで処女(おとめ)の身分の協会を設立するのは、本省の任務である。

第127条 本省の権限はまた、奉献生活の会または使徒的生活の会になることを視野に入れて設立された第三会および信徒団体にも及ぶ。


いのち・信徒・家庭省

第128条 (1)「いのち・信徒・家庭省(Dicastery for the Laity, the Family and Life)」は、信徒使徒職の促進、青年・家庭と神の計画に沿ったその使命、高齢者に対する司牧ケア、いのちの促進と保護のための権限を有する。

(2)その任務を遂行するにあたり、本省は、各部分教会、各国司教協議会、その地域と大陸の集合体、東方諸教会の位階的組織、その他の教会団体との関係を維持し、それらの間の交流を促進し、これらの事項に関連する価値観や取り組みが促進されるよう協力する。

第129条 教会と世界における信徒の召命と使命の促進を促し、奨励するにあたり、本省は、教会のさまざまな信徒団体と協力し、信徒が、多様な社会状況における信仰体験と世俗的な技能の両方を、教会の司牧奉仕職と統治の中で分かち合えるようにする。

第130条 本省は、若者に対する教会の特別な関心を表明し、世界が直面する諸課題の中で、若者の指導的役割を促進する。青年司牧の分野におけるローマ教皇の取り組みを支援し、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織、国際的な青年運動や団体に奉仕し、それらの協力関係を促進し、国際レベルの会合を組織する。

第131条 本省は、男女のそれぞれの特性、相互依存性、補完性、平等な尊厳の中で、その関係性について考察を深めるよう努める。教会と社会における女性と男性のアイデンティティと使命に関する教会的考察に対し、独自の貢献をする。それは、女性と男性の参加を促し、その異なる特徴を尊重し、教会における女性のロールモデルを育成することによって可能となる。

第132条 本省は、洗礼および多様なカリスマと奉仕職のおかげによる、信徒と叙階を受けた奉仕者との協力に関連する諸課題を研究し、その結果、双方に、教会の生活と使命に対する共同責任の意識をはぐくむようにする。

第133条 各部分教会の必要に応じて、信徒にゆだねられる新しい奉仕職や教会の職務の創設に関連する、各国司教協議会からの提案を、関係する他の省の同意をもって、審査し、認可することは、本省の権限である。

第134条 その権限の範囲内で、本省は、信者の団体や教会運動体の生活と発展に同伴し、教会法の規定にしたがい、国務省の管轄権を損なうことなく、国際的な性格を有するものを承認または設立し、その規則を認可する。また、信徒の共同生活と使徒職に関して起こりうる位階的上訴についても取り扱う。

第135条 本省は、教会の教導権の教えに基づき、結婚と家庭に対する司牧的配慮を推進する。教会、社会、経済・政治生活において、配偶者と家族の権利と義務が認識されるよう努める。また、国際会議やイベントも推進する。

第136条 福音宣教省および文化教育省と連携しつつ、本省は、家庭における信仰伝達のモデルの開発と普及を支援し、親たちが日常生活において信仰実践するよう奨励する。また、司牧的配慮や教育における包摂的モデルを推進する。

第137条 (1)本省は、各国司教協議会と東方諸教会の位階的組織からの意見を聞きながら、結婚した夫婦の生活、家庭生活における多様な人類学的、社会文化的、経済的状況について検証する。

(2)専門家たちの協力を受けながら、本省は、結婚と家庭における危機の主な原因を研究・分析し、結婚の破綻に関わる人々、とりわけ子どもたちの経験にとくに注意を払いながら、社会と教会における家庭の価値と両親の役割について、より深い認識が得られるよう努める。

(3)各国司教協議会および東方諸教会の位階的組織と協力して、離婚して市民法上再婚した人々のため、また一夫多妻の状況で生活する特定の諸文化の人々のために、司牧的に同伴し、良心を養成し、統合していくモデルを収集、提案することは、本省の任務である。

第138条 (1)本省は、人間の発達の諸段階における必要性を考慮しつつ、責任ある出産のため、また受胎からその自然死に至る人間のいのちを守るための取り組みを支持する。

(2)本省は、とくに困難な妊娠の場合に、家族や個人がいのちのたまものを迎え入れ、責任をもって守れるように支援し、さらに人口妊娠中絶に頼ることを予防する団体や組織を推進、奨励する。また、中絶に関わった人々を支援することを目的とした、各部分教会、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織によるプログラムや取り組みを支援する。

第139条 (1)本省は、教会の教導権に基づき、さまざまな神学分野や他の関連諸科学との対話のうちに、人間のいのちに関連する生物医学と法律の主要な課題について研究する。また、人間のいのちについての理論の発展や人類の現実について調査する。これらの問いについて研究するにあたり、本省は教理省と協議しながら進める。

(2)同様に、本省は、社会生活の変化について考察し、人間の完全かつ調和的な発達を促進するために、進歩を評価し、文化的・社会的なレベルでこうした発展を妨げる傾向について検証する。

第140条 本省は、家庭の善に奉仕することを目的とする、国内および国際的に活動するカトリック団体、協会、運動体、組織の活動を支援する。

第141条 (1)本省は、「教皇庁生命アカデミー(Pontifical Academy for Life)」と協力し、いのちを守り促進することに関する諸課題について、その専門知識を活用する。

(2)本省は、「教皇庁ヨハネ・パウロ二世結婚・家庭科学神学研究所(Pontifical John Paul II Theological Institute for Matrimonial and Family Science)」と協力し、中央研究所およびその他の支部や、関連/提携研究所と連携して、結婚、家庭、いのちに関する研究の、共通の方向性を推進する。


キリスト教一致推進省

第142条 キリスト者間の一致を回復するために、カトリック教会内および他の諸教会や教会共同体との関係の中で、時宜を得たエキュメニカルな取り組みや活動に従事することが、「キリスト教一致推進省(Dicastery for Promoting Christian Unity)」の任務である。

第143条 (1)エキュメニズムに関する、第二バチカン公会議および公会議後の教導権の教えを実践することが本省の任務である。

(2)本省は、エキュメニズムの諸原理と、エキュメニズム活動を指導、調整、発展させるために確立された諸指針を正しく解釈し、忠実に適用するよう取り組む。

(3)本省は、キリスト教一致の推進に適した、国内および国際的なカトリックの会合やイベントを推進する。

(4)本省は、他の教皇庁組織、部局、聖座関連機関が行うエキュメニズムの取り組みについて、他の諸教会や教会共同体と調整する。

第144条 (1)ローマ教皇に報告を行った上で、本省は、他の諸教会や教会共同体との関係を取り扱う。彼らとの一致を促進するために、専門家たちの協力を得ながら、神学的対話や会合を奨励する。

