第25回日韓司教交流会



第25回 日韓司教交流会――ともに続ける「和解の旅」 歩み振り返り今後を展望

 韓国と日本が歴史認識の違いに直面していた1996年、両国の司教の間で始まった「日韓司教交流会」が25回目を迎え、東京カテドラルなどを会場に11月14日から16日まで開かれました。
 韓国から23人、日本から16人の司教が参加してキリシタン殉教地などを訪れたほか、これまでの交流を振り返り、今後の展望を話し合いました。2019年の教皇訪日とコロナ禍による延期を経て、5年ぶりの開催です。
 今回のテーマは「日韓司教交流会25周年を迎えて:日韓司教交流会の昨日と今日―シノドスの精神でともに歩む―」です。

 両国の司教らは14日、都内のホテルでこれまでの交流会の歩みを振り返る勉強会を行い、カン・ウイル名誉司教(チェジュ教区)と松浦悟郎司教(名古屋教区)が講演しました。

  • 第25回日韓司教交流会 11月15日勉強会
    第25回日韓司教交流会 11月14日 「交流会の歩みを振り返る勉強会」

 カン司教は、2005年までテジョン教区長を務めた故キョン・ガムニョン司教のエピソードを紹介しました。キョン司教は第2次世界大戦中、15歳で日本に徴用され、工場で旋盤工として働く中で指にけがを負いました。指に一生傷跡と変形が残り、長い間日本に否定的な感情を持っていましたが、司教になってから、司祭が足りない日本の教会に韓国人神学生を高学年生から選抜して派遣し、日本で司祭として養成し働くことを提案し、実現のため尽力しました。司教である自分がまず日本を許し、和解の手を差し出すためでした。その実りとして現在、日本のさまざまな教区で50人もの韓国人司祭が奉仕しています。
 松浦司教はキョン司教が、「何よりも司祭派遣を『和解のしるし』として提案してくださったことに深い感銘を受けました」と話しました。今後両国に政治的、社会的な問題が起こり、険悪な状況になることがあれば、その時こそ両国の司教たちは「『和解の旅を続けている』ということを教会内外に示していくことが大事」だと強調しました。

大震災朝鮮人犠牲者追悼碑で献花と祈り

 両国の司教は、15日にはバスで都内での現地学習に出かけ、まず都立横網(よこあみ)町公園(墨田区)を訪ねました。

  • 都立横網(よこあみ)町公園(墨田区)
    都立横網(よこあみ)町公園(墨田区)

 今年で関東大震災から100年を迎えたましたが、政府は今も大震災後の混乱の中で起きた朝鮮人虐殺の事実を認めていません。日本カトリック司教協議会社会司教委員会(委員長・勝谷太治司教/札幌教区)は9月1日付で声明を発表し、虐殺の歴史に真摯(しんし)に向き合うよう政府に求めています。
 日韓両国の司教協議会会長である菊地功大司教(東京教区)とイ・ヨンフン司教(スウォン教区)は、公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑に献花し、司教全員で祈りをささげました。
 浅草教会(台東区)では、元和(げんな)の大殉教400年を記念し、江戸の殉教者、鳥越キリシタンについて講話を聞き、殉教碑に献花しました。

青年たちと共に公開シンポジウム

 午後からは、公開シンポジウム「今後の韓国と日本の教会の交流」が東京カテドラル関口教会(文京区)で行われ、イ・ギホン司教(ウィジョンブ教区)、白浜満司教(広島教区)と、青年3人が登壇しました。

  • 11月15日「今後の韓国と日本の教会の交流」東京カテドラル関口教会(文京区)
    11月15日「今後の韓国と日本の教会の交流」東京カテドラル関口教会(文京区)

 両司教は、日韓司教交流25年の実りとして、国際的な会合から青年の集いまで、両国の教区間で行われている交流の例を挙げました。
 イ司教は、日本への司祭派遣・宣教に向けて、ウィジョンブ教区の神学生を休暇中などに日本へ派遣していることも紹介し、「韓国が(近くて遠い国ではなく)″近くて近い国〟になるよう」望むと話しました。
 白浜司教は今後の展望について、①核兵器廃絶など、社会的責任を担うために日韓の教会が連帯する②福音宣教や教会運営に向けた信徒と司祭の協力態勢について韓国の教会に学ぶ③現在は途絶えている日韓青年交流会の再開を希望している―などと話しました。
 関口教会に集う東京韓人教会の青年代表パーク・ヒョンジンさん(37)は、同教会の青年の現状や課題について話しました。韓人教会の青年は、日本の青年と交流することによって信仰生活が新たになるのではないかと語り、27年に開かれるワールドユースデー(WYD)ソウル大会に向けて両教会の青年の交流が進むよう期待していると話ました。
 小林豊さん(28/東京・関口教会)と、竹内美祈(みのり)さん(26/東京・麹町教会)は、日本の教会や青年の課題が多い中、日韓の青年間の交流は支えになると言い、「青年は、情熱をもって役割を果たすことができる」と強調しました。日韓青年交流会の再開のほか、青年司牧や4年後のWYDのための「青年も組み込んだ態勢づくり」を提言しました。

ともに記念ミサ

 カテドラルでの日韓司教交流会25周年記念ミサは、菊地大司教の主司式で行われました。

  • 11月15日 日韓司教交流会25周年記念ミサ
    11月15日 日韓司教交流会25周年記念ミサ

 菊地大司教は、司教の交流によって日韓の教会の交流は司祭や修道者、信徒にも広がったと語り、日韓の教会には互いに支え合い、連帯のうちに共に歩むシノドス(世界代表司教会議)の姿が現れていると話しました。
 「長く教会を離れていた」と言うノ・へグンさん(50/東京韓人教会)は、6月に韓人教会の存在を知り「教会へ戻った」ばかり。日韓の歴史認識の相違で揺れた中で教会が交流し続けたことを知り、その尊さを強く感じたと話しました。
 神奈川・二俣川(ふたまたがわ)教会の大賀 唯(おおが ゆい)さん(37)は10月、ウィジョンブ教区から派遣されている同教会主任のカン・ジンク神父と共に青年6人を連れて同教区を訪問しました。韓国の信徒の信仰に触れて自身の信仰を見つめ直していた青年たちの姿が印象深く、この日あらためて韓国と日本の近さを感じたと話しました。

 両国の司教は、25回目を迎えた日韓司教交流会の記念メッセージを発表する予定です。
(カトリック新聞第4698号より転載)





『日韓司教交流会25周年記念資料集「ともに歩んだ25年 親交と一致の旅」』

 日本カトリック司教協議会(CBCJ)と韓国カトリック司教協議会(CBCK)は、2022年に『日韓司教交流会25周年記念資料集「ともに歩んだ25年 親交と一致の旅」』を日本語版、韓国語版それぞれ出版しました。

 この資料集は、第1回日韓司教交流会(1996年)から第24回日韓司教交流会(2018年)までの歩みを記した記録と資料をまとめたものです。


『日韓司教交流会25周年記念資料集「ともに歩んだ25年 親交と一致の旅」』
発行式典・両国司教紹介動画(2022年11月15日収録)
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カトリック中央協議会では、この『日韓司教交流会25周年記念資料集「ともに歩んだ25年 親交と一致の旅」』の日本語版をご希望の方に本体価格無料(送料のみご負担ください)でお送りしています。

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