「聖体の年」の典礼に関する提案

教皇ヨハネ・パウロ2世は昨年10月から今年の10月までを「聖体の年」と定めました。これを受けて教皇庁典礼秘跡省は、「聖体の年」を送るための提案“The Year of the Eucharist – Suggestions and Proposals”を発表しました。その中から参考になると思われる具体的な提案を抜粋して紹介します。教区、小教区、修道院など個々の状況は異なりますから、それぞれの提案の中からふさわしいものを実践してください。
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1.基本的な提案

(1)エウカリスチアに関するカテケジスについて
旧約聖書でどのようにエウカリスチアの秘義が準備されてきたか、イエスによるエウカリスチアの制定、およびエウカリスチアの秘義のさまざまな側面に関する新約聖書の箇所が重要。たとえば、聖体の信心ミサのために配分された朗読箇所(『朗読聖書の緒言』92ページ)が参考になる。
教父たちがエウカリスチアについてどのように述べてきたか。またエウカリスチアについての神学的発展、とくにトリエント公会議と第2バチカン公会議、最近の教導権の文書、『カトリック教会のカテキズム』も参照。
ミサの式次第と『ミサ以外のときの聖体拝領と聖体礼拝』の儀式や祈願の説明。
教会芸術をとおしてエウカリスチアの秘義がどのように伝えられてきたか。
(2)感謝の祭儀とミサ以外のときの聖体礼拝について
祭儀の「場」(教会堂・祭壇・朗読台・説教を行なう場所など)。
信者による典礼への充実した、意識的な、行動的な参加。
キリストの代理である司式司祭・助祭・他の奉仕者の役割。
ことばの食卓(ことばの典礼)からからだの食卓(感謝の典礼)への移行。
祭儀を行う「時」(日曜日、週日、典礼暦)。
エウカリスチアの秘跡と他の秘跡や準秘跡などとのつながり。
内的な参加と外的な参加、とくに沈黙の大切さ。
歌と音楽。
典礼規則の遵守。
病者の聖体拝領と臨終の聖体拝領。
個人で、あるいは共同で行う聖体の礼拝。
聖体行列。
(3)エウカリスチアの霊性について
エウカリスチアは霊的生活の頂点であり源泉である。
定期的な聖体拝領は、個々の召命と生活(叙階を受けた奉仕者、配偶者と両親、奉献生活など)にふさわしい恵みを保ち、生活のさまざまな状況(喜びと悲しみ、問題と課題、病気と苦痛など)を照らす。
いつくしみと一致と兄弟的愛はエウカリスチアの実りであり、秘跡において実現するキリストとの一致を明らかにする。エウカリスチアは一致の源泉であり現れである(『主よ、一緒にお泊まりください』第3章)。
派遣の根源であり計画であるエウカリスチア(『主よ、一緒にお泊まりください』第4章)。
(4)マリアおよび聖人の生き方とエウカリスチアについて
マリアとともにキリストと似た者となること(『おとめマリアのロザリオ』15)。
マリアは教会とともに、また教会の母として、感謝の祭儀が行われるときにいつもそこにいる(『教会にいのちを与える聖体』57)。
エウカリスチアはわれわれを聖人とし、エウカリスチアによるいのちに包まれずして聖人の聖性はない。
聖人はエウカリスチアに対する信心の優れた解説者であり、聖人のうちにエウカリスチアの神学が輝いている(『教会にいのちを与える聖体』62)。
アンチオケの聖イグナチオ、聖アンブロジオ、聖ベルナルドと聖トマス・アクィナス、聖パスクアル・バイロンと聖アルフォンソ・リゴリ、シエナの聖カタリナとアビラの聖テレジア、聖ペトロ・ユリアノ・エイマールとピエトレルチーナの聖ピオらが示した、エウカリスチアに対する愛の模範。