(2)本省は、種々のエキュメニズムの会合のために、神学対話のカトリック側のメンバー、オブザーバー、代表団を任命する。また、適切と思われるときはいつでも、カトリック教会のもっとも重要な会合やイベントに、他の諸教会や教会共同体からオブザーバーや友好使節を招待する。

(3)本省はまた、霊的、司牧的、文化的レベルにおけるエキュメニズムの取り組みを育成する。

第145条 (1)本省は、その本性上、信仰に関する問いに対処しなければならないことが頻繁にあることから、とりわけ公文書や宣言を発表する場合、教理省と協議の上、進める必要がある。

(2)東方典礼カトリック教会と正教会または東方正教会との関係に関する事項については、本省は、「東方教会省」および「国務省」と協力する。

第146条 カトリック信者とユダヤ教徒の関係を醸成するため、本省内に「ユダヤ教委員会(Commission for Religious Relations with the Jews)」が設置される。同委員会は本省長官が指揮を執る。


諸宗教対話省

第147条 「諸宗教対話省(Dicastery for Interreligious Dialogue)」は、ユダヤ教を除く、非キリスト教諸宗教の信者および団体との関係を促進、監督する。ユダヤ教に関する権限は、「キリスト教一致推進省」に帰属する。

第148条 本省は、他の諸宗教の信者たちとの対話が、耳を傾け、敬意と尊重の姿勢をもって適切な形で行われるように努める。また、すべての人の貢献を通じて、平和、自由、社会正義、被造物の保護と保全、霊的・道徳的価値が促進されるよう、諸宗教とのさまざまな形の関係を育成する。

第149条 (1)諸宗教対話は、活動、神学的交流、霊的体験を通して実現されることを認識し、本省は、すべての人々の中で、真の神の探求を推奨する。時宜を得た研究や会議を推進し、相互理解と尊敬を深め、人間の尊厳と人々の霊的・道徳的な豊かさが育つよう努める。

(2)諸宗教対話に携わる人材の養成において、教区/東方教会教区司教を支援することは、本省の任務である。

第150条 (1)神を真摯に求める各宗教伝統の違いを認識しつつ、本省は、さまざまな分野の専門職員を提供する。

(2)異なる宗教的信条をもつ人々との関係を促進するために、本省長官の指揮のもと、関連する司教協議会および東方諸教会の位階的組織と協力して、本省内に、「ムスリム委員会(Commission for Religious Relations with Muslims)」のように、委員会を設置する。

第151条 その職務の遂行にあたり、本省は、必要に応じて「教理省」、さらに必要な場合には「東方教会省」および「福音宣教省」と協議して行動する。

第152条 (1)その職務の遂行にあたり、本省は、各部分教会、各国司教協議会、その地域と大陸の連合体、東方諸教会の位階的組織と協力しながら、その取り組みを始め、計画する。

(2)本省はまた、各部分教会が諸宗教対話の分野での取り組みを行うよう奨励する。


文化教育省

第153条 (1)「文化教育省(Dicastery for Culture and Education)」は、キリスト教人間学の文脈の中で、人々の人間的価値の発展のために働き、キリストの弟子であることを十全に実現していけるよう貢献する。

(2)本省は、文化振興、司牧活動、文化遺産の向上を目的とする「文化部門(Section for Culture)」と、学校、カトリックおよび教会の高等教育機関と研究機関に関する教育の基本原理を策定し、これらの事項に関する位階的訴願の権限をもつ「教育部門(Section for Education)」から構成される。

第154条 文化部門は、聖座と文化界との関係を促進し、支援する。対話を、真の出会い、相互に交流し豊かになるための不可欠な手段として重視し、その中にあるさまざまな課題に対応する。その結果、さまざまな文化が福音に対してかつてないほど開かれ、また同様にキリスト者たちがそれらの文化に対して開かれ、芸術、文学、科学、技術、スポーツを愛する人々が、真、善、美を真摯に探求する人間として、教会に認められていると理解し、実感できるようになるためである。

第155条 文化部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織が、その歴史的遺産、とりわけ教会諸団体の生活と司牧に関する、あるいはそれを証明する書類や法的文書、ならびにその芸術的・文化的遺産を保護・保存できるよう、支援と協力を提供する。これらは、記録保管庫、図書館、博物館、教会、その他の建物に、細心の注意を払って保管され、関心をもつすべての人が利用可能とすべきである。

第156条 (1)文化部門は、教会内に存在する種々の文化間の対話を促進・奨励し、それによって、相互の豊かさをはぐくむ。

(2)本部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会および東方諸教会の位階的組織が、人類家族全体の資源としての知恵と霊性の遺産を有する各地の諸文化を、確実に向上させ、保護するよう模索する。

第157条 (1)文化部門は、文化に関する適切な取り組みを企画し、特定の教会機関が実施するプロジェクトを指導し、必要に応じて、それぞれの研究プログラムの自主性を損なうことなく、協力を提供する。

(2)国務省と協議の上、本部門は、文化振興および文化遺産の保全を目的とした、各国および国際機関が実施する行動計画に関心を示し、それらを注視する。機会に応じて、これらの分野において、国際フォーラムや専門会議に参加し、大会を推進し、また支援する。

第158条 文化部門は、特定のどの宗教も信仰していないものの、神の真理との出会いを真摯に模索する人々との対話のための取り組みを立ち上げ、推進する。また、いかなる信仰ももたない人々に対する教会の司牧的配慮を表す。

第159条 (1)教育部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織と協力し、教育、とくにカトリック教育の基本原理が受け入れられ、より良く理解されて、その状況や文化に応じて実施されるように努める。

(2)本部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織を支援し、学校と高等教育機関のカトリックとしてのアイデンティティを促進するため、特定の文化的状況における自らの基準を決定する規範を発行することができる。それらの規範をもって、教理の教えの中で、カトリック信仰の完全性が守られるよう努める。

第160条 (1)教育部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織が、すべての種類および年代のカトリック学校を設立するための規範を制定する支援を行う。それら規範の中には、福音化の一環として、教育に関する司牧的配慮を行うための規定もまた、盛り込まれるべきである。

