
バチカンにおける超国家的学術研究機関である生命アカデミーが、ヒト胚をテーマに開催された2006年の年次大会のおもな内容を編集。
専門的な発生生物学の最新知識を平明に解説した上で、初期胚の人格を否定するさまざまな見解に対し、実体論の立場から明確な人格概念を提示し、道徳的観点からは存在論とはかかわりなく、ただ人が存在しているという単純な事実のみで人格の尊厳を尊重し保護する十分な理由があることを論証しています。巻末には生命アカデミーの客員会員である訳者・秋葉悦子氏(富山大学経済学部経営法学科教授)による、アカデミーの活動内容の紹介も含めた解説を収録いたしました。
生命倫理学の最先端議論に対し明快な回答を提示する本書は、積極的な議論が行われぬままヒト胚研究の積極的な推進が図られている日本において、ぜひとも広く読まれて欲しい一冊です。
原タイトル | THE HUMAN EMBRYO IN ITS PRE-IMPLANTATION PHASEScientific aspects and bioethical considerations |
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著者 | 教皇庁生命アカデミー |
発行日 | 2008/9/8 |
判型 | A5 |
ページ数 | 56 P |
価格 | 本体価格 1200円(税込1320円) |
ISBN | 978-4-87750-141-9 |
在庫状況 | 発売中 |
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目次
まえがき
序論
科学的側面
受精のプロセス
胚の発達軸の設置
母の子宮に着床する前の胚の発達
母と胚の対話および着床の準備
出生前診断と着床前診断
生命倫理学的考察
ヒト胚に関する生命倫理学の論争
倫理学的および法律学的考察
解説(秋葉悦子)
推薦の言葉 石島武一(日本カトリック医師会長)
本書は教皇庁生命アカデミーがヒト胚をテーマに開いた第12回総会(2006年)の大会の内容を一般向けに要約・編集したものである。生命アカデミーは各界の世界的権威者159人からなる学術研究機関で、訳者の秋葉悦子氏も客員会員の1人である。
本書は3つの部分からなる。最初の「科学的側面」では発生学の最新データによる卵細胞の受精から着床までの過程を詳述し、人は受精の瞬間から精緻なプログラムに従って人としての発達を始めることを証明している。次の「生命倫理学的考察」では初期胚の「人格の尊厳」をめぐる今日の論争が紹介され、その中で実体論の「受精の瞬間から人格が存在する」との説をとっている。3番目の「倫理学的および法律学的考察」では人の尊厳を持つ胚という最も弱い存在を法的に保護する義務について語っている。
本書はヒト胚の破壊を伴う研究の倫理性を問うものである。日本ではこの問題はほとんど議論されないが、もっと真剣に考える必要がある。本書はそのためのよきガイドブックである。秋葉氏は法学者であるが、医学の専門用語の訳も正確で、一般人にも理解しやすい本になっている。一読をお奨めしたい。