離日のあいさつ

1981年2月26日20時40分
長崎市内・カトリックセンターで

親愛なる皆さん

 この四日間、日本であたたかいおもてなしをいただいた後、ローマに帰る日がやってまいりました。

 この美しい国を去る前に、私に絶大な厚意をよせてくださった人々に深く感謝したいと思います。

 まずその第一は天皇陛下です。日本国民の中で果しておられる陛下のお役目に対し、個人的に敬意をあらわす機会に恵まれたことを大きなよろこび、光栄と思っています。

 また礼を尽して私を歓迎し、私の日本訪問や国内の移動に対し便宜をはかってくださった日本政府に、あらためて感謝いたします。警護の任にあたられた方々や、何かの方法で私の訪問に尽してくださった方々にもお礼を申します。

 ここで、私の訪問を無事に果すことができたことにつき、カトリック教会の司教方、そして私をキリストにおける父、きょうだい、友として迎えてくださった司祭、修道者、シスター、信者の皆さんに“ありがとう”をいいます。私がお会いした人々、またお会いできなかった人々にも、友愛と祈りのきずなでかたく結ばれていることを知っていただきたいと思います。信仰において、いつも私は皆さんと共にいます。キリスト教的愛と奉仕の精神をこの国にもたらした聖フランシスコ・ザビエノレの理想を、いつまでも保ち続けてください。

 最後に、日本の皆さんに対して、そのあたたかい歓迎とこころからのおもてなしに感謝いたします。皆さんが日本のすばらしい人問的また宗教的文化を、末永く保ってくださるようおねがいします。そして皆さんの助けを必要としている世界に、皆さんのタレントを十分発揮されることをねがってやみません。

 私は日本の皆さんが平和の理想をいつも心にいだき、人間の生命と尊厳の擁護、そして絶えざる正義の追求を通して、それをまもり通すことができますように祈っています。また精神的な価値が人間を支え、進歩の名のもとにそれが抹消されることのない、そんな世界の建設を日本の皆さんが目ざされるよう祈っています。

 東京から広島、そして長崎へと旅ができたのは、本当にうれしいことでした。日本や世界中のマスコミの高度な技術と協力のおかげで、平和と人類のしあわせをねがう私の訴えは、世界中に屈いたことでありましょう。深く感謝します。

 私の最後の祈りは、神の恵みが日本を導く人々の上に、また日本の皆さんと共にゆたかにありますようにとねがうことです。私のこころからの感謝と尊敬といつまでもかわらない愛を皆さんにのべて、おわかれしたいと思います。

 “ありがとうございました。さようなら!”

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