(2)本部門は、学校におけるカトリック信仰の教育を推進する。

第161条 (1)教育部門は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織と協力し、教会全体の中で、十分かつ適切な数の、教会およびカトリックの高等教育機関、さらにその他の研究機関の設立と発展を推進する。それらの機関においては、キリスト教真理を考慮に入れながら、聖なる諸学問と人間学的、科学的研究を深め、育成することができる。このようにして学生たちは、教会と社会において、それぞれ独自の役割を果たすため、適切な養成を受けることが可能となる。

(2)教育部門は、聖座の名において授与される学位が、各国で承認されるための必要な要件を満たすための権限を有する。

(3)教育部門は、高等教育機関および教会のその他学術機関の認可と設立、その規則の認可とその遵守を監督する権限を有する機関であり、行政当局とも連携してこれらを進める。カトリック高等教育機関に関しては、法律にしたがい、聖座の管轄権に属する事項を取り扱う。

(4)教育部門は、教会およびカトリックの高等教育機関と、その関連団体との協力を促進する。

(5)教育部門は、第72条第2項で想定されている通り、教師が神学の各分野を教える資格を得るために必要な無障害証明(nihil obstat)を発行する権限を有する。

(6)教育部門は、権限を有する他の各省と協力し、聖職者、奉献・使徒的生活会の会員および信徒が、教会で奉仕する準備のための学問的養成において、教区/東方教会教区司教、その他の裁治権者と聖職位階、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織を支援する。

第162条 文化教育省はまた、数多くの教皇庁アカデミーの活動を統括し、そのうちのいくつかは、長い歴史を有している。そこには、信者・非信者の中から選ばれた、神学と人文主義の諸科学の中の、国際的な著名人が含まれる。現在、これらアカデミーは以下の通り。「パンテオンのヴィルトゥオージ教皇庁芸術文学アカデミー(Pontifical Academy of Fine Arts and Letters of the Virtuosi at the Pantheon)」「ローマ教皇庁考古学アカデミー(Pontifical Roman Academy of Archaeology)」「教皇庁神学アカデミー(Pontifical Academy of Theology)」「教皇庁聖トマス・アクィナスアカデミー(Pontifical Academy of Saint Thomas Aquinas)」「教皇庁国際マリアアカデミー(Pontifical International Marian Academy)」「教皇庁殉教者アカデミー(Pontifical Academy Cultorum Martyrum)」「教皇庁ラテン語アカデミー(Pontifical Academy for Latin)」。


総合的人間開発省

第163条 (1)「総合的人間開発省(Dicastery for Promoting Integral Human Development)」は、人間そのものと、神から与えられたその尊厳、人権、健康、正義、平和を、ともに促進する任務を担う。それは主に、経済と労働、被造物とわたしたちの「共通の家」である地球の保護、移住者と人道危機に関する諸課題に取り組む。

(2)本省は、人間の総合的な発展に関する教会の社会教説を研究して広め、福音に照らして、現在と未来の人類の必要性や懸念を認識し、解釈する。

(3)本省は、人間の総合的な発展の分野において、各部分教会、各国司教協議会、その地域と大陸の集合体および東方諸教会の位階的組織を支援し、それらの貢献を認識する。

(4)本省は、奉献・使徒的生活会から、また開発や人道支援を行う団体からの専門家を活用する。国務省の管轄権を尊重しつつ、市民社会や国際機関の代表者とも協力する。

第164条 各国司教協議会、その地域と大陸の連合体、東方諸教会の位階的組織と協力し、本省は、環境保護と総合的発展の分野における教会の教導権の実践を促進し、他のキリスト教諸派や他宗教の信者、行政当局や市民団体、国際機関と協働する。

第165条 正義と平和を促進するための活動において、本省は以下のように行動する。

  1. 国務省と協議し、各国司教協議会および東方諸教会の位階的組織の関与も仰ぎながら、紛争の予防と解決のために積極的に働きかけ、考えられる原因を特定・分析する、
  2. 人間の尊厳と基本的人権ならびに社会的、経済的、政治的権利を擁護し、促進する取り組みを行う、
  3. 人身取引、強制売春、未成年者や社会的弱者の搾取、さまざまな形態の奴隷状態や拷問に反対する取り組みを支援し、国際社会が囚人の待遇や生活環境の課題に注意深く敏感であるよう努め、死刑廃止に専心する、
  4. 各部分教会を通じて、移住者、難民、避難民、その他特別な司牧的配慮を必要とする人的移動の中にある人々に対して、必要な場合には適当な司牧上の組織を通じてでも、効果的で適切な物質的・霊的支援が、提供されるように努める。

第166条 (1)各部分教会の中で、とりわけ本省が指導する「海事使徒職(Apostolate of the Sea)」を通して、本省は、海上と港の両方の船員司牧を促進する。

(2)本省は、航空機や空港で働く人々に対しても、同様の配慮を実施する。

第167条 本省は、各国司教協議会、その地域・大陸の集合体、東方諸教会の位階的組織と協力して、貧困との闘いを推進し、人間の総合的発展を追求するために、国内および国際的な諸機関と協力する。また、腐敗防止と公正な統治のための取り組みを奨励し、それによって公共の利益が実現され、国際社会に対する信頼が高まるようにする。

第168条 本省は、とくに貧しい国々の経済的・社会的搾取、非対称的な取引関係、投機的金融、排除を生み出す開発モデルに反対する取り組みを推進することによって、公正な経済モデルと質素な生活様式を促進・擁護する。

第169条 本省は、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織と協力し、とくにこれらの主題にささげられた世界祈願日の機会に、平和の必要性、正義への専心と社会でもっとも弱く脆弱な人々との連帯の必要性についての意識を高める。

第170条 本省は、各国司教協議会、その地域・大陸の集合体、東方諸教会の位階的組織とともに、出身国からの移住や逃避の主な原因を分析し、その克服に尽力する。同様に、受け入れ国における連帯と統合のための取り組みを推進する。さらに、国務省と協議の上、開発や人道支援のための団体、難民、亡命希望者、移住者を支援するための規範の起草と採択を行う国際機関と協力する。

第171条 本省は、公正で総合的な医療を促進し、奨励する。各教区/東方教会教区、奉献・使徒的生活会、カリタス、信徒団体などを支援し、病者や障がい者の疎外を防止し、医療スタッフ、病院設備、貧しい国への医薬品供給の不足による医療の不備を克服するよう努める。さらにまた、疾病との闘いにおける研究不足にも注意を払う。

第172条 (1)本省はまた、国務省と協力し、その権限内の事項に関する政府間会議に聖座代表団に参加する。

(2)民間政府との関係にかかわる事項や、国際法に関するその他の事項について、本省は、国務省と緊密な関係を維持し、とくに文書や声明によって公に発言する場合には、そのように対応する。