2.典礼に関する具体的な提案

(1)日曜日について
感謝の祭儀は日曜日の中心である。
復活したキリストとエウカリスチアとのつながりは、エマオの弟子の物語にとくに示されており、弟子たちは神のことばを聞き、パンが裂かれることによってエウカリスチアの秘義の深みに導かれた。
ミサを注意深く準備することによって、教会が現される(『主の日』34-36、『教会にいのちを与える聖体』41、『新千年期の初めに』36)。
共同体において日曜日のミサを活気づけるという目的が達せられるようにする。また、ミサ以外のときの聖体礼拝の機会も増やす(『主よ、一緒にお泊まりください』23、29)。
(2)復活徹夜祭と聖体拝領について
復活徹夜祭において、感謝の祭儀は頂点である。感謝の祭儀は、十字架のいけにえを記念し復活したキリストが現存する、最も完全な意味で復活の秘跡である。
復活徹夜祭では、ミサを急がずに行うことが勧められる。聖体拝領はこの夜に祝われる秘義への完全な参加であり、裁治権者の決定のもとで、可能であれば両形態の拝領を実施することかできる。
復活の八日間は、新しく洗礼を受けた人々にとって大切な期間である。復活の八日目に子どもの初聖体を行う習慣がある。また、とくにこの八日間、病者に聖体が授けられるようにする。
復活節の間、司牧者は、とくにこの時期に聖体拝領をするようにという教会の教えの意味を思い起こすべきである(教会法920条)。それによって、日曜日ごとに感謝の祭儀に参加することの必要性が明らかになる。
(3)聖木曜日について
この日もしくは復活祭に近い別の日に行われる聖香油のミサには、共同司式する司祭とともに信者もできるかぎり参加して、聖体拝領することか勧められる。
とくに司祭は、教皇が就任当初から聖木曜日に発表してきた書簡の中で述べる聖木曜日の秘義について思い起こす。
主の晩さんの夕べのミサでは、エウカリスチアの制定、司祭職の制定、愛についての新しいおきてが想起される。
ミサの後、聖体を安置する聖ひつをかつてのように「墓」と呼ぶこと、また、墓であるかのように飾ること、聖ひつの形を墓や納骨壺のようにすることはふさわしくない。聖体は閉じた聖ひつに安置され、顕示器に納めて顕示するべきではない。また、真夜中を過ぎたら礼拝を終えるが、すでに主の受難が始まっているので荘厳な式は行わない。
(4)キリストの聖体の祭日について
聖体行列は、感謝の祭儀を継続させるもので、キリスト者はそれによって信仰を公にあかしするのでとくに大切である(『主よ、一緒にお泊まりください』18)。聖体行列を行うときは『ミサ以外のときの聖体拝領と聖体礼拝』101-108で示されたかたちに従う。
イエスのみ心の祭日もエウカリスチアの特徴を帯びている。
(5)感謝の祭儀と「教会の祈り」について
「教会の祈り」は、エウカリスチアの秘義を一日を通じて行き渡らせるものである。それは、賛美と感謝、救いの秘義の記念、天の栄光の先取りとしての嘆願の祈りによって行われる。また、「教会の祈り」はミサのすぐれた準備となる(「教会の祈りの総則」12)。
状況が許すなら、朝の祈り、昼の祈り、晩の祈りをミサと結びつけて行う(「教会の祈りの総則」93-97)。
(6)聖体礼拝について
聖体礼拝は、主のいけにえの祭儀と主の現存とのつながりをすぐれたかたちで表す(『ミサ以外のときの聖体拝領と聖体礼拝』79-100、『教会にいのちを与える聖体』25)。
教会の伝統では、静ひつに安置された聖体への短時間の訪問、顕示器か聖体容器に納められた聖体に対する短時間あるいは長時間の礼拝、永久の礼拝もしくは40時間の礼拝(Quarant’Ore)と呼ばれるものがある。
聖体が顕示されている間の祈願や聖歌は、信者の心を主キリストに向け、聖書朗読とそれに基づく説教もしくは勧めのことばは、信者の祈りをいっそう深める。信者は歌によってこれに答えるか、適当であれば沈黙を守る。
「教会の祈り」と聖体礼拝を結びつけることができる(『ミサ以外のときの聖体拝領と聖体礼拝』96)。
聖体の顕示中にマリアや聖人に対する他の信心業を行うことはできないが、ロザリオは許されている(『主よ、一緒にお泊まりください』18)。『おとめマリアのロザリオ』第3章の司牧的側面を参照。
聖体行列や聖体礼拝は、通常、聖体賛美式で結ばれる。聖体による祝福は、それ自体は聖体に対する信心ではないので、祝福を与えるだけの目的で聖体の顕示を行うことはできない(『ミサ以下のときの聖体拝領と聖体礼拝』89)。

