「ヤング&ポープ大集会」での第1、第2メッセージ

印刷する
1981年2月24日17時15分
日本武道館

東京・九段の日本武道館には、6000人の青年が集まった。
司会をしたのはアグネス・チャンさん

「日本の青年に向って」

(第1のメッセージ)
親愛なる青少年の皆さん、

1) ここ東京で皆さんとお会いすることは、私にとって特別なひとときです。今まで、私はヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカ、アフリカの青少年と過ごす大きな喜びを経験しました。今は、日本の皆さんと、ともにいる喜びを味わっています。
 私は、どこに行っても、青少年と一緒に彼ら自身の問題や人生観について話し合うのが大好きです。きょう、皆さんと一緒にいるのも、実はそのためです。皆さんと、「何のために生きるのか?」、「一体どこへ行くのか?」という人生の目的と未来について、一緒に考えてみたいのです。

2) 愛する皆さん、皆さんは素晴しく進歩した技術社会の中に住んでいます。皆さんは、生活を楽にし、面白く、また楽しくしてくれるものに囲まれています。しかし、進歩はそれだけで人間の欲求を満たしてくれるわけではありません。皆さんの心に、平和をもたらすものでもありません。むしろ、現代の進歩に伴う物質主義や、楽な生活や自己中心的な生き方が、いつの間にか、皆さんの生活の中に入りこんできて、本当に満足を与える、道徳的、精神的価値をもみ消してしまう危険があります。

3) 皆さんは、若者として、世界のビジョンと人間性のビジョンをしっかりと持つことが大切です。正しい教育とは、自然の美しさが、神の映しであることを理解させることです。これは、皆さんにとって難しいことではありません。なぜなら、誰でも知’っているように、皆さんは美しい自然を愛し、たとえ小さくても家の庭に木や花を植えています。勉強や仕事のために地方から大都市にやって来る若者たちも、春になって花が咲き、秋になって自然が紅葉すると、田舎に帰りたくなります。このように、皆さんはいつも自然との接触を保とうとしています。どうか、この美しい国の自然を大切にし、あらゆる公害から守ってください。

(第2のメッセージ)
1) 自然と人間のビジョンは、皆さんに、こう訴えます。「他の人びとに向って皆さんの心を開きなさい。皆さんの近くにいる人びとに、国境を越えてすべての人びとに心を開きなさい!」と。世界中の若者たちは、みんな世界的連帯性を持つように招かれています。ですから、若者として、貧しい人、飢えている人、身体の不自由な人、病気の人、苦しんでいる人、社会からはじき出されている人に、関心を持つべきです。かれらがどこにいようと、人間として皆さんの兄弟であり姉妹なのです。
 皆さんは、富が正しく分配され、重荷をともにになうようなよりよき世界の建設のために、分までずい分努力して来ました。しかし、まだまだかけるべき橋が残っています。友情と兄弟愛の橋、正義と愛と平和の橋などです。まだ世界には、沢山の人が皆さんの激励と援助を必要としているのです。

2) さて、隣人に対する皆さんの務めを知ることは、人生と人間のビジョンを持つことと深い関係があります。真の人間完成は、自己を与えることにあります。そして、自己を与えることが完全であればあるほど、生きる喜びや満足も完全なものになることを、皆さんは知るようになるでしょう。助けを求めている人びとに手をさしのべる時、皆さんはかれらの希望、かれらの生きて行く力の源ともなるのです。同時に、自分自身の倦怠感や失望にも、他の人びとの中に生まれた希望によって打ち勝つことができるでしょう。人生の挑戦をともに受けて立つこと、お互いに関心を持ちあうこと、頂上を目指す登山者たちのように、みんなが手をとりあって人生の目標を目指して努力すること、これが現代の若者たちの使命なのです。
 日本の青少年の皆さん、いつも、この美しい国の自然に眼を向けてください。特に、この自然を創られた神に眼をあげてみてください。神の美しさと偉大さは、自然と人間の中に輝いています。自然の美を観る時、皆さんの驚きが、ただそれだけに留まってはなりません。『懺悔録』で有名なアウグスチヌスは、「眼を私たちのかなたに向けなさい。私たちは、神から創られたものにすぎない」という内心の声をききました。皆さんも、心の奥で叫んでいる同じ声に耳を傾けてください。

3) 皆さんのお許しを得て、カトリック教会の青少年に少し言葉を述べたいと思います。私たちは、処女マリアから生まれ、人間となられた神の子イエズス・キリストの中に、人間性の完成された姿、神の素晴しさをみます。キリストこそ、人間の尊厳と人生の目的を示してくださいます。私たちは、キリストの教えと、兄弟愛のメッセージを忠実に守ることによって、私たちの兄弟姉妹に、最高の奉仕をすることができるのです。聖書にあるように、「何事も人からして欲しいと思うことを、あなたも他の人にしなさい!」(マタイ福音書7章12節)という聖句を実行してください。そのようにして世界中の若者やすべての人びとと一緒に、手をとりあって働くうちに、皆さんの人生の目的と使命がもっと良くわかり、調和と平和、正義と愛の新しい世界を築くことができるでしょう。

 愛する日本の青少年の皆さん、

 私は皆さんに、心からの信頼をこめて訴えたいのです! どんなエゴイズムの誘惑にも負けないでください! そして、精神的なものと、この世界に大きく心を開いてくださしい! 世界中の若者たちと手をとりあって、明日の世界を築いてください! 

 そうです、愛する日本の青少年の皆さん! 

神の助けのもとに、未来は皆さんの手の中にあるのです。未来は、皆さんのものなのです。

PAGE TOP