第173条 本省は、紛争地域における人道援助のために、聖座の諸機関と協力し、教会の人道支援や開発支援団体とも協働する。

第174条 (1)本省は、「教皇庁社会科学アカデミー(Pontifical Academy of Social Sciences)」および「教皇庁生命アカデミー(Pontifical Academy for Life)」との緊密な関係を維持し、それらの規則を尊重する。

(2)本省は、それらの規則に基づき、「国際カリタス(Caritas Internationalis)」と「国際カトリック移住委員会(International Catholic Migration Commission)」に関して管轄権を有する。

(3)本省は、それぞれの規則の規定にしたがい、また現行法を遵守する中で、慈善のための国際団体および同じ目的のために創設される基金の設立と監督に関して、法律によって聖座に留保されている責任を行使する。


法制省

第175条 (1)「法務省(Dicastery for Legislative Texts)」は、ラテン教会および東方諸教会の教会法の理解と受容を促進、奨励し、その正しい適用のために支援を提供する。

(2)本省は、ローマ教皇、教皇庁の諸機関と部局、教区/東方教会教区司教、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織、聖座法による奉献生活の会および使徒的生活の会の総長に仕えることで、その任務を遂行する。

(3)その任務を遂行するにあたり、本省は、さまざまな大陸で働く、種々の文化圏に属する教会法学者たちと協力する。

第176条 教会の各法律の真正な解釈を定式化することは、本省の任務である。そうした法律は、より重要な問題の中で、検討中の特定の事項に関する管轄権を有する、教皇庁の諸機関および部局に諮問した上で、「最高立法者であり解釈者(Supreme Legislator and Interpreter)」であるローマ教皇によって「特定の形で(in forma specifica)」認可されたものである。

第177条 ある法律について、正式な解釈を必要としない疑義が生じた場合、本省は、教会法で定められた基準にしたがって定式化された解釈を通じて、規範の意味について適切な説明を提供することができる。このような説明は、声明または解説の形をとることができる。

第178条 ラテン教会および東方諸教会の現行法や、教会実務から生じる諸課題について研究する中で、本省は、存在しうる「法律の欠陥(lacunae legis)」を検証し、それを修正するための適切な提案をローマ教皇に提示する。また、現行法の更新の必要性を検証し、改正案を提示し、法の調和と有効性を確保する。

第179条 本省は、教皇庁の諸機関が、一般的な執行決定、訓令、およびその他法的性格を有する文書を準備するのを援助し、それらが、現行の普遍法の規定に適合し、正しい法的形式で起草されるよう保証する。

第180条 全体会議(plenary Councils)、各国司教協議会、東方諸教会の位階的組織が発行する一般的決定は、法的側面からの検証を受けるため、その決定を承認する管轄権を有する省から、本省に提出される。

第181条 関係各所の要請に応じ、本省は、ローマ教皇より下位の立法者が発布した法律や一般的決定が、教会の普遍法に適合しているかどうかを判断する。

第182条 (1)本省は、省間の会議、協議会を組織し、教会法学者の国内、国際的な団体を促進することで、ラテン教会と東方諸教会の教会法、ならびにその他の立法文書の研究を促進する。

(2)本省は、教会において法が適切に理解され、正しく適用されるように、正しい教会法の実践に特別な注意を払う。また必要な場合は、同様に、違法な実践が現れることについて管轄する権威に警告し、この点に関する助言を行う。


広報省

第183条 「広報省(Dicastery for Communication)」は、使徒座のコミュニケーション網全体を監督し、組織的な統一性を保ちながら、それぞれの運営上の特徴を尊重しながら、コミュニケーション分野における聖座の活動を統合する。そうすることで、デジタル・メディアの出現と発展、収束と双方向性という要素が顕著な状況において、システム全体が、宣教する教会の使命の必要性に対し、首尾一貫した対応ができるようにする。

第184条 本省は、現在利用可能な、そして今後出現するであろう生産モデル、技術革新、コミュニケーション手段を利用して、福音化する教会の使命の必要に応える。

第185条 割り当てられた運営上の機能に加えて、本省はまた、コミュニケーション分野における教会活動の神学的・司牧的側面を深め、発展させる。この意味で、養成の面にも取り組み、コミュニケーションが、単なる技術的、道具的な概念へと還元されないように努める。

第186条 文明と道徳の発展に奉仕する中で、教会の司牧的使命のため、多様なコミュニケーション手段を利用できるようにする働きに、信徒たちが担う各自の責任についてますます認識を深めていけるよう、本省は努力すべきである。とりわけ、「世界広報の日」の開催を通して、この認識をはぐくむよう模索する。

第187条 その活動の中で、本省は、特別法および聖座が締結した国際協定にしたがって、バチカン市国の接続性とネットワーク・インフラを活用する。その役割を果たす上で、権限を有する教皇庁の諸機関、とりわけ国務省と協力する。

第188条 本省は、他の教皇庁の諸機関と部局、聖座関連機関、バチカン市国行政庁、およびバチカン市国に拠点を置き、あるいは使徒座に属するその他の団体のコミュニケーション活動を支援する。


第6章 法務機関

第189条 (1)「法務機関(Institutions of Justice)」が提供する職務は、教会の統治において不可欠な機能の一つである。各機関がそれぞれの権限の範囲内で遂行するこの職務の目的は、教会自身の使命、すなわち、神の国を告げ知らせてこれを開始し、また、教会においてつねに最高の法である魂の救いのために、教会法上の公正さに基づく正義の秩序を通して働くことである。

(2)通常の法務機関は、「内赦院(Apostolic Penitentiary)」「使徒座署名院最高裁判所(Supreme Tribunal of the Apostolic Signatura)」「ローマ控訴院(Tribunal of the Roman Rota)」である。この3機関は互いに独立している。


