第59回国連総会に提出された、人クローン作成に関する教皇庁見解

解説 国連と人クローン個体産生禁止条約審議  2004年9月14日から始まった第59回国連(国際連合)総会において、人クローン個体産生禁止条約に関する審議が行われています。国連における人クローン作成をめぐる議論はすでに2 […]

解説

国連と人クローン個体産生禁止条約審議

 2004年9月14日から始まった第59回国連(国際連合)総会において、人クローン個体産生禁止条約に関する審議が行われています。国連における人クローン作成をめぐる議論はすでに2001年から開始されました。2003年の第57回国連総会第6委員会では、コンセンサスが得られず、議論を1年間延長することが決まりました。今年2004年の第59回国連総会では、10月21日と22日に、第6委員会で公式協議が行われましたが、合意を得ず、現在、非公式の交渉が続けられています。

 国連における人クローン禁止条約審議では、2種類の人クローン作成が問題になっています。「生殖目的クローニング」(reproductive cloning)は、人クローン個体の産生をめざすもので、これを禁止することについては国際的な合意が得られています。「治療(研究)目的クローニング」(therapeutic
cloning)は、人クローン胚からヒト胚性幹細胞(ES細胞)を採取して、難病治療に応用することをめざすものです。国連審議では、生殖目的クローニングと治療目的クローニングの両方の禁止を求めるコスタリカ案(聖座〔ローマ教皇庁=バチカン〕、アメリカなどが賛成)と、生殖目的クローニングのみを禁止しようとするベルギー案(フランス、ドイツ、日本などが賛成)が提出されています。2004年10月22日現在、コスタリカ案の共同提出国は63か国、ベルギー案の共同提出国は21か国です。

聖座と国連審議

本年10月の協議に先立ち、聖座はクローンに関する見解を国連に提出し、あらためて生殖目的と治療目的の両方のクローニングの禁止を求めました。次に訳出したのは、その全文です。
人クローン個体産生禁止に関する国際協議に向けて のページへ

聖座のクローニングに関する見解については、以下の声明も合わせて参照されることをお勧めします。

  • 教皇庁立生命アカデミー「クローニングに関する考察(1997年)」、秋葉悦子訳、『神学ダイジェスト』94号
    (2003年夏)、113-121頁。
  • 同「ヒト胚性幹細胞の作製及び科学的・治療的用途に対する宣言(2000年8月25日)」、秋葉悦子訳、『神学ダイジェスト』90号(2001年夏)、4~11頁。

クローン研究と日本の教会

なお、日本カトリック司教協議会は、生殖目的クローニングに反対する声明を1997年に発表しました(日本司教協議会常任委員会「クローン人間の研究に関する日本カトリック教会の見解」1997年5月3日)。
また、今年2004年7月に、日本では、国として治療目的クローニングを容認する方針を決定しました。これに関連して、日本カトリック司教協議会は治療目的クローニングに反対する次の意見表明を行っています。

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