3.司牧上の提案

(1)教区のために
教役者が集う機会(聖香油のミサ、月修、教区の会議、年の黙想など)を利用して、エウカリスチアについて司牧と霊性の両面から深める。
永久聖体礼拝の実践を奨励する(『主よ、一緒にお泊まりください』18)。
第20回ワールドユースデーのテーマ「わたしたちはイエスを拝みに来たのです」に若者が関心をもつようにする。青年が聖体礼拝をとおして出会うようにする。
週報や教区報にエウカリスチアに関する記事を掲載する。
(2)小教区のために
必要に応じて祭壇・朗読台・内陣などの教会堂内、聖体を保存する聖ひつや小聖堂を整備する。各種典礼書をそろえる。祭服・祭器具・調度品を美しく保管する。
典礼に携わるグループを作るか増やす。選任された奉仕者・聖体奉仕者・他の奉仕者・聖歌隊などの世話をする。
典礼における音楽に配慮する。
キリスト教生活と教会におけるエウカリスチアについて学ぶ機会を設ける。初聖体のための勉強と結びつけることもできる。
『ローマ・ミサ典礼書の総則』、『ミサの聖書朗読指針』、『ミサ以外のときの聖体拝領と聖体礼拝』、『教会にいのちを与える聖体』などについて学ぶ。
教会堂に入るときの所作、聖体の前での表敬のしかた、ミサにおける内的な参加(沈黙や拝領後の祈り)と外的な参加(応唱や答唱)、両形態の拝領など、教会堂での基本的な所作や心構えなどについて教える。
小教区聖堂の献堂記念日を祝う。
祭壇、朗読台、聖ひつ、聖画像、ステンドグラスなどについて案内を作り、小教区教会への意識を高める。
聖体礼拝の機会を作り、個人であるいは共同での聖体の前での祈りを勧め、積極的参加を促す。
病者の聖体拝領について配慮する。
臨終の聖体拝領についての教会の原則について教える。
ミサに来られない人、聖体拝領を受けられない人との霊的一致を促す。
(3)修道院のために
共同体のミサについての評価、典礼規則への忠実さ、会で受け継がれたエウカリスチアに関する伝統とそれを今も生きること、個人的な聖体への信心などについて検討する。
会の創立者の著作と生活に見られる聖体への信心を学ぶ。
小教区、病院、養護施設、教育機関、霊性センター、療養所、巡礼所、修道院などで働く奉献生活を送る人々によって、エウカリスチアに生かされるどのような生活が示されるかを問いかける。
小教区の日曜日のミサへの参加、および居住する教区による司牧プログラムに足並みをそろえることについて再検討する。
聖体礼拝の時間を増やす。
(4)神学校・養成機関のために
感謝の祭儀への参加は、召命への答えを成熟させ、神が呼びかける特別な使命へと志願者の心を開くことになる。
エウカリスチアは養成の道を支え、神学生に将来の奉仕職の核心を示す。
エウカリスチアに関する神学的養成と霊的体験の結びつきを強める。
ミサへの内的参加と外的参加をはぐくむ。
典礼神学、とくに感謝の祭儀の儀式と式文に関して教える。
ミサの儀式とその固有の祭儀に関する実践的知識を授ける。
ラテン語とグレゴリオ聖歌、およびそれらに由来する伝統的祈りに親しませる。
個人的もしくは共同での聖体礼拝の機会を増やす。
個人的な聖体礼拝のために聖ひつの場所を考慮する。
 

参考文献

典礼秘跡省の“The Year of the Eucharist – Suggestions and Proposals”は以下の公文書にしばしば言及していますので、参照してください。

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