内赦院

第190条 (1)内赦院は、神のいつくしみの表現としての内的法廷(internal forum)と免償に関するすべての事項について権限を有する。

(2)内赦院は、「内赦院長(Major Penitentiary)」がその長を務め、「内赦執行官(Regent)」と数人の職員によって補佐される。

第191条 内赦院は、内的法廷に関して、それが秘跡であれ非秘跡であれ、懲戒罰の赦免、免除、変更、有効化、ゆるし、その他の恩恵を与える。

第192条 (1)内赦院は、ローマの4大バジリカに、適切な権限が与えられた、十分な数のゆるしの秘跡の祭式者が配置されるようにしなければならない。

(2)内赦院は、4大バジリカに任命されたゆるしの秘跡の祭式者、およびその他の場所で任命されたゆるしの秘跡の祭式者へ適切な訓練が与えられるよう監督する。

第193条 内赦院は、教理に関して教理省の管轄権を、典礼事項に関して典礼秘跡省の管轄権を損なうことなく、免償の付与と利用についての責任を負う。


使徒座署名院最高裁判所

第194条 使徒座署名院最高裁判所は、教会の最高裁判所の機能を有し、また教会における司法の適正な運営を確保する。

第195条 (1)使徒座署名院最高裁判所は、ローマ教皇によって5年任期で任命された枢機卿、司教、司祭から構成される。枢機卿の長官がその長を務める。

(2)裁判所の実務の処理については、次官が長官を補佐する。

第196条 使徒座署名院は、通常の司法権を有する裁判所として、以下の事項について裁定する。

  1. ローマ控訴院の判決に対する無効の申し立て、および原状回復の訴え、
  2. 人の身分に関する訴訟において、ローマ控訴院が新審査を拒んだ場合、それに対する訴願、
  3. ローマ控訴院の聴取官に対してその任務遂行上の行為に基づいて提起された不信任の抗弁および他の訴訟、
  4. 同一控訴裁判所に従属する裁判所間の管轄権の競合。

第197条 (1)使徒座署名院は、ローマ教皇庁の行政裁判所として、各省または国務省が発行した、あるいはそれらによって認可された個々の行政行為に対する訴願を、その訴えられた行為が意思決定過程、または適用された手続きにおいて、何らかの法律に違反していると強く主張される場合に、裁定する。

(2)このような場合、その行為の違法性に関する判断に加え、使徒座署名院はまた、原告の請求に応じて、当該行為によって生じた損害の賠償を判断することができる。

(3)使徒座署名院はまた、ローマ教皇または教皇庁の諸機関から差し向けられる他の行政訴訟についても裁定する。最後に、各省間、または各省と国務省との間の管轄権の抵触について裁定する。

第198条 使徒座署名院は、懲戒事項に関する司法行政機関として、以下の権限をも有する。

  1. さまざまな教会裁判所における法の適正な執行を監視し、必要に応じて、職員、弁護士または訴訟代理人を懲戒すること、
  2. ローマ控訴院への訴訟付託を求めて、使徒座に提出された請願を裁定すること、
  3. 法の執行に関するその他の要請について裁定すること、
  4. 下級裁判所の権限を拡大すること、
  5. 上訴審の裁判所に認可を与え、また聖座に留保されている場合、教区間/東方教会教区間/異なる典礼間の裁判所、また地域的、全国的、さらに必要に応じて超国家的な裁判所の設立に認可を与えること。

第199条 使徒座署名院は、その固有の法律によって統治される。


ローマ控訴院

第200条 (1)ローマ控訴院は、通常、教会内の権利を保護することを目的として、使徒座の上級審の上訴裁判所としての役割を果たす。また、判例の整合性を促進し、その判決により、下級裁判所に助言を与える。

(2)ローマ控訴院はまた、婚姻の未完成の事実、および解消を許可する正当な理由の存在を裁定する権限を有する。

(3)控訴院はまた、普遍法および固有法の規範にしたがい、さまざまな状況に応じて、聖なる叙階の無効の訴訟を取り扱う権限を有する。

第201条 (1)控訴院は合議制の構造を有し、ローマ教皇が世界各地から選出した、教義、能力、経験が証明されている、一定数の裁判官で構成される。

(2)合議制裁判所(College of the Tribunal)は、同等者中の第一人者(primus inter pares)である裁判所長(Dean)によって率いられる。裁判所長は、ローマ教皇が裁判官の中から選出し、5年任期で任命する。

(3)未完成の認証婚(marriage ratum et non consummatum)の解消の手続き、および聖なる叙階の無効訴訟のための部局は、裁判所長によって率いられ、そこに帰属する職員と、指名された委員および顧問が補佐する。

第202条 (1)ローマ控訴院は、第一審の通常裁判所によって判決が下され、適法な上訴により聖座に提起された裁判の第二審の判決を下す。

(2)控訴院は、同じ使徒座裁判所およびその他の裁判所によって既に判決が下りた訴訟の第三審またはそれ以上の審級として判決を下す。ただし既判力(res iudicata)を生じた場合はこの限りではない。

第203条 (1)ローマ控訴院は、加えて、第一審で以下の判決を下す。

  1. 訴訟事件における司教。ただし、司教が代表する法人の権利または世俗財産に関する問題には関与しない、
  2. 観想修道会の首席大修院長または上級大修院長、および奉献生活の会ならびに聖座法による使徒的生活の会の総長、
  3. 教区/東方教会教区、または自然人か法人かを問わず、ローマ教皇より下の上長を有しないその他の教会法上の人、
  4. ローマ教皇が本裁判所に提起する訴訟。

(2)ローマ控訴院はまた、他の規定がない限り、これらの同じ訴訟について、第二審以降も判決を下す。

第204条 ローマ控訴院は、その固有法によって統治される。


第7章 財務機関

財務評議会

第205条 (1)「財務評議会(Council for the Economy)」は、その規則に付随するリストに記載されたとおり、教皇庁の諸機関と部局、ならびに聖座関連機関またはそれと関係する機関の、運営と財務に関する、組織と活動を監督する権限を有する。

(2)財務評議会は、教会の社会教説に照らしてその職務を遂行し、行政分野において国際的に認められた最良の慣行にしたがい、倫理的かつ効率的な行財政運営に努める。

第206条 (1)本評議会は、教会の普遍性を代表する8人の枢機卿または司教と、さまざまな国籍の専門家の中から選ばれた7人の信徒で構成される。15人のメンバーは、ローマ教皇によって5年任期で任命される。>/br>
(2)本評議会は、「議長(Coordinator)」の枢機卿が招集して長を務め、「書記(Secretary)」が補佐する。

(3)「財務事務局(Secretariat for the Economy)」の「長官(Prefect)」は、本評議会の会議に出席するが、議決権はない。

第207条 本評議会は、以下のことが確実になるための指針と規範を、ローマ教皇の認可を得るために提出する。

  1. 本評議会の監督下にある諸団体および行政機関の資産は保護されること、
  2. 財産と財務上のリスクが軽減されること、
  3. 人的、物的、財政的資源は合理的に分配され、慎重かつ効率的に、透明性をもって管理されること、
  4. 諸団体および行政機関は、それらに関連して認可された活動、計画、予算にしたがって、その業務を効率的に遂行すること。

