
2026年8月21日(金)、クレメンスの間で行った国際カトリック議員ネットワーク(International Catholic Legislators Network)第17回年次総会参加者へのあいさつ(原文英語)。 […]
枢機卿の皆様
国際カトリック議員ネットワーク会員の皆様
親愛なるキリストにおける兄弟姉妹の皆様。
国際カトリック議員ネットワークの会員の皆様と、とくに同ネットワークの守護者である(クリストフ・)シェーンボルン枢機卿と(チャールズ・マウン・)ボー枢機卿様にごあいさつできることをうれしく思います。
皆様の年次総会のテーマである「人間の尊厳と人工知能――挑戦、機会、管理」(Human Dignity and Artificial Intelligence: Challenges, Chances and Control)は、現代における特徴的な問題の一つを考察する機会を皆様に与えます。人工知能の目覚ましい進歩は、これまでの世代の人々がほとんど想像できなかった展望を開きつつあります。しかし、あらゆる技術の成果は人類に道徳的な問いを投げかけます。それは、〈われわれは何をなしうるか〉だけでなく、〈われわれは何をなすべきか〉という問いです。実際、人類家族は今日、決定的な選択に直面しています。回勅『人間の偉大さ――AIの時代における人格の擁護』(Magnifica Humanitas)で述べたとおり、わたしたちは、力と効率と管理が人間の顔を曇らしうる新たなバベルの塔を築く誘惑に駆られるかもしれません。あるいは、技術がすべての人の全人的発展に役立つ文明を築くことも可能です(同7-10参照)。決定的に重要な問いは同じであり続けます。それは、技術が、人々がより友愛に満ち、自己と他者に対して責任をもつために役立つかという問いです。このことに関して、教会の社会教説の諸原理――すべての人の不可侵の尊厳、共通善、財貨は万人のためにあること、補完性、連帯――は識別のための確かな基準を提供してくれます。
親愛なる議員の皆様。皆様の使命はこの挑戦の中心に皆様を位置づけます。共通善のための技術の管理のための政策の策定に責任をもつ皆様の課題は、技術革新(イノベーション)を阻害することではなく、それを賢明に導くことです(教皇フランシスコ「国際カトリック議員ネットワーク主催会議参加者へのあいさつ(2021年8月27日)」参照)。健全な立法は、基本的人権と自由を守りながら、科学技術の創造性を奨励すべきです。立法は使用者を搾取から保護し、個人のプライバシーを守り、新たな技術の使用における透明性を確保し、技術が民主的制度を強化することを保障しなければなりません。
そのため、「適切な法的枠組み、独立した監視、ユーザー教育、自らの責務を放棄しない政治が求められます」(教皇レオ十四世回勅『人間の偉大さ――AIの時代における人格の擁護』106[Magnifica Humanitas])。こうした監視は、地域、国家、国際レベルといった、多くのレベルで行われなければなりません。それは、「使用すべき倫理的枠組みを議論し、それを共通の社会正義の基準のもとに置」(同107)き、単独のイデオロギーないし利害が人工知能システムに組み込まれた価値を支配しないようにするためです。
同時に、人工知能の急速な発展は、新たなかたちの技術的依存を生み出し、貧しい国々をますます豊かな国々に依存させるおそれがあります。わたしたちは、技術革新がイデオロギー的ないし経済的植民地主義の新たな道具とならないように、この点に関して警戒し続けなければなりません(同178-179参照)。残念ながら、わたしたちは巧妙な形態の支配を目の当たりにしています。そこではアルゴリズムが、誰が注目され誰が目に見えなくされるかを決定し、デジタルプラットフォームが説明責任なしに公共の言説を形づくり、労働者の尊厳がシステムによる最適化に従属させられます(同95、150、171参照)。こうした展開は、奉仕を伴わない支配と統制に対する古くからの誘惑の新たな姿をあらわにします。
教会は、このような権力の文化に対して、「愛の文明」(教皇パウロ六世「アレルヤの祈り(1970年5月17日)。教皇レオ十四世回勅『人間の偉大さ――AIの時代における人格の擁護』186[Magnifica Humanitas]参照」を提示します。それは、愛と共感と責任をもちうる心を養うことによって人工知能を賢明に統治する文明です。このような社会において、人間性の第一の学びやは家庭です。なぜなら、わたしたちは家庭において、計算より前に信頼を、競争より前に寛大さを、分裂より前に対話を、権力より前に愛を最初に学ぶからです。人工知能が――人間と人間関係をデータと模倣に歪曲化することによって、若者の心を欲望をゆがめるコンテンツで満たすことによって、あるいは、家庭生活を経済的に不安定にする経済モデルによって――この社会の最初の細胞を蝕むことは決して許されません。そのためわたしは、皆様が、結婚と家庭を強化し、両親の教育的使命を支え、若者が信頼をもって未来に目を向けることを可能にする政策を促進してくださるように促します。
親愛なる友人の皆様。世界が必要としているのは、人間性を縮小する人工知能ではありません。むしろ世界が必要としているのは、知恵に照らされた人間の知能、良心に導かれた政治的権威、愛によって方向づけられた技術革新です。こうして初めて人工知能は人類の競争相手ではなく、共通善に奉仕するものとなるのです。
このような思いをもって、皆様の議論が皆様の国と人類家族全体に豊かな実りをもたらすことを祈ります。よき勧めの聖母である聖なるおとめマリアが、つねに皆様に同伴してくださいますように。皆様と、皆様のご家族と、皆様の奉仕にゆだねられたすべての人の上に神の豊かな祝福を心から祈り求めます。ご清聴ありがとうございます。