第208条 本評議会は、その監督下にある諸団体によって行われる譲渡、取得、または通常ではない処分のうち、どの行為が、「財務事務局」の長官の承認が、有効性のために(ad validitatem)必要であるかを決定するための基準(金額の基準も含む)を定める。

第209条 (1)本評議会は、聖座の年間予算および連結財務諸表を認可し、それらをローマ教皇に提出する。

(2)使徒座空位の間、財務評議会は、聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿に、聖座の最新の連結財務諸表および当年度の予算を提供する。

第210条 本評議会は、その運営上の自主性を尊重しつつ、「財務情報監視局(Supervisory and Financial Information Authority)」に対し、必要に応じて、その業務の範囲に関連する情報を請求し、「宗教事業協会(Institute for the Works of Religion)」の活動について年次報告を受ける。

第211条 本評議会は、「財務事務局」からの提案、および聖座の各行政機関、「財務情報監視局」、さらに本評議会自体の規則で指定されたその他諸団体によって提出される提案を検討する。


財務事務局

第212条 (1)「財務事務局」は、財務および金融に関する教皇庁の事務局としての機能を有する。

(2)本事務局は、財務評議会の規約に添付されたリストに記載されている通り、教皇庁の諸機関と部局、およびその他の聖座関連機関またはそれと関係する機関に関して、運営、経済、財政的事項に対して監督および監視を行う。

(3)本事務局はまた、「聖ペトロ使徒座献金(Peter’s Pence)」やその他の教皇の基金についても適切な監督を行う。

第213条 (1)財務事務局は「長官(Prefect)」が長となり、「次官(Secretary)」が補佐する。

(2)本事務局には、2部門あり、一つは経済・財政に関する規制、監視、監督を行い、もう一つは運営に関する規制、監視、監督を行う。

第214条 (1)財務事務局は、より重要、または一般原理に関連する事項の規範に関する提案および指針について、財務評議会に諮問し、その審査のために提出しなければならない。

(2)提案や指針を作成する間、財務事務局は、各団体や行政機関の独立性および権限を十分に尊重しつつ、 適切な協議を行う。

(3)国際関係や国際法の他の主題と関連する事項については、財務事務局は、排他的権限を有する国務省と協力して行動する。

第215条 財務事務局は以下の事項を行う。

  1. 聖座の経済および財政に関する指針を発行し、運営計画と認可プログラムにしたがって、活動が実施されることを確認すること、
  2. その監視および監督を委託された機関の運営、経済、財政活動を観察し、是正措置を提案し、その実施を確保すること、
  3. 年次予算を策定し、その遵守を確認し、さらに聖座の連結貸借対照表を作成し、これらを財務評議会に提出すること、
  4. 聖座の財産および財務状況の年次リスク評価を実施し、それを財務評議会に提出すること。

第216条 財務事務局は以下の事項を行う。

  1. 教皇庁の諸機関と部局、および聖座関連機関またはそれと関係する機関が必要とする、すべての物品およびサービスが、適切な内部監査と手続きにしたがい、もっとも慎重かつ効率的で経済効果の高い方法で取得できることを目的とした、調達のための指針、方針、モデル、手続きを策定すること、
  2. 認可された規範と手続きにしたがって、運営、経済、財政管理が効果的かつ透明性のあるものとなり、公文書と会計記録が忠実に保管されるよう、適切に情報技術(IT)を利用すること。

第217条 (1)財務事務局には、聖座の人事部があり、関係諸機関と対話・協力しながら、第48条2.の規定を損なうことなく、聖座の固有法にしたがう諸機関の職員の地位および労務管理に関する、あらゆる事項に対して責任を負う。

(2)その他の権限分野の中で、財務事務局は、この人事部を通じて、すべての必要要件が満たされていることを確認した上で、職員の採用を承認し、また諸機関の組織図を認可する。

第218条 (1)財務事務局は、財務評議会が定める基準に基づき、有効性のために(ad validitatem)本事務局の認可が要求される、教皇庁の諸機関と部局、および聖座関連機関またはそれと関係する機関によって実行されるすべての譲渡、取得、または通常ではない処分行為を認可する。

(2)使徒座空位の間、財務事務局は、聖座の財政状態に関して要求されるすべての情報を、聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿に提供する。


使徒座管財局

第219条 (1)「使徒座管財局(Administration of the Patrimony of the Apostolic See)」は、ローマ教皇庁が、各部分教会のために、そして各部分教会に奉仕するために、適切にその職務を遂行するために必要な資源を提供することを目的として、聖座の不動産および動産を管理・運営する責任を負う機関である。

(2)本局はまた、その資産を聖座に委託した諸団体の不動産および動産を管理し、その資産が設立された特定の目的、および管轄する機関が認可した指針と一般方針を尊重する責任も負う。

(3)第1項および第2項で言及されている金融取引は、「宗教事業協会」を通じて実行される。

第220条 (1)使徒座管財局は、ローマ教皇庁の通常の活動に必要なすべてのものを提供し、流動性、会計、購買、その他の業務の責任を負う。

(2)使徒座管財局は、第1項に言及されている同じ業務を、聖座関連機関またはそれと関係する機関に対しても、それらが要請した場合、またはそのように規定されている場合に提供することができる。

第221条 (1)使徒座管財局は、「局長(President)」が長を務め、「次官(Secretary)」と、枢機卿、司教、司祭、信徒で構成される評議会が補佐する。評議会は、局長が本局の戦略的指針を策定し、その成果を評価するのを支援する。

(2)本局の内部の組織には、財産管理、財務、サービスという三つの機能部門がある。

(3)本局は、第16条から第17条第1項に基づいて任命された、その権限のある分野の専門家の助言を活用する。


監査室

第222条 「監査室(Office of the Auditor General)」は、聖座の連結財務諸表の監査を担当する。

第223条 (1)財務評議会によって認可された年次監査計画にしたがって、本室は、上記の連結財務諸表に含まれる、個々の教皇庁の諸機関と部局、および聖座関連機関またはそれと関係する機関の年次財務諸表を監査する責任を有する。

(2)年間監査計画は、「監査室長(Auditor General)」が財務評議会に提出し、その認可を受ける。

第224条 (1)監査室は、財務評議会、財務事務局、または第205条第1項に規定される各部局や行政機関の長の要請に基づき、以下に関連する特定の状況において監査を実施する。すなわち、金融資源または物的資源の使用または配分における異常、契約の締結または取引や譲渡の実行における不法行為、不正または詐欺行為の場合である。これらの監査は、監査室長が独立して開始することが可能で、事前に、財務評議会の議長の枢機卿に、理由を明示して通知する。

(2)監査室長は、その職務の遂行中に特定の状況を認識した各個人から報告を受ける。これらの報告を検討したのち、室長は財務事務局長官に報告書を提出し、また必要と認めた場合には、財務評議会の議長の枢機卿にも提出する。


機密保持委員会

第225条 「機密保持委員会(Commission for Confidential Matters)」は、以下の事項について権限を有する。

  1. 教会または個人のより大きな善のために、秘密を保持し、権限のある機関による調査や監督から除外されなければならない、あらゆる法的、経済的、財務的行為を承認すること、
  2. 法律により、機密保持が義務付けられている聖座の契約を監視し、それらについて警戒を続けること。

第226条 本委員会は、それ独自の規則にしたがい、ローマ教皇によって5年任期で任命された委員で構成される。「委員長(President)」によって率いられ、「書記(Secretary)」が補佐する。


投資監査院

第227条 (1)「投資監査院(Committee for Investments)」は、教会の社会教説にしたがって、聖座の株式投資の倫理性を保証すると同時に、その収益性、妥当性、リスク程度を担保する責任を負う。

(2)その規則にしたがい、本委員会は、ローマ教皇によって5年任期で任命された委員と、有識者で構成される。「議長(President)」によって率いられ、「書記(Secretary)」が補佐する。


第8章 部局

教皇公邸管理部

第228条 (1)「教皇公邸管理部(Prefecture of the Papal Household)」は、教皇公邸の内部の管理を担当し、「Cappella Pontificia」と「Familia Pontificia」(訳注:教皇が、宗教的性格[前者]または行政的性格[後者]の特定の儀礼を行うのを支援する、高官によって構成される組織)を構成するすべての人々の行動と職務に関するあらゆる事項を監督する。

(2)本管理部は、「長官(Prefect)」によって率いられ、「執行官(Regent)」が補佐し、両者はローマ教皇によって5年任期で任命される。これを複数の職員が補佐する。

第229条 (1)教皇公邸管理部は、厳密に典礼的となる部分を除き、教皇儀礼の企画と実施を担当し、優先順位を決定する。

(2)控えの間での業務を調整し、ローマ教皇の一般・特別・個人謁見、および個々人の訪問を、必要な際はいつでも国務省と協議しながら手配するのは、本管理部の任務である。国家元首、政府首脳、閣僚、公的機関代表者、その他要人、および各国大使が、教皇に公式に謁見する際には、必要なすべての手配を行う。

(3)本管理部は、ローマ教皇、枢機卿団、ローマ教皇庁の霊操の準備も担当する。

第230条 (1)本管理部は、ローマ教皇がバチカン領やローマを訪問する場合、またイタリア国内を移動する場合、その準備を担当する。

(2)本管理部長官は、バチカン領内で行われる会合や訪問の際にのみ、教皇を補佐する。


教皇儀典室

第231条 (1)「教皇儀典室(Office for the Liturgical Celebrations of the Supreme Pontiff)」は、ローマ教皇が、あるいは教皇の名において、またはその委任により枢機卿または高位聖職者が、司式、参加、あるいは補佐する、バチカンにおける典礼およびその他の聖なる祝祭のために必要なあらゆる準備を行い、さらに典礼法規の現行の規定にしたがって、それらを監督する責任を有する。また、それらが威厳をもって実施されるため、また信徒が能動的に参加するため、必要な、あるいは有用なすべての事項を手配する。

(2)本儀典室はまた、教皇の司牧訪問および使徒的旅の間に開催される、教皇によるすべての典礼の準備と実施を担当し、教皇による祝祭の独自の特徴を念頭に入れる。

第232条 (1)本儀典室は、ローマ教皇によって5年任期で任命される「儀典長(Master of Papal Liturgical Celebrations)」が長を務める。この儀典長を、ローマ教皇によって5年任期で任命される「式長(Papal Masters of Ceremony)」たちが、聖なる祝祭において補佐する。

(2)本儀典室内では、さまざまな職員と顧問が、儀典長を補佐する。

第233条 (1)儀典長はまた、教皇の香部屋と使徒宮殿の聖堂も担当する。

(2)儀典長は同様に、「システィーナ礼拝堂聖歌隊(Sistine Chapel Choir)」も担当し、聖歌隊の典礼的、司牧的、霊的、芸術的、教育的領域や活動のすべてを監督する責任も有する。同聖歌隊は、教皇庁の典礼行事に特別な奉仕を行い、また、歴代教皇の厳粛な典礼のため、同礼拝堂自体が何世紀にもわたって築き上げてきた芸術的、音楽的に貴重な遺産を保護・育成するため、本儀典室に編入された。

第234条 本儀典室の権限には、枢機卿会議の開催、および使徒座空位の間の枢機卿団の典礼の運営も含まれる。


教皇空位期間管理(Camerlengo of the Holy Roman Church)

第235条 (1)「聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿(Cardinal Camerlengo of the Holy Roman Church)」は、使徒座空位とローマ教皇の選挙に関する特別法によって与えられた職務を遂行する。

(2)聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿と「副カメルレンゴ(Vice-Camerlengo)」は、ローマ教皇によって任命される。

(3)聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿は、その職務を遂行するにあたり、その権限と責任の下にある3人の補佐の枢機卿の助けを受ける。そのうち1人は、財務評議会議長の枢機卿であり、他の2人は使徒座空位とローマ教皇の選挙に関する規範に定められた方法にしたがって選出される。

第236条 使徒座空位の間、使徒座の財産および権利を管理・運営する任務は、聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿にゆだねられる。その枢機卿が任務遂行できない場合は、副カメルレンゴがその職務を代行する。

第237条 使徒座空位の間、聖なるローマ教会のカメルレンゴの枢機卿は、以下の権利と義務を有する。

  1. 聖座に属するすべての行政機関に対し、その財産および経済状況に関する報告、ならびに進行中の特別な事業に関する情報を提出するよう要請すること、
  2. 財務評議会に対し、聖座の前年度予算および連結財務諸表、ならびに次年度予算を要求すること、
  3. 財務事務局に対し、必要な範囲で、聖座の財政状況に関する情報を要求すること。



第9章 弁護士

教皇庁弁護士名簿

第238条 「教皇庁弁護士名簿(Register of Advocates of the Roman Rota)」に加え、関係当時者の要請により、「使徒座署名院最高裁判所」における訴訟の当事者を代理し、教皇庁機関に対して提出された位階的訴願において弁護することが承認された弁護士の名簿も登録される。

第239条 (1)学位、キリスト者としての模範的生活、高潔な人間性と専門的能力によって、その適格性が認められた専門家は、本名簿に登録されることが可能である。

(2)国務省長官は、この目的のために恒久的に設置された委員会の意見を聴取した上で、第1項で定める要件を満たす、登録申請を行った専門家を名簿に登録する。これらの要件を満たさなくなった場合、その弁護士は名簿から削除される。


聖座弁護団

第240条 (1)「聖座弁護団(Corps of Advocates of the Holy See)」は、「教皇庁弁護士名簿」に登録されている人で構成されるのが望ましい。彼らは、聖座または教皇庁機関の名義で、教会裁判所または民事裁判所における訴訟の代理人を引き受けることができる。

(2)聖座の弁護士たちは、第239条第2項で言及されている委員会による聴聞ののち、国務省長官によって5年任期で任命され、その任期は更新可能である。彼らは75歳に達した時点でその職を終え、また重大な事由がある場合には、解任されることがある。

(3)聖座の弁護士たちは、キリスト者として、高潔で模範的な生活を送るとともに、教会の善のため、最高の誠実さをもって、彼らにゆだねられた任務を遂行する義務を有する。


第10章 聖座関連機関

第241条 厳密な意味でローマ教皇庁の一部ではなく、独自の法人格を有するものの、ローマ教皇、ローマ教皇庁、および普遍教会に対し、有用かつ必要な種々の役務を提供し、何らかの形で教皇庁自体と関連している、古代から存在する、あるいはより最近設立された特定の機関がある。

第242条 「バチカン文書館(Vatican Apostolic Archive)」は、普遍教会の統治に関わる決議や文書を保管、維持するという特定の業務を遂行する。その結果として、一義的には、聖座とローマ教皇庁がその活動を遂行する上で、それらを利用できるようになり、また二義的にそれらは、教皇の許可により、国や宗教を問わず、すべての学者のために、歴史の流れの中で教会生活に密接に結びついた出来事に関する知識(世俗的なものも含めて)の源泉となりうる。

第243条 古代に創設された「バチカン図書館(Vatican Apostolic Library)」は、使徒座の活動を支援し、文化の発展と普及に貢献する、教会にとって重要な機関である。その種々の部門を通じて、膨大な学術・芸術の遺産を収集・保存し、真理を探究する学者たちが利用可能にする任務を担う。

第244条 「聖ペトロ大聖堂管理部(Fabric of Saint Peter’s)」は、その使徒の殉教の記憶と墓を保存する聖ペトロ大聖堂に関するあらゆる事項を取り扱う。これには、建物の保存と美観の維持、職員・巡礼者・訪問者の内部規律が含まれ、それ独自の規範にしたがって行われている。必要に応じて、本管理部の「議長(President)」と「事務局長(Secretary)」は、大聖堂の「祭式者会(Chapter)」と協議の上、活動する。

第245条 「考古学委員会(Pontifical Commission for Sacred Archaeology)」は、イタリアのキリスト教カタコンベの研究、保存、保護、整備を担当する。このカタコンベでは、初代キリスト教共同体による信仰と芸術のあかしが、巡礼者や訪問者に深いメッセージを伝え続けている。

第246条 神学と人間科学のさまざまな分野における真理の探求と普及のために、カトリック教会にはさまざまなアカデミーが設立されており、中でも、「教皇庁科学アカデミー(Pontifical Academy of Sciences)」「教皇庁社会科学アカデミー(Pontifical Academy of Social Sciences)」「教皇庁生命アカデミー(Pontifical Academy for Life)」がとくに有名である。

第247条 聖座に直属する学術機関における教育の質に関する文化を促進・発展させ、その質的基準が国際的に妥当であることを確保するため、聖座は「カトリック大学・学部の評価機関(Agency for the Evaluation and Promotion of Quality in Ecclesiastical Universities and Faculties)」を設立した。

第248条 「財務情報監視局(Supervisory and Financial Information Authority)」は、法律およびそれ独自の規則に基づき、以下の機能を実施する。その監督対象となっている事業体および対象者に関する資金洗浄およびテロ資金供与の防止・対策を目的とした監督、専門的に金融活動を行う事業体に対する健全性の監督、専門的に金融活動を行う事業体に対する健全性の規制、および法律の定める場合における資金洗浄およびテロ資金供与の防止・対策に関する規制、である。こうした役割において、本監視局はまた、金融情報分析も実施する。

第249条 上記すべての聖座関連機関は、その構造および運営に関して、それぞれ独自の法律にしたがって統治される。


第11章 移行規範

第250条 (1)本『使徒憲章』の規範の一般規定は、国務省、および各省、諸機関、部局、さらにローマ教皇庁の一部、あるいは聖座と関係する諸機関に適用される。独自の規則や法令をも有する機関は、それらが現行の本『使徒憲章』に反しない限りにおいてのみ、それらを遵守し、その適用案をできるだけ早く、ローマ教皇の認可を得るために提出しなければならない。

(2)第1項で言及されている機関に対して現在適用されている執行のための規範(たとえば『ローマ教皇庁一般規則』『オルド・セルバンドゥス』『教皇庁諸機関・部局の内部手続規則(internal modus procedendi of curial institutions and offices)』)は、新たな『オルド・セルバンドゥス』や規則が認可されるまで、本『使徒憲章』の規範に反しない限り、すべてにおいて遵守されるべきである。

(3)本『使徒憲章』の発効により、使徒憲章『パストル・ボヌス』は完全に廃止され、それに置き換えられる。これに伴い、同憲章で規定され、本憲章において規定、あるいは再編成されていないローマ教皇庁の諸機関も廃止される。



 わたしはここに、本『使徒憲章』を、現在および将来にわたって、堅固で有効かつ効力をもち、2022年6月5日、聖霊降臨の祭日に全面的に発効することを布告する。また、たとえ特筆すべき点があったとしても、いかなる反対意見があっても、本憲章はそれが適用される人々によって、現在および将来にわたって、その細部に至るまで完全に遵守されるべきものであると布告する。

ローマ、聖ペトロ大聖堂にて
教皇在位10年目の2022年3月19日、聖母マリアの浄配、聖ヨセフの祭日
フランシスコ

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